朝の休憩時間、大部屋に戻ったタツヤンがジッと見つめているのは「このために買った」という、ひねり餅焼き専用の(笑)コンパクトなトースターだ。
おー、膨らんできた!
「ん~ でもまだ焼き目がついとらんなぁ、もうちょっとかなあ~」
と目を離しているすきに、、、
「あれっ タツヤン、煙が出てる!焦げてるぞ!」
「あああああああ」
焦げました、、、(笑)
コゲの部分をざりざりと削って、、、
一口大に分けて、お醤油をかけていただきます。
これがじつに美味しいの!
焼き目が香ばしく、強い弾力で歯を押し返す。醤油と米だけでこんなにおいしいとはね!
さあて、お待たせしました、いよいよ生酛造りの最重要工程とも言える、酛擂り(もとすり)の時間です。半切り桶の中には、麹米と蒸した米が入っている。
ここに、二人一組になって、櫂(かい)を入れ、ギュッギュッと桶の中の酛を摺り合わせ、ペースト状に擂りつぶしていく工程が酛擂りである。
「じゃあ、はじめますかぁ。」
と、杜氏の石川達也がやおら、唄を歌い始める。
「あ~ 安芸のヨーホイ、 宮島のヨーホイ」
そう、これは酛擂りのリズムを一定に保つために歌われる「もと擂り唄」といって、各地の蔵で独自の唄がある。タツヤンは自分が慣れ親しんだ広島の酛擂り唄を採用しているのだ。
写真だとわからないかもしれないが、、、ズサッ ズサッ というリズムで摺っていく時、踏み込み時はかなり力が入っている様がみてとれる。そりゃそうだ、しっかり摺らないと、うまくペースト状になってくれない。そうなると、のちの酛造りに悪影響が出てしまうわけだから、みなしっかり腰を入れて摺っていく。
2分半ほどの1クールが終わると、摺っていなかった2組目の桶に交代。おなじように酛擂り唄を歌いながらズサッ ズサッと摺っていく!
2回、3回とやっていくうち、蔵人のみなさん「いや、しんどいですねー」という顔に。そりゃそうだ、みていてわかるよ、これは大変な仕事。
そのかいあって、こんなふうにだんだんと米粒が摺れていく。
さて、この模様、写真だけじゃ伝わらんな、と思って、iPhoneですこしだけ撮っていたので、これを共有しておく。
これがひとつの桶に対して4セット(だったかな?)行われる。終わるとみな息が上がっている感じだ。この作業を山おろしともいうのだが、あまりに大変な作業なので、これを廃する工夫がなされた。その仕込み方を山廃(やまはい)という。「あっ 山廃ってそういうことなんだ!」と思われる方もいるだろう。そーなんです。
ちなみに生酛造りの詳細やその意義については、ここでは述べません。もうすぐ発売されるdancyuでも読んで下さい、しっかり書いてあります。
一回目の酛擂り、終了。櫂についた酛を綺麗に落とす。
あれ、でもそんなに、ペーストってほどには摺れてないけど、、、
「うん、これが一番擂りで、あと2回やるんだよ。それが終わったら、もっと形がなくなってるから」
とのことだ。
酛擂りで桶の側面に飛び散った酛を、きれいにゴムべらで落とし、検温していくタツヤン。
身体はデカいのに、顔もゴジラなのに、とても繊細な男なのだ。
蔵の撮影をさせていただいていると、お昼である。
昼ごはんはまかないのおばちゃんが来て、これまた旨そうなごはんを作ってくれるのである!
いやー最高においしい! しかもですね、、、
月の井酒造の酒粕をベースにした酒粕ドレッシングがかけ放題! こいつがキャベツの千切りに合う!!!!!
じつは朝からの工程はもっといろんな仕事が挟まっているのだが、酛擂りシーンをみせたくて、省いてしまった。次回はそうした仕事を可能な限り掲載していく。