このブログ過去ログを読めばお分かりの通り、さんざん通い詰めた店およびシェフといえば、日本橋ぼんぼり京橋店→東京バリバリ→シュングルマンとアップグレードしていった小池俊一郎くんだ。東京バルバリ時代は3フロアにまたがる大店だったこともあって、厨房にも人が何人か居たものの、独立を果たした八丁堀シュングルマンでは基本、ワンオペ! 一人でシャルキュトリの仕込みから塊肉の数時間に渡る火入れ、そして細かなデザートに至るまで仕込んでいた。
おまえ、そんなことやってたらいつか過労死しちゃうぞ、、、
「いやでもねヤマケンさん、いまどきの風潮で俺みたいなのが下を入れたら、パワハラって言われて終わっちゃいますよ」
それもそうだな、、、(笑)ということで、アイツは本当に一人でコシコシと料理をしていたのである。
そのシュングルマンが、八丁堀から世田谷に移転したのでご報告。
「あー、やっぱりコロナが、、、」と思うかもしれないが、じつは僕は彼から「そう遠くないうちに地元である世田谷に移ろうと思ってます」と聞いていた。すでに目をつけている物件があって、そこが秋次第移ろうと思っているのだと言うことだった。
「ずーーーーっとその店が移転しなかったんですけど、とうとう出たんですよ!」
ということで、世田谷へ。いま、コロナの影響で、都心の繁華街ではなく郊外のベッドタウンに飲食の商圏が移っている中、タイムリーと言えるだろう。その移転先だが、、、
「あのですね、NHK放送技術研究所ってのを目指してきて下さい!その向かい側です」
とのこと。行ったことなくてわからないんだけど、とりあえず渋谷駅でて都バスの「渋24」系統のバスに乗る。35分ほどでNHK技術研究所の停留所だ。
(実際の停留所は下の写真中央に写ってる木の向こうくらい)
バスを降りて「さあて、どこだどこだ」とキョロキョロしていたら、上の方から「ヤマケンさーんこっちこっち」と声がする! なんでわかるの!?
「どもでーす、ここなんですよー。と小池君。きけばこのビルについてるいくつもの監視カメラの映像を見ることができるそうで、僕が降りたのをすぐ発見したそうだ(笑)
もうすでにプレオープンしているシュングルマン。本当は水曜日定休なのだそうだが、ゆっくり話したいからと休みの日に呼んでくれたのだ。
店内に入ると、落ち着いた、上質な造りの店内!
これまら地元の建築家さんが店内をデザインしてくれたそうで、和の要素を随所に盛り込んだ設計にしてくれたそうだ。
個室はないが、奥の席はかなり隠れ家感。
入店すぐのところにけっこう立派なアイスケースがある。ここでパンやシャルキュトリを販売するそうだ。
やっぱりテイクアウト需要があるのだろう、開店からしばらくの定番品は下記だそうだ。
小池君の顔を拝める穴が、調理場から空いているのは八丁堀シュングルマン時代といっしょだ!
以前の店舗では炭火焼き台をオプションでもちこんでいたが、今回は最初から高機能なグリルを導入していた。
これ、下の方からガス火、その上に遠赤外線が出るセラミックのパイプが渡されている。これで火入れすることもできるが、この上に炭火を乗せることで、炭火の火力調整を気にせずに火入れすることができるのだそうだ。
ということで、せっかくなのでテーブルではなくて、カウンターかぶりつきで楽しむことにした!
あ、ちなみに八丁堀時代を識っているならおわかりでしょう、サービスは変わらずエンドウちゃんです。なんとシェフの料理から離れたくないということで、こっちに来てしまったそうだ! まじか~!!!
ご覧のように、グランドメニューもいちおう完成しているようだ。相変わらずリーズナブル、、、
で、今日のお品書きはこんな感じ。
時間のない方はさーっとiPhone13proで撮った動画で見てしまって下さってもいいかも。動画はまた情報量が違いますねえ。
お酒の種類も、生で楽しめるビールも増えました!これはレモン風味の食欲を上げるビール。
■知床産ズワイガニ 根セロリ 低温熟成パン カニミソのコンディマン
もちろんパンも自家製。それはいいけど、なんか素晴らしい器つかってないか!?
