ちょっと変わった形に柄だけれども、料理を盛り込むと夢のような世界が広がり、なんでも載せたくなるお皿。
お茶にお酒、ピーニャコラダなんかいれてしまっても様になるポット。
こんな陶器にであってみたい方は、10月3~8日、銀座のギャラリー Salon de Lã(サロン・ドゥ・ラー)で開催される久須美陶房の陶芸展に足を運ぶことをお勧めする。
誰しもそうだろうが、僕の青春時代、大きく影響を受けた人達がいた。そして、第二の故郷のように感じる場所もあった。その大きなひとつが、最近はムーミンの村で有名になってきている、埼玉県飯能市の奥にある久須美陶房だ。
この飯能市の山奥にある自由の森学園で高校時代を送った僕は、和太鼓に魅入られ、どこへ行くにも樫の木で作られたバチを持ち歩き(いま考えたら意味がないけど(笑))、毎日ひたすら叩いていた。卒業後、プータローを一年やってから親に土下座して予備校に通わせてもらっている夏、卒業した母校から「なんか太鼓叩いて欲しいっていう人がいるから紹介しといた」と連絡が。
いまは独特の世界観をもった俳優として有名になった田中泯さんの舞踏団にいたカワラさんという人からの誘いで、予備校に通いながら、その人の舞踏劇の伴奏を、仲間と和楽器ですることになった。
その一連のパフォーマンスでいろいろなことを学んだ(という一言ではとても言い表せないのだが)のだけれども、その舞台となったのが久須美陶房だ。陶房つまり陶芸で生業をたてる佐々木浩章(ささきひろあき)さんと、英語講師をする玲子さん夫妻の家。
天才的に旨い料理をする浩明さんが、自分の作った皿や鉢にダイナミックに盛りつけた刺身や酢の物、陶芸用の窯で焼いたパエリアを食べるのは、至福としか言いようのない体験だった。
その久須美陶房が、しばらく後に天目指(あまめざす)という、すげー名前の場所に移ってからも、僕はずっと第二の故郷のように思い、二人に会いたくて通っている。
西武線の飯能駅で降りるのかと思いきや、そこから西武秩父線に乗り換えて、西吾野へ。
駅自体がすでに山の中である。
そこから車で15分ほど、峠を登っていった中腹に久須美陶房がある。
僕には兄はいないが、年の離れた兄はこういう存在だろう、と思う浩章さん。
おなじく姉はこういう存在だろうと思う、玲子さん。
そして!
素晴らしい手料理の数々! 液燻ではなく、本当に燻したスモークサーモンは絶品!
巨大な白バイ貝も浩明さんが煮付けた。
「昨日からずっとモツも煮こんであるから食べろよ~」と。
酒飲みの浩明さん、酒が進むものしか作ってない(笑)
玲子さんが「美味しいウイスキーあるよ」と、ブッシュミルズを飲ませてくれた。ああ、スペンサーもブッシュミルは好きだと言ってたな。清冽な川の流れるこの地の水で割ると、じんわり柔らかく喉奥に染みていく。
ここ数年、なんと稲作まではじめてしまった浩章さん。しかも品種は伊勢神宮で栽培されていたというイセヒカリ。このむすびが最強に旨いっ!
「最近さあ、おれ、モリアオガエルの命を担ってるんだよ」
え?何の話し?
「虫媒花っているだろ? 虫が蜜を吸う代わりに花粉を運ぶことで、子孫繁栄する花。それがさあ、どうやら人を媒介にして子孫を残すものもあるんだよな。」
いや、だから何の話し?
「モリアオガエルっていうカエルがいるんだけどね。その卵は泡状になってて、だいたい川の水の流れの上にある木の枝とかに生むんだよ。そうしたら、卵が孵ってオタマジャクシがポトポトと川に落ちて生きられるから。」
ふむ。
「ところがさあ、なんかモリアオガエルが、真下には川なんてない、うちの栗の木に卵を産み付けたんだよ!それじゃあオタマジャクシは落ちて死んじゃうでしょ?だから俺、その下に水を入れた発泡スチロールの箱を置いてさ。オタマジャクシがそこに落ちるようにしてるんだよ。毎朝、蛇がそれを狙いに来てるのを放り投げたりしてさ。これって、モリアオガエルが、俺がそのまま見過ごさないって見抜いて、やってるんじゃないかって。」
ああ、それで人媒カエルの話しか!
これが心優しきモリアオガエルの守人である浩章さんの努力の箱。
よーくみたら、そこここに小さなモリアオガエルたちがいた!
どう考えても浩章さんと玲子さん、死んでも地獄には行かないな。モリアオガエルたちが守ってくれるだろう。
いつも久須美陶房に来ると、皿を買い求めてしまうのだけれども、常に好みの器があるとは限らない。
それは当然のことで、陶芸家はギャラリーでの陶芸展や百貨店での催事に向けて作品を作るので、ほんとうに佳いものに出会いたいのなら、そうした販売の機会に、なるべくはやく行くことが重要なのだ。
それでも今回は、「おおおっ このシリーズ、いい!」という一群にであえた。
たしかシリーズ名は「にぎわいの森」だったかな? 銀彩のふちどりが美しい!
嬉しくなって、ぜーんぶ久須美陶房の器で食卓を構成してみた。
あ、主菜は、土井善晴先生のなかでも最高に好きなレシピ、レタスの肉みそ巻き。
ゴボウとニラの効いた肉みそをレタスで巻いて、レモン汁を絞っていただくのがすばらしく美味しい!
しかも、久須美陶房の器だ!
さて、この久須美陶房・佐々木浩章の陶芸展が10月3日から8日までの間、銀座のギャラリーで開催される。下記のようなはがきが届いた。
うーん、、、なんかそそられない写真だぜ!浩章さん、写真のピントが合ってないぞ!ということで、俺が補足するけど、ちょっとみたことがないような不思議な美しさを持つ器があること間違いない。
しかも、浩章さんのうつわは、実際に料理や酒を盛り込んで飲み食いしたときに、その佳さが最高に発揮されるのだ!ということで、今回そのギャラリーの中で、浩章さんのお手製の料理などが器にのって、つまめるようになっているらしい!!!!
ぜひ、多くの人に足を運んでいただきたいと思う。僕も期間中、必ず顔を出します。おそらく週末だな。
どなたか出会えたら一緒に、浩章さんの器で飲みましょう! 浩章さん、いい皿つくってね!
楽しみにしてまーす。
■銀座 ギャラリー ラー
2019.10.3 thu〜10.8 tue
EXHIBITION
2019年10月3日(木)〜10月8日(火)11:00〜19:00(最終日は17:00まで)
Salon de Lã(サロン・ドゥ・ラー)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル607