「専門料理」のための取材で溢れた写真特集、その3。あ、ちなみに最新号が発売となりました。
石川達也といえば、江戸時代に完成された酒母の製造方法である生酛造りに取り組んでいることで識られている。もちろん生酛造りをしている蔵は他にもいろいろあるが、タツヤンのそれは石川流ともいえるやり方に彩られているようだ。
蒸したお米は、布に幾重にも包んでおいておき、わざとでん粉を老化(β化)させる。
この工程を埋飯(いけめし)と呼ぶ。なぜそれが必要なのかな、次々号の専門料理をお楽しみに。
「じゃあ、始めようか」
というタツヤンの一声で、やおら蔵人4人が動き出す。
えっ ちょっとちょっとフラッシュの位置を直すから待って下さい、などととても言えない。蒸し米の温度が下がらないうちに行程を終えなければならないこともあるだろう、もの凄いスピードでみな動いていく。
画面右の山田さんが飛んでるようなかんじだけど、ほんとそんな感じで移動して、拡げて、揉み拡げていく動作が機敏である。
こうして、均一に拡げて水分を飛ばしておき、数時間後の仕込みに備える。この時17時、ここから20時までは触らず、これから夕食と風呂の時間だと言うことで、僕は宿泊するホテルへ送っていただく。なお、名物あんこう鍋なんて食べる余裕ございません、写真データをコピーして、カメラのバッテリーを充電し、きたるべき酛摺りの準備。
食事を終えて20時、蔵へ移動すると、蔵の二階には半切桶が4つ並んでいた。
この桶に酛を入れて、摺っていくのだ。
「じゃあ、やろうか。」
のひと言で、また蔵人が高速行動開始! 今度は予期してたので、撮り逃さないよ!
さきほどの埋飯を半切り桶へ、、、
お次は、用意して置いた麹をこの桶に移動する。
埋けておいた蒸し米と、麹をよく混ぜ合わせる。
するとみなさん、水をくみ始める。
ちなみに月の井酒造店は大洗町の海からそう離れていない地域にあるが、水は軟質なのだそうだ。
水の温度をしっかりはかり、重量も計測。
その水を、桶に注いでいくのは杜氏の仕事。
すかさずよく混ぜていく。
桶のヘリについた米を綺麗に落として表面を平らにならし、温度を測る。
これで明日の朝5時からの酛摺り(もとすり)の時間まで、吸水させておくのだ。
「あら、用意は終わったの?」と明るい声が。月の井酒造店の坂本敬子社長のおでましだ。
「わたし、蔵のインスタ係だから、撮影しなくちゃ!」と、酒母がわいているところを撮影。せっかくのチャンスなので、社長を中心に記念写真を撮らせていただいた!
社長、、、お美しい、、、
蔵での和気藹々とした雰囲気。来る側も迎える側もいろんな葛藤や調整事項があっただろうが、月の井酒造はそれを乗り越え、確実に明るい未来に向かっているのだなと感じた。
「じゃあ、あとは明日の朝5時からになるから。よく寝てちょうだい。」
というが、ホテルでは興奮しているせいかぜーんぜん寝付けず、3時間程度の浅い眠りで起きてしまったのである。
さあ、酛擂りだ。