香川県の超・真面目な会社である四国計測工業が、本業とはまったく関係ないところで生み出した食材の熟成を促進する機械「エイジングブースター」のことを何度か紹介してきた。コロナ影響もあって飲食店向けの営業を控えめにしている中、そろそろちゃんと料理人さん向けにセミナーをやろうということになった、ということは以前のエントリで書いたとおりだ。
■エイジングブースターは虎視眈々と、コロナ後を狙っています。この機械が熟成を促進するのはお肉だけではない!ということを観ていただくセミナーを11月に開催するゾ!https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2020/09/30125.html
会場は大崎にあるホシザキ東京のキッチンスタジオ、窓から品川方面に向かうJR操車場が一望でき、鉄っちゃんにはきっと溜まらない眺望。逆光なので写らなくてスミマセン。設備もすべてホシザキ扱いの機器が並び、すんばらしい環境だ。
司会・進行はわたくしめが務めました。
ここでプレゼンテーションを行うのがまた贅沢な面々。これまで先行してエイジングブースターの試用機から使い込んできてくれた小川翼シェフと萩春朋シェフ!
チーズとワインについては、チーズプロフェッショナルであり、またソムリエでもある山本三紀さんが担当!そう、以前ここで書いたモッツァレラチーズの熟成比べはこのためのものだったのである。
コロナ対策は万全。まず。この会場内は密閉空間だったものの、ホシザキさんが扱いをしている、100席以上の店舗内でも空気を吸入し、内部の殺菌システムで浄化する機械が回っていた。それも、異なる機械が2台。この分野の進歩もすごいものがある。
テーブルには一人のみジグザグに座っていただいた上で、午前の部と午後の部の二部制に。
四国計測工業でこのプロジェクトを引っ張っている久保さんが装置の仕組みを説明。
食べ比べのスタートはモッツァレラチーズから。三種類あるのは、フレッシュと4日エイジングブーストしたもの、比較対照用にたんに冷蔵で4日保存したものの三種だ。
六本木リューズの飯塚シェフ、食べ比べて「うーん、全然違うわ」と腕組み。そうなるよね~。
ちなみにこのモッツァレラチーズは、渋谷チーズスタンドでつくっていただいたもの。作り手である藤川さんも来てくれた!
「あきらかに食感が変わりますよね、いい方に。」と言ってくれて嬉しいッス。
そして、肉が熟成するなら当然魚もね。ということで、、、
左は、比較的足が早いといわれるサワラの刺身。上下が背側と腹側、右が普通の冷蔵、左がエイジングブースター。
そして、こいつが最高に面白い、ボラ以外の魚卵を使ったカラスミ!
小川翼シェフによると、カラスミ製造時の脱水について、エイジングブースターで速やかに衛生的に行うことができるため、強い塩分を使用する必要がなくなるのだそうだ。
しかも今回、「ボラがまだ出てないから、魚卵のとれるものでやってみました」ということで、サワラとマナガツオの真子で作っているのだ。
こちらがサワラの真子のカラスミで、、、
この平べったいのがマナガツオ。
これらの魚種の真子はほとんど使い道が無く、捨てられていたこともあるそうだ。それをなんと塩浸透・乾燥工程前半・後半まで16日間で出来上がってしまうという!できあがりはまさにボッタルガ!
おそらくこれを食べたらみんな「なんでこれまで高いボラ子にこだわっていたんだろう!」と思うんじゃないだろうかという仕上がりだ。もちろんボラ子で作ったらまたうまいのができるだろう。エイジングブースターでは脱水と熟成、塩味のカドが取れることがわかっているので、カラスミのおいしさに必要ないろんなことが促進される。ぜひ日本料理をやる人達にも試してみて欲しいところだ。
福島を代表するシェフになりつつある萩ちゃんからは、あの絶品のメヒカリフリットと湯葉のプレゼンテーション。
メヒカリはエイジングブーストしたものとしてないものをそれぞれ、揚げたてを提供。ホシザキの最新式フライヤー、低出力の電磁波を流して油の参加を抑える仕組みだそうだ。それ、どういう原理なんだろう、気になる。
湯葉にかぶりついているフロリレージュ川手さん。「これ、丸ごとの鳥とかを入れたら、熟成がはやまるんでしょうか?それとも骨は邪魔なのかな?」と。おおっと、その知見はまだ無いな、、、一緒に実験してみようよ!ちなみにこの日はジビエの雄・室田シェフの店の料理人も来てくれていたので、ジビエ系での取り組みをぜひして欲しいところだ!
さあ、そしてワイン!
山本三紀さんのセレクトで、あえて安めのハーフボトル1000円のシチリア産赤ワインを選択。
ちなみにワインの熟成促進というと、超音波をあてるものが知られている。
が! 食味を数値化する機械で分析したところ、超音波方式だと渋み、苦みが増加してしまう。つまり雑味方向が増えてしまうのに対して、マイクロ波をあてるエイジングブースターでは、その渋みと苦みが減少するという結果が出た!
みなさん「うん、ぜんぜん違う!」と、中には笑っちゃう人もいたくらいだ。
最後はやっぱり肉。それもなんとこの日は福島県産の8歳の経産牛である。
なんと、IHのパワーの問題で迅速に焼けないという不測の事態。そこで、先のハイパワーフライヤーを使って揚げ焼きに。
油の匂いをきちんととることが必要だが、揚げ焼きはおいしくステーキを加熱するよい方法の一つである!
午前の部、午後ともに、食べ比べたすべての食材について「ポジティブな熟成ができていると思う人!」と聞きながら進めたのだが、ほぼすべての食材に対して、全員が手を上げてくれた。
これだけの顔ぶれが、しかも信頼できるシェフがてがけた熟成促進食材を食べ比べるのだ。なかなかそう簡単にはできないが、いい機会だったと思う。
関係者一同お疲れ様でした! コロナの中でこんな風に開催できたことは、イベント運営の観点からもかなり貴重な体験でした!
エイジングブースター、イロモノ的な機械ではありません。おそらくわかってる料理人ならば、「これでアレをああすれば、、、」と色んな使い方が思いうかぶはず。興味のある方はぜひ資料を取り寄せて下さい。
■エイジングブースター
http://agingbooster.com/