月刊食堂という雑誌をご存じだろうか。外食チェーンや居酒屋チェーンの経営者がほぼ必ず読んでいる雑誌だ。
なんと格調高い「専門料理」を出している柴田書店から出ているのだけど、中身はま~ったく別世界!(笑)ガストロノミーの追究とはぜんぜん違う内容で、どうやったら客単価アップできる!?とかコスト削減できる?とか、ヒットする商品開発ができるのか?といった感じの、実利的な内容である。
でも、すげー面白い。なんでこんな情報までとってこれるの!?というような、店にとって秘密じゃないの?というところまで分け入った情報が掲載されている。例えば下のリンク先で数ページ「立ち読み」できるので、観てみて欲しい。
■「坪月商50万円超の怪物店」 特集の立ち読みページ
http://www.shibatashoten.co.jp/view/11200100/html5.html#page=1
で、じつはこの誌面にも僕が連載させてもらっている。「専門料理」の読者層とはまったく違う人達に、どうやったら読んでもらえるかと頭を悩ませつつ、第一次産業の現状を伝え、繋ぐような記事を書くことがここでのミッションだと思っている。
さて、この月刊食堂の編集長が通山茂之さん。
がっちりマンデーやヒルナンデス!などのテレビ番組でもコメンテーターを務める人気者だ。会ったことがある人ならおわかりだろうけど超・明朗快活、その語り口も実にエンターテイナーばりで、とにかく面白い。この人が、様々な外食店舗を駆け巡って足で稼いでこれからのトレンドを分析しているのだから、月刊食堂の誌面も面白いのだ。
この通山さんと年末にメシを食べに行ったのであった。
「どこにしますやまけんさん?」
「そりゃもう、月刊食堂的にお薦めな店でお願いしまーす!」
「うーん、そうかあ、、、築地でマグロなんかどうですか!?」
なに、マグロ。うーん、、、築地でマグロっていったら、そりゃ本マグロ(クロマグロ)だよね、、、エシカルはおいしい!!的に言えば、サステナビリティの面から、太平洋クロマグロはちょっと遠慮しておきたいところなのだが、ここ3年ほど、積極的にクロマグロを食べていないし、久しぶりに食べてもいいか、ということで行って参りました。
この日はNikonZ6に、カールツァイスのマクロプラナー50mmf2を着けて、それだけで臨みました。
築地ってのはズルイ場所で、どこを撮ってもだいたい、エキゾチックニッポン的な絵になるんです。ただ、最近はむかしから築地で営業しているような店ばかりでないので、そうでもないけれど。
さて、今日の店はちょっと店名わかりにくいけど、「焼うお いし川」。「築地青空三代目」のグループ店だ。それにしても「焼きうお」ってなんだ?と思ってたら、月刊食堂の中心メンバーの一人であり、なんと僕の大学の後輩にあたるウシちゃんが教えてくれた。
「ここは最近話題のお店で、本マグロなどの魚の切り身を、卓上グリルでまるで焼き肉のように焼いていただくという業態なのです!」
とのこと。
ノリのよい編集部である!!!!
たしかに、テーブルには焼肉屋にあるような卓上グリルと、その上には煙の吸気をする煙突までしつらえてある!
さて、嬉しいことにこの店の店主である石川さんがつきっきりで応対してくれた。さすが通山さん!
「あのですね、この店はわたしと料理人で、まぐろの新しい、おいしい食べ方をみなさんに観ていただこうと作った店なんです。天然のマグロは、生で食べるだけじゃなく、焼いてもうまいんです。それを識っていただきたくて、、、まずは説明より、食べていただいた方が早いと思いますので焼いてきますね。」
おおおおおおっと、皿の上には厚くおおぶりに切られたれたカマトロ(だったかな)とブリが。でもね、それはいいとして、、、
なんじゃこの存在感ありまくりな寿司飯は!?
