沖縄出張中に今月号、発売されました。
標題にあるように今回号はだしとうまみをどう作るかということ。
これは専門料理にしかできないだろうと思ったのが、川崎寛也さんが音頭をとってまとめている、昆布出汁と一番だしをさまざまな条件別に抽出し、それを日本料理のそうそうたる面々がテイスティング評価し、特性をレーダーチャートにまとめたもの。
この手の、官能評価パネルをとりまとめていく企画は野菜や肉で何度も経験してきたが、気が遠くなるほど大変なものだ。川崎さん、ちゃんと意味あるカタチにまとめていて、素晴らしいと思った。最後に、川崎さん自身のだしに関する小論があるのだが、「同質だし」についての記述がとても興味深かった。そうだよな、日本ではあまりないよな、、、
他ページでは、日本料理だけではなく西洋料理や中国料理、各国料理のだし研究もされている。その中に!
なんと我らがイズミルもある。編集部から打診して欲しいと依頼が来て、下調べして紹介もしたんだけど、てっきり僕が記事を書くものだろうと思ってたら違ってて残念だったんですが、、、(涙)
また、我らが佐々木ひろ子さんが真昆布の危機的状況について、重厚なレポートと考察を記事にしている。天然真昆布、このままいくとこの世からマジで無くなってしまいそうでやばい。その状況を多くの人が知るべきである。
さあそして、私の連載「やまけんが聞く!!」はこのだし特集に合わせたのでしょう、昆布文化そして流通の中心地でもある大阪の「こんぶ土居」の土居純一さんをインタビュー!
こんぶ土居は創業120年を超える歴史ある昆布屋。土居さんの若き頃は、昆布にそれほど愛着もなく、各国を放浪。なかでもイタリアが気に入って、スローフード文化の渦中で様々な体験をしてきたそうだ。そこから昆布の可能性に気づいて家業を継いだ。しかしこの各国放浪の経験が視野を広げたことは間違いない!
この大量の箱、ぜーんぶ最上級の真昆布。ただし、この真昆布の産地である北海道の南茅部では、天然昆布漁が危機に瀕している。その内容は記事をご覧あれ。
ちなみに土居さんは、だしを取ったあとの昆布の「だしがら」を食べて欲しい、と訴える。なんと、昆布の栄養成分の多くが、だし汁には抽出されず、出し殻に残ってしまうというのだ。
でも、出し殻昆布をどうやって使ったらいいのか。それを「この一冊まるごと出し殻の使い方じゃん!」という最高の本にまとめている。
出し殻昆布バターは、もしかすると最近の高山いさみくんの「煮干しバター」に匹敵する発明かもしれないよ。
この写真は、僕が腹を抱えて笑ってしまったDIYネタである。こんなドリルの使い方、誰も思いつかないよ! いったいなんのネタなのか知りたい人は、先の「捨てないレシピ」をお読み下さい。マジ最高だから。
それにしても取材を通じて感動したのは、昆布屋という仕事だ。
じつは、昆布屋というのは、昆布を仕入れて売るだけのものではない。各種の昆布加工品をみずから調理し、売っているのだ。もちろん委託加工してもらっているものもあるそうだが、佃煮とか塩昆布とかは内製で作られている。
それにつかう調味料類も、本物としかいいようのないものばかりだ。
僕が、色んなメーカーからでている塩昆布や昆布の佃煮製品をみて「うーん、なんで!?」と思うのが、多くの製品にアミノ酸が使われていること。
「うそっ」と思うなら、大メーカーの塩昆布とか昆布佃煮の裏面をみてみるといい。アミノ酸を多く含んでいる昆布の加工品になぜアミノ酸添加が必要なのだろうか。推して知るべしである。
そしてこんぶ土居の加工品に使われる調味料のことを尋ねて、驚いた。僕も仲良くしている「富士酢」の飯尾醸造や、愛媛県大洲市の梶田醤油など、ほんとうに素晴らしい調味料を使って造っているのだ。そりゃあおいしいはずである。
そうしたよい調味料や食材を販売するコーナーも店内にあった。イタリア放浪中の縁だろうか、オリーブオイルやパスタなども。
ということで、土居さんのインタビュー、ぜひ読んでいただきたい。
取材後、ミナミへ出て、西日本の料理人が料理本を求めて通うという波屋書店へ。
この店にない料理本はない!?というくらいに素晴らしい品揃え。あ、古本ではなく新刊書展です。
店主ご夫妻に歓待していただき、この書展と柴田書店の素敵な歴史についてお話を伺うことができた。
西日本のみなさん、ぜひこの店をごひいきに!
ということで、専門料理最新号、どうぞご覧下さい。