日本国内のたまごの市場規模はおよそ250万トンで4,500億円程度。輸入卵は13万トン程度であり、ほぼ国産でまかなっている。ただ国産とはいっても、日本は飼料の自給率がとても低い国だ。養鶏(採卵鶏)についていえば、通常の配合飼料の自給率は10%程度。カロリーに資するトウモロコシやダイズ、オオムギ、ナタネなどはほぼ輸入に頼っている状況である。
もちろん日本でも飼料用米の利用が進むことで、少しずつ状況は変わってきている。このブログでは青森のトキワ養鶏のこめたまを応援してきたが、飼料米の利用形態もいろいろ技術革新がなされている。
ただ、飼料米は万能ではない。どうしてもタンパク質が不足することもあり、飼料米だけでたまごを作るわけにはいかない。また、飼料米は補助金がつくと言っても、輸入コーンのほうが安いということもある。
と思っていたら、ここしばらくで餌用トウモロコシの国際価格がどかーんと高騰してきている。理由は明らか、中国が餌用トウモロコシの純輸入国となりつつあるからだ。餌用トウモロコシは養鶏だけではなく牛・豚にも必要であり、これが今までより高騰すると畜産農家は窮地に立たされる。
そういうこともあって、やはり日本の畜産はもうすこし自給を目指したほうがいいのではないか、という話である。
そんな中、製粉を核とする昭和産業グループの飼料メーカーである昭和鶏卵が、「和のしずく」という国産100%飼料でたまごを生産している。
■国産自給率度100%のたまご、昭和鶏卵の「和のしずく」がイイ!北海道のでん粉用ジャガイモの副生物をうまく使うことで、飼料米多給たまごの新しい可能性を切り拓いた!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2016/04/14005.html
以前はこのたまご、タンパク源として北海道で生産され、廃棄される運命だったポテトプロテインを使っていることに焦点を当てた。それが今回、プチリニューアルをしたという。担当の駒井さんによれば、なんとホヤの殻を原料として新たに迎え入れたということだ。
ホヤの殻ってあのパイナップルの表皮みたいな!? ホヤは美味しいけど、匂いも強いでしょう、それって餌になるの!?
「はい、じつはタンパク含量が40%以上あり、良質な原料なのです。もちろん匂いの問題はあるのですが、いろいろテストをした結果、逆にたまごの苦味や雑味、匂いが減る結果となりました。旨味はアップし、卵黄の粘度も高くなりました!」
という。まじかよ!
ホヤの殻はいままで廃棄されていたもので、産業廃棄物としてコストをかけて焼却などしていたものだそうだ。それを乾燥させて魚粉のようにして飼料に添加する。400トンもの原料を処理して添加するそうだ。ちなみにホヤの産地は石巻!
徹底的に重金属検査や放射性物質検査を実施し、畜産飼料として使用して良いというお墨付き得てから具現化したという。
早速いただきました。「正直、すぐにわかるほど味を変えてはいません。味が大きく変わるとクレームが来てしまいますから、、、」というが、たしかに黄身の旨味甘みが非常に強い。そして、水様卵白をすすっても、臭みがあまり感じられない。とても素性の良い餌なのではないだろうか!
それにしても和のしずくは、よくできたたまごだ。飼料米をかなり使用しているのだが、飼料米多給卵にありがちな、あっさりしすぎて味もないという感じではなく、ちゃんと芯の通った味わいである。ポテトプロテインと、国産大豆のきなこ、そして今回のホヤ殻がいい仕事をしているのだろう!
この「和のしずく」、国産自給率100%ということだけではなく、廃棄される運命の原料を利用するという、フードロス削減にも資するものとなったわけだ。6玉298円の希望小売価格は「ちょっと高い」と思う人もいるかも知れないが、国産100%の飼料を与えたたまごでこの価格はとんでもなく安いと僕は思う。他メーカーは10玉2500円とかありますからね。この価格設定は、大手飼料メーカーである昭和鶏卵がやるから実現できていると思う。
コロナで困窮した人たちはともかく、まだ食に投資する余裕のある人たちは、こうした商品を応援してあげてほしいと心の底から願う。自給率の高い畜産物が正々堂々と売れる世の中であってほしい。