「これは、赤酢のシャリです。うちでは、マグロはやっぱり酢飯と合わせるのが一番ということで、最初からこれと一緒に食べていただくのをお薦めしています。マグロの脂に負けないように、しっかりとした酸味をあじわえるシャリになっています」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお いいコンセプトだ!
そんな話をしつつ、コンロに着火し、油をひいて、、、
刺身に醤油をかけ回す!
「この醤油もうちで焼きうお用に調味したものです。これを焼いていきます」
とまずはブリの切り身を、一切のためらいなくファイヤー!
「これをこうやって酢飯にのせて、食べていただければと思います!」
と、最後にタレを含んだ大根おろしをのせて。
ああ、、、これはおいしいね! 酢飯はしっかりと酸が効いていて、たしかに脂を切る味わいになっている。ブリの表面はタレをはじいているけれども、コンロで炙ることによってタレが焼き付けられ、味わいが拡張されている。
これはうまい!
「お次はマグロです」
と、タレによく浸した中トロを三枚重ねて、、、
一瞬の間を置いて、脂が下に落ちて着火!
側面の4面を焼いたら、拡げて最長面を焼く!
この焼き方、ステーキの焼き方そのものじゃんか!肉の内部はミディアムからレアがいいけど、側面や表面はメイラード反応を起こすことで、旨みが倍化する。マグロもこうやって、しかも目前で焼いてくれると、実にエンタメである!
いやーーーーこれは見事なエンタメ料理! しかも、おいしいです。いや、レアめに炙ったトロに甘辛い醤油ベースのタレに、少し酸味の効いた大根おろしが組み合わさって、どうやったっておいしくないはずがない構成なのだけど、これを出してるお店ってあんまりないでしょう。しかもパフォーマンス付きで。
これは新しい!
「そうおっしゃってもらえるとウレシイですね!僕もご覧の通りの体格でおわかりのとおりの食いしん坊なんで、自分がうまいと思ったものを世に問いたいんですよ。」と石川さん。いや、いいじゃないか、いいじゃないか!
こちらは炙らずにいただくネタ。エビもマグロウニもおいしゅうございます。
そこにこんどは白身魚にネギ塩をのせて。ネギ塩牛タンとはまた違った風情!
これをひとつひとつ巻いていきます。
ね、どうみてもこれ、エンタメだよね!?
生の刺身の美味しさというのはかけがえのない和食の神髄の一つだと思うけど、加熱すると魚はまた一段あじわいが変わるよね。とてもおいしい!
お次は穴子!
これを
こんなふうに焼いて(笑)
ああーなるほど! 穴子を塩ベースで食べるとなんか肩透かし感を喰らうことがあるけど、酢飯と合わせるとこれまた拡張される味わいが佳い!おいしいねぇっ
そしてこれはこれは、ノドグロ!
ニコン用のカールツァイスはマニュアルフォーカスレンズなので、あちこちにピント合わせするのがけっこう大変です。あ、でもミラーレスのZ6でのピント合わせは、フォーカスの山が見えるので快適なんですよ。
さあて、今日のクライマックス。
出ました大トロ!
やはりタレをつけて、、、
カマ部分から置いていき、、、
三枚の大トロ重ね側面焼き!
平面に伸ばしたと思ったら、、、
その表面にタレかけ!
この世でもっとも罪な食べ物の一つですね、大トロ。しばらくは資源量の少ない太平洋クロマグロは食べないぞーっと誓いつつ。おいしくいただきました。
にゅうめんにてさっぱりと〆。
いや、文句なしにおいしかったし、なにより楽しかった!
やっぱり、外食店に求められているのって、人によって美味しさや安さとかいろいろあるとおもうけど、僕はこの楽しさ体験こそが最も重要なものだと思う。じつに楽しい体験でした。通山さん、ウシちゃん、おいしかったですごちそうさまでした。またご一緒させて下さい!!!
あ、連載も頑張りまーす!