岩手県で短角牛の母牛を所有するようになって10年以上が経過した。この間、順調に毎年子牛が産まれ(ただしそのうち一頭は、10ヶ月齢で病死してしまったが)、母牛は一世代交代した。
お肉にして食べたのは、さち、国産丸、草太郎、すみれ、ひつじぐも、新生の6頭。ひらがなはメス、漢字は去勢である。これに加えて北海道の北十勝ファームにも僕の母牛がいて、べっぴん、益荒男、輝、大地のお肉を味わってきた。
上記の岩手・北海道はどちらも赤身中心の短角牛だが、これに加えて現在は高知県で土佐あかうしの柿衛門君を肥育している。こんなふうに肉関係の仕事があちこちに広がることになるとは、10年前には思ってもみなかった(笑)
さて、書きたいのはそういうことじゃなかった。
牛を所有して、自分の牛の肉を売ってきて、いちばん「やったー!!!」と思うことはなにか。それは自分の牛のタンを食べられることだ、ということが言いたかったのである。
牛タンが好きだという人は多いだろうが、日本で出回る牛タンの多くがアメリカやオーストラリアからの輸入品である。仙台名物の牛タンを食べに行って「これって和牛のタンですよね?」と聞くような脳天気な人が多いが、もし国産の牛タン、しかも和牛のタンを食べようとしたら、仙台の牛タン屋の庶民的な価格では難しい。ビックリするほど価格が違うからね。
ということで、写真は僕の短角牛「新生くん」のタンだ。しかもマルヨシ商事でドライエイジングをガッツリ施してもらったもの。牛タンはもともと、剥いてしまわねばならない皮に覆われている。それごと熟成庫に入れておけば、皮を除去するとまるごと可食部になるので、歩留まりがいいという理想的な部位なのだ。
あたりまえのことだが、牛一頭につきタンは一本しかとれない。だから、自分の牛を肉にするとき、タンだけはすべて自分用に確保してきた。だって最高に美味しいんだもーん!
さて、このドライエイジングした短角牛タン、仙台風に塩をして一晩おき、焼いて食べることにした。
厚めにカットしたりやや薄めにカットしたりと変化をつけて、包丁目を入れて食べやすくした上で塩を振る。それをバットに空気ができるだけ入らないようにぴっちり並べていってラップで包み、空気を抜いて冷蔵庫に。写真ではタン先が上に載っているけど、ここは焼くには硬い部位。煮込んでスープをとり、カレーにしました。
網焼きにするのが一番よいけれども、この日はその装備をしていなかったので、フライパンで重しをして焼きました。
僕は生っぽいのは好きじゃなくて、しかり焼く派。
キャベツの塩もみと青なんばんの三升漬けを添えて。いやもう、おいしいとかそういうレベルじゃない。コクのあるミルキーな香りがして、旨みにあふれた汁が口中を満たす。牛タンほどエイジングに向いた部位もないと思う。あらかじめ塩をしてあるのでなにもせず食べるし、味変的になんばんを加えてもいい。
自家用の新生君のお肉もだいぶ無くなってきた。次の楽しみを待つとしよう!