料理家であり、小説家であり、そして夫婦ぐるみの友人である樋口くんが、面白い新刊を出した。
3 という数字であってもそうでなくても、数字に着目した料理本というのはなかなかみかけない。この本では、3つの味の要素や3つの品数、三角形を意識する盛り付けなど、3という数字でまとめていくとうまくいきますよ、という新しい料理アプローチがなされている。
しかも嬉しいのは、後半にしっかり提示される料理レシピがすべておもてなしに使えるコース仕立てで紹介されているということだ。人を自宅に招いてもてなす際に困るのが、一品一品の料理には自信があっても、複数品をコースで出す場合に「この順番でいいかな」「この料理とあの料理は合うのかな」といった判断が、素人だとつきにくい。
そこはやはり樋口くん、こんな↓もてなしをサラッとやってのけるほどの人なので、コースをどう組み立てるかという実践編がキッチリ書かれているのだ。
■作家にして料理家という稀有な存在・樋口直哉君と、農林水産省の元祖インフルエンサー松本純子ちゃんがご結婚、その愛の巣でガッチリ樋口フルコースをいただくという僥倖!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2020/11/30155.html
後半のレシピページは、前菜・メイン・デザートというように、3つの料理の組み合わせが数パターン載っている。
載ってる料理しかできないじゃん!というようなつまらないことではなく、「どう組み立てるか」「どこを際立たせるとよいか」といった「知恵」が盛り込まれているので、ここに書かれた料理とコースを作っていくことで、「これだったら違う素材でやったらこうなるな」といったことを会得できるような仕立てになっているのだ。
もちろんレシピには樋口流のひねりが効きまくっている。デザートの定番であるブラマンジェを塩味にして前菜に使うとか、「こんなにお洒落な料理、やっちゃっていいの?」とニンマリするような内容なのだ。
樋口くんは、小説家であり、料理家でもあるという稀有な存在だ。ということは、彼が意図した料理の秘訣を、文章でわかりやすく読者に届ける技術は、どんな職業の人よりも持っていると言っていいだろう。ホント、「あっ そうすればいいのか!」という気付きの連続であった。
ちなみにこの本を編集しているのは、食に関わる本の専門編集者であるカンキカナコさん。僕が一般雑誌に書いた最初の記事の編集者でもある。それだから意を決して言うが、彼女は本造りに関しては超エクストリーム系のぶっとんだ編集者である。もうだいぶ進行しているのに
「これ、やっぱりわかりにくいとおもうのよーーーーーっ!」
とちゃぶ台をひっくり返してくる大名人。もちろん、そうしてできた本は素晴らしく面白く、そしてわかりやすいものになるのだ! カンキさんと樋口くんとの本作りはどうだったんだろう!? と想像すると、ニヤニヤしてしまう。ともあれ、この二人が組んだのだから、面白くないはずがないのである。絶対のお薦めです。
樋口くん、出版おめでとう!そろそろ小説もまた出してちょ。 カンキさんも、どっかで呑みましょうね~。