すみません前のエントリで「いよいよ次は酛摺りだ!」としたけれども、まだもう一段階準備があるのでした。
まだ陽が昇らない朝5時、専務がホテルに迎えに来てくれ、月の井酒造店へ。
シャッターを開け、中に入ります。
酒造で働く人は、事務方や洗浄・瓶詰め担当の人など多いが、やはり造りの時期の蔵人たちは特別だ。彼らはここに数ヶ月間泊まり込み、外界とほとんど接触せずに、ひたすら酒造りに明け暮れる。
仕込み用の蔵で、タンクに巻いた温度調節用の草地がボウッと灯る。
さて、酛を造る半切り桶のところへ行くと、専務がその中身を手を使って攪拌。これを数時間おきにしているので、蔵人もなかなかゆっくりとは寝むれないわけだ。
ひとつの桶の攪拌が終わる度、タツヤンが酛用に蒸し米と麹をあわせたものの温度を測っている。
左手に温度計、右手にはちいさなシリコンのへらを持ち、側面についた米粒を綺麗におとし、表面を平らにする。米粒がへりについたままだとそのまま乾いてしまうし、表面が平らになっていないと水分の浸透や発酵の進度にばらつきが出てしまうことが考えられる。そうしたことをこまかく調整していく。身体はデカいがこのゴジラはそうとうに繊細な心の持ち主なのである。
チェックした温度などを記帳する。
大部屋に戻ってしばしの休憩。タツヤンは、雑誌取材のゲラをみて、修正箇所などをチェック中。
決められた時間に蔵人集合。前に書いたとおり、わたしは何をするにもマスクを着用。中の人達は基本、外界との接触はほぼないので、TPOに応じてマスク着脱しています。
造りの進行監督のような役割をしているのが岩淵さん。石川達也の仕事をずっと横で一緒にやってきたこともあり、初年度はそういう位置づけに。
朝のミーティングが終わると、またみなさん慌ただしく自分の仕事をこなし始める。
一階では、仕込んだもろみへの櫂(かい)入れ。
二階ではタツヤンが酒母を覗き込んでいる。
「やまけん、これ、酒母の表面がもりあがってるのわかる?」
えっどういうこと? と思いながら、目線を下げて周辺をみると、たしかにすこし中央に向かって酒母の表面がモリッとなっているようにみえる。
「下の方で発酵が、まだ旺盛ではないけど進んでいて、ガスがブクッと出てくる手前の状態なんだよ。あとでお湯を入れた暖気樽(だきだる)をここに入れて、発酵を促すタイミングだ。」
といいながら櫂入れ。
櫂入れによってまざると、下の方からプチプチと発酵によって生まれたガスが登ってきた!
この酒母のボーメ(比重)を測るタツヤン。
そして、机に向かって、また記帳、、、
杜氏の仕事は、こりゃいつまでも気が抜けないな、と思うのであった、、、