今年度の月の井酒造の仕込みが一段落したようだ。石川達也杜氏から「無事、甑(こしき)倒しを迎えることができました」と連絡があった。甑とはご飯を蒸すための大きな釜だ。仕込みが終わるとこの甑を倒して洗う。つまり「甑倒し」とは甑を仕舞うタイミングが来たということで、仕込みが完了したという意味になるのである。
もちろん、まだもろみを絞ったあと、酒を寝かせていない段階なので、なかには味わいがまだ十分に乗っていないものもあるだろうが、これで石川達也が杜氏に就任して初の酒造年度の月の井の酒が飲めるようになったのはめでたい! 心して利かせていただこうと思う。
ところで、先日来ここに掲載してきた酒造り工程のなかで麹づくりの中で大事な「仲仕事」の紹介がまだだった。石川達也の麹づくりは、麹蓋(こうじぶた)と呼ばれる伝統的な小さな木箱で行う。ここに麹菌を振ってよく混ぜ込んだ蒸し米を盛り、温度管理をして置いておく。
しばらくたつと麹菌が繁殖してくるわけだが、表面と内部では水分の蒸散度合いや酸素量が違うので、ばらして混ぜるという作業が必要になる。
そこで麹蓋を開けて、固まった状態の麹を崩して混ぜていく。これが仲仕事だ。
まずは盛ってあった麹を手でほぐしていく。
ほぐれたら麹蓋全体を振りながらトンカンと机面に当てて、形を整える。
なだらかな小さい山ができたら、そのまんなかに右手をうまくつかってくぼみをつくる。
「これがねえ、簡単に見えるでしょ?すごく難しいんですよ!」と山田さん。たしかに、一連の動作が手慣れた石川達也によってなされているので簡単そうにみえるが、それは熟練のなせる技なのだ。
ということで、蔵の皆さん、一段落ですね!でもこれから酒が出てくる時期。まだまだ大変でしょうが、ここからも頑張って!