やまけんの出張食い倒れ日記

全日本食学会主催の「シェフと考える放牧牛肉生産体系確立事業」の成果発表会に行ってきた。ジャージーやブラウンスイスといった乳牛品種の放牧肥育が日本で根付くために必要なことはなにか!?

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門上さんからおいでとお声がけいただいて、表題の会に参加してきました。

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シェフが声を掛け合って、通常であれば流通に乗りにくい乳用種を放牧肥育した肉を創出しようという取り組み。JRAの事業でこれまで3カ年かけて、実際に八丈島と蔵王の牧場で主に放牧(一部舎飼い)での肥育をしてきたという。

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効率よく放牧で肥らせるために、九州大学の後藤貴文先生が研究する代謝インプリンティング技術を活用。幼児期に肥りやすい餌をたべさせておくと、その後、粗飼料でも肥るようになるというもの。たしかに、ジャージー種の肉にしては少し脂が入っているな、と思ったのだ。

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会はこの肉を使ってじっさいに三人のシェフが料理をしてみようというもの。ご覧の通りの超豪華な面々のお料理をいただきました。

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ちなみにやはり気になるのはどんな牛になるのか!?ということ。概要は下記の通りだ。

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ジャージーオスの放牧肥育ということで想像していたとおり、30ヶ月齢を過ぎていても生体重676kg、枝肉で345kgと小さい!

少し気になったのは、11月14日と畜だから、20日目に食べたことになる。枯らしを11日間したそうだが、赤身中心の肉としては熟成期間が短いように思う。あと2週間は置いといた方が、いいかもしれないけどな~。

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さて、まずトップバッターは関西の雄・ポンテベッキオ山根シェフ。

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いや、本当にズバッといろんな問題についておっしゃっていた。

「オリンピックの選手村で、いま主流の日本の牛肉は出しにくいんです。もちろん日本の黒毛を中心とする肉牛の佳さもあるんですが、世界の潮流からすると、アニマルウェルフェアなどいくつかのポイントで、出しにくい。」

そういう点から、この事業に賛同・参画しているという。さすが山根シェフである。

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料理は、ブリスケなどの硬い部位を牛の脂でコンフィした肉に、サルサヴェルデと柑橘のモスタルダを合わせたもの。

「あと、個人的にゆで卵が好きなんで」ということだが、このゆで卵が料理にマッチしてて面白かった。

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ご覧の通り繊維がばらけるほどに柔らかく加熱された赤身が実にリーンで、サルサヴェルデのオイル分を濃厚に感じる。美味しゅうございました。

お次は大将! 菊乃井・村田さんの出番でございます。

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村田さんはバラをつかった角煮。日本料理ではそれほど積極的に肉を使わないできているけれども、今後は外国からのお客さんの要望もあるし、日本料理における牛肉づかいの検討は必須となっていくだろう。

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そんな中、村田さんの料理は比較的、だれにでも受け入れやすいやわらかな味わい。

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バラの脂もトロントロン、まったく油脂を感じさせないさっぱりした旨さだ。

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ここまで、煮る料理が多かったが、最後のクイーンアリス石鍋さんはサーロインでどう見せてくれるか。

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わー、料理の鉄人世代にはたまりません。

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なるほど、たしかにオリンピアン(皿の色にまぎれちゃってますが、上のカラフルな丸いものは、左端に白いのがあります。つまり五輪!)。

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50度の低温調理を8時間施しているので、柔らかくほぐれます。美しい盛り付け、華美な味わい、さすがの腕でいらっしゃいました! ご本人いわくスジや脂はすべて取り除き、食べやすさを重視している料理。

総合してみるとやはり、熟成期間の短さもあって肉質はあっさり。その点をカバーすべく、お三方それぞれに工夫を凝らしておられた。

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さて、つい先日自分の牛を出荷した者としてみると、枝重が345kgというのはとれる肉の量が少ないということ。そこにと畜経費や運搬費がかかってくるので、単価はそれほど安くはならないだろう。そうなると、シェフ達がどれだけ全部位を買い支えてくれるのかということが大事。3年の補助事業を終えていよいよ来年からは自走事業として行うそうなので、関わるシェフたちの本気度が問われると思います。

いい会に参加させていただきました。今度は、肉をバッと焼いたものを塩だけで食べてみたいです。