じつはここのところ数ヶ月、埼玉の肉匠もりやすでドライエイジドビーフを担当する黒瀬君から、「新商品の試作をしています、協力していただけますか」という打診を受けていた。
埼玉に本拠を持ち、西武百貨店の店頭で大人気の精肉店を切り盛りする肉匠もりやすは、ドライエイジングビーフ普及協会の認定取得企業ともなっている。埼玉県内でドライエイジドビーフを食べるなら、僕が知る限り、ここが手がけたものがもっとも質が高いことは間違いないだろう。
そのもりやすで作っている、エイジドビーフと岩中豚を混ぜて作ったハンバーグが旨いということは以前にも書いた。
■職人を応援!肉匠もりやすのドライエイジドビーフ入りハンバーグはマジで旨い!お薦めできる一品ですな。
やまけんの出張食い倒れ日記 http://bit.ly/31qSEdc
「これまで好評のハンバーグに加えて、もっと手切り感を活かしたものを作りたいと思うんです。ミンサーで挽き肉にしてしまうと、繊維が潰れて日本風のハンバーグになってしまう。ですから、手で切った(チョップした)肉を捏ねずに成型する、いわばチョップドステーキというものです。」
チョップドステーキ! いいじゃん、旨そうじゃん!
ということで、実はこの間、試作品を何度か送ってもらって試していた。
ちなみにこの製品、味付けはなんと塩とタマネギのみである。エイジドビーフの味と香りが強いので、他の調味料は要らないのである。なんたる説得力!
ではなにが開発ポイントかというと、ベースとなるエイジドビーフの割合と、それに合わせる副原料の形状と割合である。エイジドビーフだけで作ったら旨いのは当然だけど、べらぼうに高くなってしまう。エイジドビーフの味と香りを引き出しつつ、そこにまた美味しさを付加できる副材料はなにか。
結果的にもりやすが得意とする黒毛和牛の肉を粗挽き
ちなみにエイジドビーフも、短角のモモで作ったり、交雑種、黒毛経産で作ったりといろいろ試行錯誤をしている。
これがですね、とってもクッキリハッキリと違いが出てくるんですね。黒毛の割合が多いと、よくありがちな黒毛ハンバーグの香りになってしまう。かといって、熟成の手切り肉が多いと、初心者にはちょっと強いかなあ、という感じの食感になってしまう。
ぱっとみから、ハンバーグではないことがわかるでしょう。
この断面観ると、本当にチョップした肉がベースになっていることが分かると思う。これだけじゃ結着しないので、粗挽き(6mm)にした黒毛の肉を加えてまとめているわけだ。
「手切りと粗挽きの差ですが、手切りでは繊維をきれいに立ちきることができますが、粗挽きでは繊維も複雑に残った状態で出てくるため、食感に差が生まれるのではないかと思います。また、今回手切りを前回より細かくしたことも影響していると考えられます。熟成肉らしさを出して、食感と結着に気を付けながら、小売りで販売できるチョップドステーキに仕上げたいと思います。」(黒瀬君)
何度かテストをする中で、ベストバランスこれじゃね!?というのが出てきた。
結局最後は、「熟成肉の手切り+熟成肉の粗挽き+黒毛和牛の粗挽き」という複雑な構成に。もちろんそれぞれの配合比率があるのだけれども、それは企業秘密。
ただ、最終的なドライエイジドビーフの割合はここで書いてもいいだろう。なんと、熟成肉8割!それってすっげー高くついてるんじゃないの?と思うけど、それが一番旨かったわけだから、まあしかたがないね。
完成した商品版がこちらだそうだ。
真ん中が今回発売したチョップドステーキ、右がエイジドビーフ+黒毛和牛のハンバーグ、左はエイジドビーフ+岩中豚のハンバーグ。
これはね、文句なしに旨いです。ドライエイジドビーフはちょっと手が届かないや、と言う人でも、150g900円ならいけるでしょう。あと、うちもすでにやってるけど、贈答用にいいと思います。ステーキ肉送られると「どう焼いたらいいの!?」と聴かれるので説明が大変なんだけど、チョップドステーキならまあみんな大丈夫。そして、、、すっげー喜ばれるよ!
ということで、ひきつづき黒瀬君頑張ってね!