生協のコープデリ連合(コープみらいなど)に加入している方は、カタログでもうすでに観ておられるかもしれない。このブログでもずっと追い続けてきた、上田金穂さん率いる北十勝ファームが、とうとうオーガニックビーフを出荷開始した。もちろんJAS有機認証を取得した、正真正銘のオーガニックビーフである。しかも、、、関係者がみんな「ええっ!」と驚くほどに素晴らしくおいしい!のである。いまのところコープデリ連合の宅配でしかこのお肉は味わえない。食べてみたい方はぜひ末尾をごらんあれ。
販売されているのは、コープデリのオーガニック&ナチュラル商品専門カタログであるヴィ・ナチュール(VieNature)誌面だ。
上記を観てくれれば概要がどんなだかわかると思う。
日本でも「みどりの食料システム法」が施行されたことで、政策的にもオーガニックを進めていこうという方向に向くようになった。ただし、いろんなところで議論されているように、課題は満載だ。欧米中心に作られたオーガニック基準はアジア・モンスーン気候ではなかなか難しい。それは畜産においても同じだ。
畜産、とくに肉牛のオーガニック基準は、もしかすると野菜や米といった農産物よりもはるかに難しいと言えるかもしれない。なんでかというと、、、
まず、有機畜産牛(と書くことにする)は、そのライフサイクルにおいて有機生産された飼料を全飼料中85%食べていることが必要だ。15%は非有機でも構わないのだが、85%ですよ85%! 人間でも、日々の食生活で85%も有機食品を食べている人って、そういないはずですよ。当然、コストがえらいことになります。
次に、、、これは僕も初めて識ったときに「それじゃ誰もやらないんじゃないの!?」と思ったが、有機で育てる子牛の親も、オーガニック基準で育てる必要があるということ。てことは、まず親世代をオーガニックで育てるところから始めて、そこから種付けをしてオーガニックで育てるということ、、、最低でも5~6年かかるんじゃないですか!? その間、お金にならない膨大な時間を生産者はどうやりくりすればいいのかという問題がのしかかる。
そして、肉牛においては屋外での放牧を織り交ぜ、ストレスを可能な限り与えずに飼育する必要があるので、通常より広い土地も必要だ。また基本的に動物用医薬品を使用しないことが求められるなど、一般的な畜産とはまったく違う仕組みが求められるのだ。
そんなわけで、農林水産省の令和元年度の有機畜産物の格付実績データを観ると、ご覧のようにたったの18.9トンしかない。同年の国産牛肉の生産量は329,647トンなので、国産オーガニック牛の割合はたったの0.005%ということになる!(農水省さん、もっと直近のデータもお願いします!)
(出典:農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki_old_jigyosya_jisseki_hojyo-104.pdf)
さて、こうしたことがあって今までなかなか進んでこなかった肉牛のオーガニックに、北十勝ファームが数年前から取り組み始めていた。コロナ禍になる前の2018年、ドイツで開催された世界最大のオーガニック見本市であるBiofach(ビオファ)を中心に、ヨーロッパのオーガニック畜産を見てまわった記事を覚えておいでだろうか。
■スペイン・カタルーニャ州のピレネー山脈のふもとにオーガニック畜産を視察に行く。カタルーニャの人達は優しく温かく、そしてメシは素晴らしく旨い!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2018/02/29557.html
この時、上田さんと中村こずえちゃんも参加、そしてこの時点でオーガニック牛に取り組むぞという決意を持っていたのだ。ただ、前述のように5年はかかるオーガニック畜産を行うためには、資金的な手当も必要だ。そこで乗り出したのがコープデリ生協。詳細には書けないが、上田さん達が不安なく生産できるための最大限のバックアップをした!
これによって、有機で育てた親牛から生まれた子牛を生産し、、、
広大な音別町の牧野でも、従来の一般生産方式の牛たちとは区画を分けて(電柵で区切る)育てる。オーガニック生産は、一般のものと明確に区別して生産することが求められるのです。
区別を徹底するため、足寄の北十勝ファームほ場のすぐ近くに、有機牛専門のほ場として「はなゆき農場」を立ち上げ。
写真は牧草がもう生えていない時期だったのだが、この広大な放牧場が2つ、3つ分ほど確保されている。
こうした有機ほ場はそのエリアごとに認定されているので、そこで生産したトウモロコシや牧草は有機格付をすることができる。
上田さんの背をはるかに超え、三メートル近くになるデントコーン。
このデントコーンを、穂や茎、葉ごと刈り取って樹脂フィルムで覆い、乳酸発酵させることでデントコーンサイレージという発酵飼料にする。これが1年を通じてオーガニック短角牛たちのメインの飼料になる。
たしか上の写真の一番手前が有機JAS認定のサイレージだ。
これに、有機格付取得済みのおからや醤油粕などを加えて給餌する。
そして、有機JASにはアニマルウェルフェアへの配慮も盛り込まれている。それは、、、まあこれらの写真をみてくれればわかるのではないだろうか。
さて、そんなオーガニックビーフが5年の歳月をかけて、ようやく昨年12月に出荷。お肉として流通し始めた。
いちおうわたしめも関係者でして、と畜後二週間程度の時点でその一部をコープデリのバイヤーさん達と試食する機会に恵まれた。
ドキドキしながら、南浦和の本部調理室で、Y本さんがフライパンで焼いた「はなゆき牛」の肩ロースの首側あたりを試食、、、
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おいしい!
掛け値無しにおいしいいいいいいいいいいいいいい!