手前のカニミソのコンディマンをちょいっと舐めてみたら、実にこゆい!これだけで酒が飲めてしまう、、、
とっても美味しい!カニと根セロリの相性、そこに加わる徹底的に濃いカニ味噌風味で、一気に食欲が花開く。
お次は
■コラトゥーラでマリネした羅臼産鮭いくらと生ウニ
鶏節で香りをつけたコンソメで煮びたした秋なす
ああ、これぞ小池料理だ。豪華食材が並ぶけれども、力で押してくるのかと思いきや、繊細に攻めてくる。いくらとウニは、コラトゥーラ(イタリアの魚醤)風味というけれども、魚臭さがみじんもなく綺麗な食べ口だ。
そしてコンソメを吸った秋なすがひんやりトロリと喉を心地よく冷やしてくれる。美味しい!
■下田産 金目鯛のカルパッチョ 昆布森牡蠣とレモンのソース
これもまた小家君らしい料理。素晴らしいねかせ加減の金目鯛を薄切りにして、塩とオリーブオイルだけでも旨いのに、そこに牡蠣をグズグズにしたソースをまとわせてしまう。旨いに決まっているでしょう!
金目鯛の持っている旨さに、ペースト状の牡蠣のうま味と香りが立体的に絡まって、そこでレモンが全体を引き締める。最高である。
■下関 あん肝のムニエルと(株)、春菊のスープ
トリュフオイルでマリネしたあん肝をカリッと焼いたものに、春菊のスープを注ぐ。
この春菊スープが出色のできばえ!あおい香りが僕も大好きです、春菊。その春菊風味であん肝がサッパリ美味しく食べられるのだが、、、
「そこでシェリポンをかけて味変してください!」
シェリポンは、シェリービネガーを使った彼特製のポン酢。これがまた最高!!!
シェリポンの酸味と醤油の複雑なおいしさが加わって、あん肝の油脂感がまったく気にならなくなる!
そして早くもメイン、、、といってもホントはこれはメインではなかったのだが、、、(笑)
■三好 日本鹿シンタマと松茸のロースト サルミソース 焼き芋添え
徳島県産の日本鹿、なかなかに味が細やかで美味。サルミソースは鹿の血でつないだそうだ。つけあわせに出たのが安納芋のうえにラルドを乗せて焼いた焼き芋。
これがまた、トロトロに甘いマグマとなった安納芋と塩気と香りのかたまりであるラルドの組み合わせが最高である!
うーん、だいぶお腹も満足になってきましたけれども、、、実はここからが今回のクライマックス!
「じつは本気でラーメンを作りました。シュングル麺、試してみてください」
シュングルメン!!!!!!!!!!!!!
激烈シンプルに、麺とスープ、チャーシューにネギのみの潔さだ。
いや、チャーシューって言うか、、、これローストポークだよね、っていう厚さです。その辺で問題になってる生っぽい豚肉ではありません。ちゃんとバッチリ美味しい火が通ったローストポーク!
そして、麺はやっぱりカンスイの使われていないストレート麺。やっぱり、というのは、小池君が佐賀県出身だから!
いやーーーー 控えめに言って 素晴らしい!
ご存じの通り僕はラーメンはあまり得意ではないので、他のラーメンとの比較はできないけれども、銀座の「八五」とおなじ印象を受けた。そう、「八五」はフランス料理出身の店主がてがけたラーメンの究極の形で、生ハムなど贅沢な素材をフランス料理の手法で抽出したスープが絶品だ。
シュングル麺のスープも、鶏と豚をコンソメの手法でひいたものをベースにしている。なんか、塩乾もののスープ、たとえば金華ハムのスープっぽさも感じるなと思ったら「それをイメージしたんです!」とのこと。まあこれはぜひ食べてみてください。ローストポークもやっぱり絶品です。
スープの最後の方に、ちょっとシェリポンを入れてみた、、、
これはお薦めしません。なぜか普通のよくある醤油ラーメン風になってしまいます。そのままが一番よろしい。
このシュングル麺、しばらくの間はランチメニューで、これ一種類だけを出すそうだ。といっても、ミニライスというのは、白ご飯ではなくて、なにか炊き込んでいたり、おかずが載ったりしたものだそうなので、これも要チェック!
ということで、世田谷に移転したシュングルマン、相変わらずすばらしく手の込んだ小池料理、いや小池劇場を味わうことができる!
ぜひ、周囲の人は行って欲しいし、京橋・八丁堀時代からのファンにも足を運んでいただきたい。俺もまた行くぞー
ガンバレ俊一郎!エンドウちゃん!
■シュングルマン公式Web