さて、そろそろ毒を吐く。
全共では各産地の試食ブースが設けられ、整理券が配られて、参加者が無料で試食をできるようになっていた。といっても、整理券はすさまじき争奪戦、各産地のブースには長蛇の列が並ぶ。僕なら無理!という感じであったが、参加者のみなさんは楽しんでいただけただろうか。
僕は高知県の関係者枠で参加しているので、ブース内で肉を焼く手伝いをしていた。そうすると、産地間の交流というか物々交換があって「●●県でーす、お肉どうぞ!」というような感じで肉の交流がなされる。
二日間の交流で多くの産地の黒毛を味わうことができた。美味しいと思う産地もあった。ありがとうございました。
ただし!
もう、本当に勘弁して欲しいと思うことが多かった。今回の全共に限ったことではなく、畜産の産地に行って肉の試食をする際にほぼ必ずと言って出会う光景なのだが、、、
多くの産地が、ホットプレートなどで焼いた肉に、市販のいわゆる「塩コショウ」的なのをかけて提供しているのだ!
しかも、「これって味付けは、、、」と尋ねると、判を押したように
「シンプルに塩コショウだけで!」
と言うのである。 おいおい、本気で言ってるのかよ、、、
ぜひ「塩コショウ」で検索して、その製品の原材料欄をごらんいただきたい。塩、胡椒はもちろん入っているだろうが、加えて砂糖やアミノ酸が加えられているはずだ。このジャンルでよく売れている製品の原材料欄をみたら「食塩、こしょう、コーングリッツ、上新粉、馬鈴薯でん粉、酵母エキス、調味料(アミノ酸など)」とある。
これのどこがシンプルなんだ!?
アミノ酸や酵母エキスが添加されているということは、グルタミン酸やイノシン酸といったうま味を添加しているということである。シンプルどころか、元の牛肉が持っている味とはまったく無縁のうま味を足している行為になるのだ。
すっごく嫌味な言い方をするが、、、
現代的な黒毛のA5は、赤身と脂の比率でいえば脂が多く赤身が少ないものが多い。うま味成分であるアミノ酸は赤身のたんぱく質が分解することで生まれるので、相対的に霜降り度合いの高い肉ほどうま味は少ないと言うことになる。もしかすると市販のアミノ酸入り塩コショウ製品をかけて出しているのは「この肉はうま味がすくないから、足してます」という戦略なのだろうか、、、うーん、本当に嫌味な感じで申し訳ないけど、そう勘ぐってしまう。
シンプルというのは、こういうことを言うのだ。我らが土佐あかうしブースでは、ホットプレートを熱して、油はまったく引かずにあかうし肉を投入。
赤身の多いあかうしといえども、しっかり内包している脂だけで焼けるのだ。植物油のごときまったく組成の違う油脂を加える意味がない。
そして焼き上がったところにかけるのは、高知県産の天日塩のみである。
※なお、塩かけを担当したのは、全共にプライベートで参加(つまり自腹)した、高知のあかうし関係者なら知らぬもののいない、「泣く男」こと公文ちゃんである。
胡椒はもちろんかけない。だって胡椒ってのは「臭み消し」ですから。それをかけるってことはつまり、おたくの牛肉は臭みがあるってことですね?ということになる。ちゃんとそこまで考えて高知県では「塩のみ」で提供していたのだ。
全国の和牛関係者に言いたい。
試食用には、塩だけかけて出してくれ! それこそ一番安い食塩だけでいい。混じりけないから逆に客観的に味を判断できるので、塩コショウ製品より100倍マシである。
これは和牛だけではない。生産者が自ら展示会などで肉を焼いて出す、鶏や豚に関しても同じだ。畜産物の試食での塩コショウ撲滅運動、進めたいものです。