京都は上賀茂地区で代々農家を営んでいる田鶴さんから、すぐき漬けを送っていただいた。田鶴さんとこの話しは過去ログをご覧あれ。
京都の宝物・伝統のすぐき漬けは、漬物屋さんではなくて農家さんの軒先で造るものです! 上賀茂の京野菜農家・田鶴さんご一家のすぐき漬けを観た! その1
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あの京都の伝統野菜である賀茂ナスの、正しき種を受け継いでいる種採り農家さんでもあって、京都市からの認定を受けている。つまり田鶴さんがもっている種は混じりけのない、正真正銘の賀茂ナスであるということだ。田鶴さんいわく「なすび」だけど。
田鶴さんのなすびを使い続けているのが、あの瓢亭さんだ。その辺のことは下記で書いた。
ずっと、収穫後半の賀茂茄子の味わいを識りたいと思っていた。種は大きく硬くなりゴリッとするけれども、果肉は甘くほぐれやすく、美味しいものである。需給のバランスとマーケットニーズとは別の次元で大事な味わいだと感じた!
- http://bit.ly/2MWzw3J
でも、その田鶴さんはどうやら自己の農家としてのアイデンティティとして「すぐき農家や」と称している、ということを、田鶴さんの家を借りて住んでいた京大の大石が言っていた。すぐきは、カブの仲間であるすぐきを栽培して、それを出荷するのではなく漬物にする。それも、むちゃくちゃ大変な手順を踏んで漬物にする。
「すぐきだけは、漬物屋のものよりも、農家が軒先で生産したものの方が旨いとされているんだよ」とは大石の言だ。たしかに、冬の上賀茂地区を歩くと、農家さんの家の作業場には天秤と呼ばれる棒の先に石をくくりつけ、テコの原理を使ってすぐきをギューッと押してつけている光景をよくみかける。
つまり栽培だけではなく総合的な農家としての加工技術までを総動員するものなので、これこそに重きを置いて「すぐき農家や」と言っているのだろう。
その田鶴さんとこのすぐき漬け。今年はなんとぶぶ漬け用の刻んだのも入ってた。
三角錐のような形状は、すぐき特有のもの。
田鶴家に伝わるもので、だいぶ固定されているとはいえ、交雑しやすいアブラナ科ということもあって、形は不均一なものが出る。
収穫したすぐきから大石がいろんな形状のものを並べる、、、
ぜんぜん形が違う!
「やっぱり、むかしいろんなのを混ぜてたんだろうね。どうしてもこういうのが出てくる。同じ種なんだけどね。」
と。
すぐき漬けの工程は、下漬け、本漬け、発酵と言うことになると思うのだが、そう書いたら簡単そうだけど、ものすごーく大変!
まずは収穫したすぐきの皮をピーラーでシュシュシュと剥いて、悪くなったところもカットして、形を整えておく。
この作業が満足にできるようになるのに数年かかるそうだ。
この状態をみても、すぐきの形状が一定でないことがよくわかる。
これを下漬けしていくのだが、それ用の樽のデカいことデカいこと。
使う塩の量も半端ない。
そこに、せーので蓋をのせ、、、
向こう側の壁にあるストッパーにてんびん棒を差し入れて、テコを効かせる。
その先にコンクリや石などを吊して、テコの原理でギュウギュウと大量のすぐきを押して漬けていくのだ。
僕はこのてんびん棒の光景がたまらなく美しいと感じる。
下漬けが終わったら、こっから段階的に樽を変えたりしながら、さらに脱水して漬け込んでいく。
こんな風に、ペッカーンと押されていく。すぐきが含んでいる大量の水分を抜いていくのだ。
漬け始めの、この鮮やかな緑色を覚えておいて欲しい。
すぐきの巻き方、葉のかぶせ方などがとにかく美しい。
そして、てんびん。
あれだけ樽の上まで盛り上がっていたカブが、こんなにペシャーンとなってしまう!
ものすごい圧力がかかっているのだ。
ちなみに、最終工程はこうして十分に漬け込まれたすぐきを、温度を高くした「室(むろ)」と呼ばれる部屋(倉庫とかね)の中にいれて、発酵を促す。
すぐきの葉には乳酸菌が付着しているので、温度を整えれば勝手に発酵してくれる。ただし、その温度帯や、熱源としている機器については、どの家も門外不出だそうだ。僕もそこだけは入れてもらえなかったし、NHKなどの放送局もすべてお断りしているそうである。
その室からでてきたすぐきの樽のフタを開けると、色が一変している!
こんな大変な工程を経て、すぐきが漬けられている。もはやすぐき漬け造りは、農家の総合芸術といっていいでしょう。
今年のすぐき、昨年の者よりも塩梅がとてもよい。大カブひとつをすぐさまボリボリと二人で食べきってしまった!
乳酸発酵によって付与されたほどよく心地よい酸味、そして室での発酵工程が生み出したであろう複雑玄妙な旨み。最高である。
ちなみに、今年の田鶴家のすぐきはあまり量がとれなかったらしく、販売量も減るようだ。でも一般向け販売できる量があるか、確認が取れたら、ここでも買い方を書くことにしましょ。
今晩は、蕎麦を食べてから、余力があればすぐきでぶぶ漬けも食べたいものだ、、、
田鶴さん、ごちそうさまでした!