食関連のジャーナリストの会に所属していることもあって、企業からのプレスリリースはよく送られてくるほうだ。そうしたものに滅多にでることはないのだけれども、これは無視することができなかった。
そばの上に肉とゴマ、海苔をのせ、あろうことかラー油を垂らしたつゆで食べさせる「肉そば」という料理を生み出した港屋。大行列で入店まで30分以上並ぶことがふつうだったあの店が突然幕を下ろしたのが今年の2月のこと。
菊地さんと親交があったことからやりとりをしたこの記事は、とても多くの人の目に触れたようだ。
■【菊地さんご本人より写真の追加ありアップデートします】大事件!あのラー油入り肉そばを”発明”した「港屋」が閉店した。店主・菊地さんご本人に確認。肉そばのオリジネーターが大繁盛の中で静かに下した決断、彼らしい。
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2019/02/29774.html
そう、港屋は閉店したのである。その後も、彼が生み出した肉そばというフォーマットを模倣する店は繁盛を続けているのに、元祖の店はなくなってしまった。大繁盛をつづけていながらなぜ?という部分はあきらかにされていないが、実に彼らしい決断だったと思う。
その港屋の店主である菊地さんが、カップヌードルの日清食品と共同開発した商品を出すという!しかも、あの島耕作シリーズともコラボしてだ!
ということで昨日、プレスリリース会場である講談社へ行ってきた!
講談社「モーニング」に連載中の島耕作シリーズについては識らないって人はいないだろう。
僕もずいぶん昔(課長時代から)から読んでいる大人気漫画で、主人公の島耕作はどんどん出世し、社長から会長となって、そして8月22日付けで相談役となった。そのタイミングに合わせてのリリースなのである。
なので、このカップ麺は「相談役に就任後初めて受けた”相談”」という触れ込みになっている(笑)
会場内には島耕作シリーズが展示されていた。
なぜ港屋と島耕作シリーズなのかというと、この漫画の中に、港屋をモデルとした立ちそば店が何度も何度も登場するのである!
その模様は港屋ファンであれば「おお、港屋だ!」わかる内容ばかり。
単にそばが出るだけではない。実にハンサムな店主も登場し、島耕作の部下のゲイの男性が一目惚れしてしまうという、作品のなかでの重要な位置まで占めてしまっているのだ。
記者会見始まる。まずは島耕作シリーズの作者である弘兼先生の入場!
この辺のおはなしはきっと他でも観られると思いますので、割愛します(失礼!)
そして、港屋店主・菊地剛志さんと、日清食品・ブランドマネージャー渡邊豪さんの入場!
菊地さんの姿は、港屋の厨房に立っていた時そのものである。
弘兼さん、友人から「価値観が変わるようなそば屋がある」ときいて、初めて港屋へ行ったそうだ。その時に衝撃を受けたそう。「ふつうにそば屋で修行した人なら、こんなそばを考案したら親方から怒られるでしょう。でも、菊地さんは金融の仕事をしておられたから、飲食の経験が無い。だから逆にこんなすごいそばを開発できたんだと思います」と。
「金融の仕事を辞めて、自分が新しい食を世に出すんだと思って、テストキッチンにこもってアドレナリンがでまくった状態で開発していました。」
と。
今回の商品のはなしは、まず日清から菊地さんに話しがきて、そこで弘兼先生に打診し、ダブルのコラボという形が実現したのだそうだ。
日清食品の気合いの入れ方もすごかったそうで、安藤社長が港屋で菊地さんと一緒にそばを調理し試食して、そこからゼロベースで作り直したとのこと。
「港屋のそばの特徴である太麺を活かし、またつよい食感も表現しました。こう言っては何ですが、いま出ているそばの中で最高レベルの品質であると自負しています」
とのこと!
ここで、カップ麺が運ばれて、、、みなさまで実食!
「このあと、お集まりの皆様も試食いただきます」とのことだったので、もう待ちきれん(笑)
うーむ、早く食べたい!
ちなみに質問コーナーもあったのだが、集まった人達は新聞や雑誌メディアらしく、島耕作シリーズのはなしや日清食品への質問に終始。おそらく港屋菊地の話しに精通している人はあまりいなかったかな?(笑)
なぜなら、港屋ファンであればかならずするであろう質問がでてこなかったから、、、 その質問のことはのちほど!
さて、記者会見コーナーの後ろには、試食の準備が!
日清食品の方々がお湯を入れ、タイマーをかけてくれている。
ちなみにお湯を入れてからの時間は3分ではなく5分! やはりそばの太麺であることから、時間は長めになるようだ。
カップのトップには、スナック「のんのん」のママである馬島典子が描かれている(笑)島耕作シリーズには男性目線からのイイ女がたくさん出てくるのだが、個人的には大町愛子が大好きである(笑)
さて、タイマーが鳴った!
ラー油をたらさない状態のそばはこんな感じ!ねぎ、鶏肉、ゴマなどがみられます。麺線のテクスチャは、当たり前かもしれないがしっかりそばしてる!という感じだ。
そこに、このラー油を!
おおおおっ たしかに港屋の二大看板の一つである「温かい鶏そば」を彷彿とさせるみためになった!
そば麺はたしかに太い!港屋で食べたあのゴワッとした食感の麺そのものである。港屋の麺は、菊地さんが「東京で営業しているそば店の中でもそうとう上位に来るはずの硬度を、食材の仕入先ともそうとう検討して実現しました」と語っていたとおり。
ズズズッとすすり込むのはちょっとまて。ラー油が絡んでるから、喉の粘膜を慣らしてからじゃないとキツイよ!すこしつゆをのんでからの方がいいです(笑)
つゆを飲んで感動、あの港屋の鶏そばの甘みの強さがしっかり表現されている!
そしてそば麺のざらつき感、強い食感にも驚いた。これはちゃんとしたそば麺である。さすが日清食品、、、
菊地さんが歩いてきて「あっ やまけんさん!来てくれたんですね!!」と何年かぶりの再会。話しをききました。まずききたかったのは、港屋ファンなら誰もが持つ質問!
――なぜ「肉そば」ではなくて「鶏そば」なの?
「ああ、それはきっとみなさんが思うことですよね。やはり肉そばは「冷たい」が重要な料理なんです。温かく食べるカップ麺との相性もあって、今回は鶏そばとしました。」
――でも、いずれはコラボ第二弾として、冷たい肉そばを出す可能性はあるという、含みをもたせたと考えてよい?
「ふふ、、、はい、その含みはもしかしたらあるかもしれません。」
――で、飲食店としての港屋はもうやらないんだよね?
「はい、僕は港屋を引退しました。僕が港屋で調理することはありません。」
――「星のや」東京の肉そばは、どのような関係で運営しているものなの?
「そうです、星のやさんの港屋2は僕がしっかり責任を持っており、これからも続いていくお店ですので、安心お召し上がりください。」
――菊地さんのこれからの仕事は?
「じつはいま、キクチ・アートギャラリーの代表をしております。僕がやりたい事だけを菊地の審美眼で作品(アート)にしていく。そういうコンセプトです。じつはその商品にはトマトもあるんです。やまけんさんともその辺のお話しをさせていただきたいです!」
と。ちかく、僕は彼の新会社で話しをきいてこようと思います。
お土産をいただき、事務所であけたら、こんな小皿までついた素敵なセット。
いいですね、島耕作シリーズともども、港屋がのこした肉そば文化はこれからも栄えていくだろう。
ということで、港屋閉店するも、菊地は生き続ける!これからの活躍に期待します。
そして日清食品さん、困難だろうけど、つぎはぜひ「冷たい肉そば」を実現して下さい!