今月号の専門料理は、みんな大好きパスタ特集!
郷土のパスタということだったので、郷土料理を巡るコースを提供するオステリア・デッロ・スクードの小池さんが出るのかと思いきや、また全然違うシェフ達が出ている。日本のイタリア料理の層も分厚くなったものだ、、、
面白かったのが、特集の「パスタ料理の勘どころ」というページ。イ・ルンガ(二子玉川)の堀江純一郎君が登場している。これがまた意外というかなんというか、堀江君がパスタのベーシックな技術論を教えてくれるというスッゴい内容になっているのだ。だって教材がボンゴレビアンコやペンネアラビアータといった、「堀江君にそれ聞くの!?」っていうネタなのだ。でも、読んでみると「そういう目的で、そうするのかぁ~」というアイデアが一杯あって、僕はシェフじゃないのに、読後に階級が上がった感がある(笑) ちなみに堀江君が得意中の得意とする手打ちパスタ、タヤリンのメニューも開陳され、加えてアユのコンフィのパスタも載っている。このネタ拡げて本にできるんじゃん?
で、わたくしめの連載「やまけんが聞く!」では東京農工大学でアニマルウェルフェア研究を追求する新村毅先生にご登場いただいた。
久しぶりに、府中にある東京農工大学を訪問。
新村研究室にお邪魔した。
新村先生とは、今年の初頭に開催された日経新聞主催の日経アニマルウェルフェアシンポジウムで一緒に登壇した。新村先生の基調講演の後に僕がエシカル消費についての話をするという組み立てだ。
ちなみにさすが日経、映像がアーカイブされているので、気になる人は探して観てください。
僕は新村先生のお話を直で聴いて「すばらしいなあ」と思った。それは徹底的に科学的なアプローチでアニマルウェルフェアにおける5つの自由の計量的測定をしていることに関してだ。
どうもアニマルウェルフェアのことを「海外で注目されているからって、日本ではやらなくていいんじゃないの?」と斜めに見ている人達が多いのだが、その根幹には「アニマルウェルフェアって、人間が勝手に動物の幸せとはなにかを考えているんでしょ。」とか「結局は人間がどう思うかっていう気分の問題じゃん」という考えがあるようにも思う(そうでない人ももちろんいるが)。
でも、アニマルウェルフェア研究は決して「気分の問題」ではなく、科学的アプローチによって行われているのだ。
例えば、鶏が備えている本来的な欲求とはなにか、という問題。鶏を自然状態において観察すると、数十種の行動パターンを採集できる。それらの行動パターンひとつひとつにどんな「重み」があるのかを、実験を通じて優先順位を明らかにしていく。たとえば鶏にとって、止まり木にとまるというのは生来持っている欲求だ。鶏の原種であるセキショクヤケイがジャングルの中で暮らす際、獣に襲われないように高い木の枝などに止まって寝る修正があったのだろう。このため、止まり木がある部屋を用意し、その部屋に入るドアの重量を変えられるようにしておく。重量がかなり重くなっても止まり木の方に行こうとする場合、それはより鶏にとって重要度の高い、生来もつ欲求だと証明できる。こうした実験を重ねて、鶏のウェルフェアとはこういうものだ、ということを明らかにしているのだ。この手法を聞いて、「あ、これは本当に科学的なアプローチなんだな」と実感したのである。
新村先生は、幼い頃から動物が大好きで、ドリトル先生に憧れていたという人だ。
「僕は、動物が可愛いとかいうことよりも、その動物が快適に感じる環境を作ってあげることで、長く生きたり、繁殖がうまく行ったりするっていうのを楽しむような子供でした。」
というのだから、彼がアニマルウェルフェア研究の専門になるのは当然だったとも言えるのだ。
日本の鶏卵生産では、EU法では禁止となったケージ飼いが95%以上であり、ケージフリーはまだまだ進んでいない。ケージ飼いにもメリットはあり、ケージフリーにもデメリットがあるのは事実だが、しかしアニマルウェルフェアの観点からいえばケージで実現できないことがケージフリーにはある。コストとの兼ね合いは日本的観点としては重要だが、日本でももう少しケージフリーが増えていいはずだ。
日本はこれから旺盛なインバウンド消費を期待する側となる。それならば、世界の潮流にある程度対応はしていかねばならない。そのための方向性のヒントが、新村先生の言葉にあると思う。
ということで、ここから先はぜひお買い求めになって、読んで下さい!