飛び飛びに生って申し訳ないけど京都編。二日目の夜は松尾大社ちかくにあるという「とりよね」へ。じつはここ、コロナ禍で緊急事態宣言発令中のまっただなかに、電話取材をさせていただいた。かの「瓢亭」の高橋義弘さんに「この状況下でも、物販やテイクアウトで頑張っている京都の料理屋さんているかな?」と聞いたところ、「とりよねさんが面白い取り組みをしてはりますよ」と教えてくれたのだ。
紹介してもらった田中良典君は、以前に僕が若手料理人の勉強会である京都芽生会で牛肉の食べ比べを実施したときにも参加しており、「あの時は熟成のことを勉強させてもらって、ぼくらの鶏肉の仕事でも役立ってます」と快く対応してくれた。
「とりよね」はお酒の神様として知られる松尾大社のすぐ横にある水炊きが有名なお店だ。土日にもなると松尾大社に詣でる人達の予約が15件以上、桜の季節とも生れば30~40組もはいる人気ぶりだったという。それが3月半ばからなくなり、現在は予約のみで営業している。
ただし、とりよねが強いのは「仕出し」を仕事のもうひとつの柱にしていること。京都は仕出し文化がまだ息づいており、法事などを自宅で行う家庭がまたまだあるという。お宮参りに行けないので、お食い初めのお膳を家に持って来て、というような需要があり、助けられているとのことだった。
また、店の横には惣菜販売を行うコーナーがあり、緊急事態宣言中はそこがこれまでにない賑わいを見せていたそうだ。惣菜の免許を持っていることから、当初からかなり幅広い対応をすることができた。もちろん売上が完全に戻るわけなどないものの、当初からの多角化経営がキーとなって、続けることが出来ているということだった。
もうひとつ、田中君が力を入れているのが自前のネット通販だ。名物の水炊きをはじめ、名物料理がズラッと並んでいる。力の入ったこのWebから、さっそく水炊きセットを買わせてもらった。
これが超絶素晴らしかったんだ!
いやー本当にこれは価値ある一品!鶏スープはもはや液体ではなくにこごりじょうの固体!それを温めてトロリとしたスープにしたものに具を入れていくのだが、鶏肉がとにかく美味しい。50日程度しか育てていないブロイラーではもちろんないし、かといって地鶏でもない。これまで食べているものと違うのだ。
この違いは何なんだ!ということを確認するためにも、今回の夜は「とりよね」へと決めていたのだ!
驚いたのは、松尾大社のすぐ横です、と聞いてはいたものの、本当にその参道の大鳥居のすぐ横が、「とりよね」の大駐車場とお店なのだ。すげー立地だな!
じつはこの日は19時に予約していて、17時半くらいに松尾大社について、すこしこの辺を散策してから店に行けばいいねと行っていたんだけれども、松尾大社は17時で閉まっちゃうのであった!それ以外に見てまわるところもナシ! あたりは暗くなってきて、、、ということで「すみませんもう行っていいですか!?」と電話したら「あ~ 松尾様ははやく閉まってしまうんです。どうぞお越し下さい」と言っていただき、お店へ。
田中君と再会!顔を合わせるのは京都芽生会での牛肉食べ比べ以来ですね。
お食事の前に、まずはこちらを、と、、、
よいお手前で、玉露をいただきます。
甘く、ほどよくみるい味わい。いいですね!
出し終わった玉露のお茶がらは、そのままおつまみに。
「京都と言えば宇治茶、その玉露のよさをしっていただくために、いまこうやって食前に味わっていただくようにしているんです」
とのこと。これは楽しめるよね!
しかもノンアルコールの人向けに、このとりよねがメーカーと一緒に開発したという冷茶ボトルで出した玉露が用意されている。
これがとても美味しい! 呑めない人もご安心、ということだ。
前菜に盛り込まれている中に、ちらちらと鶏肉料理が。いわゆるきんかん卵を京都では「玉道」というそうで、その甘辛く似たものなども。
田中君は溢れんばかりのアイデアマンで、刺身にも趣向がこらされている。
お鯛さんに着けるのはフレーバードオイル。オイルなのに醤油の香り、味わいがする!塩味はほとんど無いのだろうと思うのだが、香りだけで旨みを感じてしまう、不思議な一品。
さあ、そして来ました、鶏のすき焼き風!
「今日は、水炊きをご注文いただいていますので、ほんの一口だけ、鶏肉を食べていただきます」
と、鶏モモ肉、マツタケ、ゴボウにネギが卵と絡まったのが出てきて、みるだけでよだれが!
甘辛くすき煮された鶏肉、噛みごたえがしっかりあり、150日以上は育てられた食感だ。噛むごとにじゅわじゅわと旨みがしみ出てくる。すばらしく美味しい!
「やまけんさんがいらっしゃるので、特別な鶏を用意しました。飼育何日目くらいの鶏か、おわかりでしょうか?」
うーん、160日くらいかな?
「いえ、これは260日飼育した鶏です。」
えええええええええええええええええええええええええええええ
そこまでとは思わなかった!
通常、地鶏品種であっても、120~180日程度(オスかメスかによっても違うが)で肉にすることが多いのだが、260日というと、これはどちらかというと鶏卵を生む鶏の親鳥クラスである。
それにしても美味しい、、、
やはり、飼育日数イコール味である。ただし、飼育日数イコール硬さでもある。常にそのせめぎ合いとなるわけだが、噛みしめることが出来る大人は、日数の長い、滋味深い鶏肉をもっと食べるようにした方がいいのではないだろうか。
ちなみにこの日数の長い鶏肉は普通は出てこないようなので、食べたい人は事前に相談すること。
鶏手羽とマツタケ!
こちらの手羽先は90日。地鶏は75日以上の飼育したものとなるが、それを大きく超えている。手羽はそれほど大型ではないところを観ると、ブロイラーに使用されるチャンキーとは違うだろう。
「きみんとこの鶏の品種って、なんなの?」
「それは秘密なんですけど、通常の掛け合わせとは違います。契約農家さんにお願いして特別に飼育してもらってます。」
とのこと。ロードアイランドレッドは入っているだろう?と聞くと、「そうですね、入ってます」とのこと。それ以外の基礎鶏はなんなのだろうか、とても興味があるところだが、踏み込むのはやめておいた。
さて、いよいよ水炊きだ!
(つづく)