福岡のローカル食文化の発信地である糸島にあるミツル醤油の「生成り」醤油は僕のお気に入り醤油のひとつ。家業を継いだ城君は、九州らしい甘い醤油も売りながら、その傍らでビシッと大豆・小麦・糀のみで勝負した、レベルの高い本醸造しょうゆを造っている。
■ミツル醤油 http://www.mitsuru-shoyu.com/
その彼が以前から、産業廃棄物としてでてしまう醤油の搾りかすをなにかに使えないかということを模索していた。ふりかけ製品にしているのは知っていたが、その彼が「こんなのを試作してみました」といって送ってくれたのが、焼き肉のタレ。
じつをいえば醤油メーカーの多くは、醤油の売り上げが年々減少するため、ドレッシングや出汁醤油、ポン酢、タレ類などで食べている。だから焼き肉のタレ製品もそれはもう多いのだけれども、城君がつくったものは「ええっ なんじゃこの味は!?」と驚く一品だった。というのも、口に入った一発目にドカンとくるのがクミンのパンチある濃い香り。もちろん醤油もろみの土台が強いので、完全にエスニックという感じではないのだが、それでも度肝を抜かれた。
「すごいな、他に無い味だよ。でも、ふつうのスーパーで売れる味にはならないかもね」
「はい、いろいろと試行錯誤していまして、、、」
というやりとりを数年前にしていたことを記憶している。
それが先日、こんな製品になって登場した!
いったい、どれが商品名じゃ!(笑)
ペロッとなめてみると、なるほど以前の味わいからまたさらに前進している。おもしろいのは「タレ」ではなく「漬けダレ」となったこと。つまり、小皿にこのタレをいれて、それを具材につけて食べることは想定されていない。
その理由は味をみればわかる。本来の彼の想いである醤油かすの再利用を優先したのだろう、かすのもつえぐみというかなんというかが少し残っていて、このタレをわっしゃわっしゃと肉や野菜につけて食べるという感じではないのだ。(好きな人は好きだと思う)
ただしこれを漬けダレとしたときには、この「食べたことが無い味だぞ」感がいい意味でやわらぐことがわかった。さっそくに漬け込んでみたのだ。
公式に城君もお薦めしているキュウリとダイコン。皮は少しピーラーで剥いて、塩をまぶしておくことが推奨される。醤油床なのに塩?と思うかもしれないが、醤油は純粋な塩よりだいぶん塩分濃度低いです。ぬか床に入れるのにも塩まぶすでしょう。
塩ずりしたキュウリにまんべんなく醤油床を塗る。ちょっと贅沢だったかな。この状態で24時間というので、ほぼ22時間くらいでさきほど食べました。素材がさぞ醤油色になっているだろうと思いきや、床をぬぐって軽く洗うと、驚くほどにきれいな見た目。輪切りにしてお茶請けにいただくと「!」実に上品じゃないか!
「食べたことない味感」はちゃんとありつつも、主役の醤油味がきちんと効いてクミンの香りは脇役にまわり、いい感じ。このバランス感をとるのに苦労したのだろう。
こうやって野菜を漬けた後は、野菜からでる水分でだんだんと床がゆるまっていく。この緩んだ床で今度は肉をつけることにする。おって、どんなだったかレポートしよう。
城君、これなかなか佳い製品だよ!