やまけんの出張食い倒れ日記

なぜこんな寒い時期にアスパラガスが!? それは甘いあま~い、手をかけて育てた伏せ込みアスパラガス! あの比布(ぴっぷ)町で出会った菅原さんの逸品だ。

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さて、極寒の北海道はまだ終わらないのだ。平取町でちじみほうれんそうの饗宴を味わって車に乗り込む。「じゃ、旭川へ移動します。だいたい2時間半程度でしょうか。」それは助かる、、、映像制作スタッフのハイエースに乗せていただいているのだが、荷物スペースに噛んだ最後尾の席で、リクライニングができない。しかも横まで撮影機材群が積まれているので、少々窮屈なのだ。でも2時間半なら我慢できる、、、

と思ったら!

15分くらい走ったら「なんか、ブリザードっぽくなってきたね」と。高速に入ろうとしているのだが「あれっ通行止めってラジオで言ってるよ」とUターン。いろいろ試行錯誤しているうちに、車窓の風景は白一色で、本当にホワイトアウト寸前という感じに。

結局、5時間かけて移動したのであった、、、さすがに関節がバキバキ、できるだけ寝てしまうようにしたけれども、雪がヤバいなという緊張もあったのか、車に乗っているだけで疲労してしまった。

「もう21時だけど、軽くめしに行きますか」とシバタさんが声を掛けてくれたのだが、情けないことに「もう無理ッス、、、」と僕だけ脱落。

「え、じゃやまけん、めし食わなかったの?」と思われるかもしれないが、、、こんなこともあろうかと、夜食用にセイコマでサンドイッチを買っていたのだ。山ワサビハムサンドと、玉子サンド。この二つがセイコマのサンドイッチの中で僕のド定番。食べてすぐに眠りにつきました。

明くる朝、、、

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あたりは一面、銀世界!そんな中、旭川からほど近い、比布町へ。これ「ぴっぷ町」と読むんですが、ご存じですね?

「この比布町で、冬の間だけアスパラを出荷する生産者がいるんです。通常はアスパラガスが国産でできないといわれるこの時期に、フレッシュの国産アスパラを出せるので、貴重なんですよ」とシバタさん。訪れたのは菅原クリーンファームさんだ。

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それにしても雪がヤバい、、、もちろん極寒である。身の危険を感じるので、とっととハウス内へ。

そこには別世界が!

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なんでこんな寒い時期にアスパラが!?

はい、そうなんです。グリーンアスパラガスは通常、夏から秋にかけて根茎をしっかり養生しておくことで、地下茎に光合成の養分を貯めておき、春の訪れとともにその根茎からニョキニョキと若芽が出てくるのを収穫するという作物だ。日本では春先から夏場で収穫がだいたい終わり、それ以降に流通するのはメキシコ産などの輸入物である。

しかし、この比布町では11月から翌2月にアスパラを出荷できる。それがアスパラガスの伏せ込み栽培という技術なのだ。

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菅原クリーンファームを率いる菅原雄吉さん。親から農家を継ぐまえに、あのタキイ種苗の研究所に付属した園芸専門学校でみっちり生産技術の訓練を受けて、戻ってきたという。

菅原クリーンファームのメイン品目はアスパラではなく、稲作とダイコン、メロンだ。特に夏場はこのハウスもメロン栽培で大忙し。この作目の中にアスパラを入れるわけにはいかないそう。

「だから、その間はずっとアスパラの株を養生しておくんですよ。それで、他の作物が終わったあたりで掘り出して、このハウス内に床を作って、植えていきます。」

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これを伏せ込みという。実はこの床の中には電熱線が張ってあるので、土を直接加温できる。そうすると、伏せ込んだアスパラの根茎が「お、おう、、、春来ちゃった?」と錯覚して、ニョキニョキと若芽を出してしまう。これがアスパラガスの伏せ込み栽培なのである。

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「収穫しちゃったから、細いのしかなくてゴメンね」

とおっしゃる菅原さんに「一本折っていいですか?」とお断りして、ポキリと。

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アスパラは、鮮度が良ければそのまま生でかじってみるとおいしい。のだが、、、

「甘いっ!」

いや、俺はハッキリ言って、おいしさを表現する際に甘い甘いと安易にいっちゃうのは好きじゃないよ。でもね、これは本当に甘いのだ。

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一本と言ったにもかかわらず、止まらなくなって一気に三本食べてしまった!甘さに加えて、絶妙なうま味と香りがプアッと鼻に抜けていく。アスパラってフルーツだっけ!?と勘違いしそうになる味わいだ。

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「私はね、子どもの頃からアスパラが大嫌いだったんですよ。なんか嫌なアクがあるじゃないですか。就農してからもアスパラ栽培は長いことしなかったんですよ。でも、伏せ込み栽培のアスパラはね、アクが無くて甘くておいしいと、自分で思えたんです。わたしが食べられるのはこの伏せ込みアスパラだけなんです。寒さがキツいから、甘さが春のアスパラと違うんですね。」

と話してくれた菅原さん。いやこれは本当に甘うまい!

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隣の選果場では、ご家族が選別・調整作業中。

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ぱっとみぶっきらぼうにみえる菅原さんだが、じつは子どもの前で話したりするときには、泣いちゃったりするそうだ。ご家族、子ども思いなのである。

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いつのまにか、雪は止んで、強烈な青空が拡がっていた!

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仲のよい菅原ファミリーに乾杯! 愛情が滲み出ているご家族だったなぁ、、、

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そんな菅原クリーンファームの伏せ込みアスパラ、11月から2月一杯くらいまでの間に、基本的には北海道内で消費してしまうそうだ。なんで東京には出荷してないの!? いや、でもこれは北海道で食べることに意義があるのかもしれない。関東だと2日かかってしまうからね。本来のこのアクの無い透き通った甘さを味わうには、鮮度が大切だ。

ますます寒さの厳しい北海道だが、訪れる機会があるなら、ぜひ伏せ込みアスパラガスが飲食店やスーパーの店頭に並んでいないか、チェックしてほしい。あれば即買いして、間違いない旨さだゾ!

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この後、すぐさま旭川ラーメンの天金へと駆け込み、チャーシューとラードと醤油スープに麺を摂取したのであった。

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思い残すことはありません。ありがとう北海道!