じつはちょっとドキドキしていた。オーガニック生産だと、どうしても通常よりも粗飼料中心の育て方となる。北十勝ファームはこれまでも一般短角を生産する際に粗飼料中心できたが、それにしても日本人が好む牛肉を目指して、食品残渣やそうこう類を与えることで味作りをしてきた。だが、オーガニック認定をとれていない飼料は基本的には使えない。どうしてもデントコーンサイレージと牧草中心になってしまう。
だから、心のどこかで「いわゆるグラス臭が強い、痩せた味わいの肉になるんじゃないか」という懸念が残っていたのだ。
しかしそれは杞憂だった! バイヤーのお二人も「いやぁ、想像をはるかに超える美味しさです」と感動しておられた。
後日、関係者のI崎さんが気を利かせて、僕にも試食サンプルを送って下さった。それも、北十勝ファームの一般短角の同部位も加えてだ。
上が一般短角、下がオーガニックのはなゆき牛だ。一般の方はカットが薄いが、比較するには問題ない。ご覧いただいておわかりだろうが、粗飼料中心で育てているにもかかわらず、それほど脂が黄色くなっていない。もちろん一般の黒毛の肉と比べれば違いがあると思うが。
上の一般短角に比べ、下のはなゆき牛の肉色が濃く見える。これは、一般短角に細かく入ったサシの影響ではないだろうか。短角だし、粗飼料中心なのでそれほどサシは入らないが、それでも短角も和牛の一種。それに加えて上田さん特製の飼料設計で、微細なサシが入っていることで、肉色は薄くみえる。はなゆき牛は真っ赤という感じだ。
さて、焼いてみました。塩も振らずに試食用の体で、、、
いやもう、心から感動しましたね。
オーガニックのはなゆき牛は、オーガニックという価値に加えて、とてもおいしい!
なんつーかですね、本当に「健全な牛肉の味」とはこれをいうのだな、という味わいと香りだ。なんとも清々しく、そしてストレートな旨みが舌に拡がる。一般短角はもちろん慣れ親しんだ、北十勝ファームの短角牛の味わい。なんだけど、はなゆき牛のほうがドカンと旨みが感じられる気がする。それはやはり微少なサシの存在によるものではないかと思う。元来、脂(油)は香りを伝達するものであって、旨みの要素ではないとされている。油脂摂取による脳への快楽刺激はあるけれども、はなゆき牛を噛みしめて味わう肉汁には、それとは別の次元の「おいしさ」を感じる。ちなみによく言われる「グラス臭」はまったく感じない。代わりに、嚥下する時に爽やかな緑のような香りが一瞬、立ちのぼる。これはグラス臭ではなく、パスチャー香とでも言った方がいい。
「正直、はなゆき牛のほうが一般短角より好きです」と金穂さんに伝えたところ「いや~、嬉しいけど複雑! 俺がいままでやってきた一般短角の飼料設計の工夫はなんだったの!?って感じだもん(笑)」と、困ったような顔をしていた。もちろん、一般短角はすでに美味しいという評価をバッチリ得ているのだから問題ないんです。重要なのは、オーガニック牛が、まったく違う味わいで、むちゃ旨いということ。
この興奮、わかりますかね? 試食前、正直にいえばどんな味だったとしても「オーガニック牛だからこの味で仕方ない」と納得しようと、心のどこかで思っていた。でも食べてみたら「オーガニック牛ってこんなに旨いのか!」と心底感動してしまったのだ。
僕は、仕事で牛肉と関わっており、とくに赤身系の取組であれば、放牧生産された肉牛を食べる機会も多いのだが、なかには「うーん、ゴメン、美味しくないです」という肉も多い。私見だが、栄養豊かな牧草を食べさせることと、貧相な牧草でグラスフェッドを名乗ることを取り違えているケースが多いように思う。貧相な牧草でいかにグラスフェッド生産をしても、おいしい肉にはなりません。その点、はなゆき農場のオーガニック短角牛は、素晴らしくおいしい。
はなゆき農場で牛を育てるリーダーの中村こずえちゃん、そしてスタッフの皆さん、おめでとうございます!
さて、このはなゆき農場のオーガニック短角牛は、コープデリ生協でしか買えません。しかも、レギュラーで登場するほど頭数がいないので、入会してヴィ・ナチュール誌面をみて「はなゆき牛だ!」となったら速攻で注文するしかありません。ぜひ、コープデリにご入会下さい。ちなみに僕はいま、社会人三年目から入会している大地を守る会で野菜などを買い、牛肉やミールキットに関してはコープデリのネット注文で購入しています。大地でも山形町の短角を買えるのだけど、僕は山藤で食べてます。
コープデリ入会を検討している方、このブログアップ時点であと3日しかない(3月17日まで!)けど、コープデリでお友達紹介キャンペーン実施中。もっと早く書いときゃよかった! 下記から申し込むことで、なんと3000円分の買物クーポン、コープデリのお薦め商品を3週連続でプレゼント、8品分の半額クーポンプレゼントだそう。もちろん僕の紹介コード使ってくれたら僕にもポイントがいただけるので、ぜひぜひご加入時は下記リンクからお申し込みお願いします!
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オーガニック牛を生産・流通するには多大なる関係者の尽力が必要だ。そう、生産だけではなく、流通業者も有機JAS認定が必要になるのだ。関係者の皆さんに敬意を表すると共に、このはなゆき牛のおいしさが全国に拡がっていくことを、心から祈ります。