やまけんの出張食い倒れ日記

リムーザン種の生産農家を訪ねて。そこには繁殖肥育一貫というか、日本とはまったく違う経営形態の農家がいた。そして、リムーザン種の尻の大きさは、日本の肉牛の常識とはかけ離れたものだった!

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リモージュ市長から中澤さんへのメダル授与の後、車で移動して、だいぶ、だいぶカントリーサイドへ。

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むかしながらの農家の牧場で、大勢の人達が僕ら、というかトップトレーディング中澤さんを待っていた(笑)

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そして、こんな牛ちゃんが待っていてくれた!

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なんと、リムーザン牛の種雄牛である! 、、、わかりますよね、後ろ足の前に、いちもつが垂れ下がっているのが。

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このオス、18ヶ月齢だという!まだ若き勇者という感じだが、公文ちゃん、みた瞬間から興奮!

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「な、なんてでっかい尻なんでしょう、、、」と絶句している。そう、フランスというかヨーロッパの肉牛の育種・改良方針の重要な部分がおそらく後腿部の大きさ。

「ほら、牛を観るときは、こうやってケツをつねるんだ。」

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と教えてくれるのは、あの育種おじさん。お名前はジャンさんです。

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みんなで触りまくります。すると公文ちゃん、「なんでこの子、こんなに触らせてくれるの?土佐あかうしのオスだったら僕ら、無事にすんでませんよ!」と。

そう、雄牛ってすっげー怖いんですよ、はっきりいって猛獣。この子も「寄るなよ!」という態度ではあったけれども、それでも日本のオス牛にくらべるとおとなしいと思います。

だって最終的にはこんなふうに囲まれてるんだもん。

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実はこの農家、リムーザンの種雄牛コンテストで優勝しまくっている、超名門生産者である。その証拠に、この壁を観よ!

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これぜんぶ、コンテストでの優勝プレート。

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ここにあるのはごくごく一部だ、とのこと、、、じつは一つ前のエントリの、コンテスト映像の写真に生産者が写っていた。

が、じつはもう彼らは引退したという。この牧場を、信頼できる若者に経営譲渡したのだという。そして経営を譲渡され、800haの土地で500頭以上の牛を飼うのが、なんと20歳の兄と16歳の弟の兄弟だというのだ!

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上の写真の左の二人(立っている二人の右が兄。)

この二人と、親御さんも手伝いはするようだが、基本的に5人以下で牛の面倒をみているらしい。

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いやービックリである。話しを聴いていると、なるほどそういうやり方なのか、それなら回るかもという感じではあるのだが、、、

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はい、お約束の記念写真。オス牛くん、よく我慢してくれました。

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まずはしつらえてくれたテントで昼食。

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前菜、なかなか美味しかったなぁ。とくにオニオンサラダかと思ったらチコリの輪切りのサラダだったやつが、なんともいえず苦みが効いてよかった。

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タルタルも美味しかった!やはりこちらの牛肉はタルタルで食べるのが最適かもしれない、なんて思ってしまうほどに。

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そして、「このリムーザンの肉を焼きますよ~」と。

ああ、目の前で焼いてくれるのか、と焼いているところを観に行ったら、ワゴン車の後ろに電熱コンロを設置し、火入れ。

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焼き方、どうする?と聴かれたのでブルーとセニャンの間で、と言ったのだけれども、全然通じてないらしくブルーできてしまいました(涙)

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味は、、、んー 繊維の強いマグロってかんじですね、マグロ。あっさりしているのは、おそらく熟成していないかなりフレッシュな肉がきているからだろう。なので、あんまり味がしません。焼く前の肉をみておわかりのとおり、手当を経ておらず、水分もた~っぷりの状態。これを、ケータリング調理の電気式グリルで鉄板焼きするのだから、そりゃなかなか美味しく焼くのは難しいよな。

正直に書くが、これまで海外の産地巡りをした際に、その生産地近くで食べる肉で「美味しい!」と思ったことがほぼない。それはおそらく、彼らは牛を育てるプロと、牛のと畜・加工のプロなのであって、美味しく食べさせるプロではないからだと思う。日本で見直されつつある肉の熟成技術のように、流通段階から肉を美味しく仕上げていくという視点を持っている産地があまりないのは残念なところ。

と思っている僕と、なんとなく感じ取るオリビエ。「こういう環境での食事で、ケータリングなので、あまりコンディションがよくなくてゴメンね」と。いえいえ、それはもう仕方ないことなんです。

むしろ、僕のような立場の人間なら、その肉のポテンシャルが最大限に引き出されたらどうなるのか?を見越していくことが求められるだろう。実はこの旅の後半に「そうか、こうなるのか!」と膝を打つタイミングがあるのだが、このリムーザンの経産牛はやはり、熟成によってとてつもなく美味しくなる可能性が高いと思ったことをここで書いておく。

それにしても、本当に赤身をフランス人は好むのだなあ、ということをまざまざと見せつけられてしまう。だって、ひとり250g以上あるのを、ペロリと食べてしまうのだから。

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さあ、例のジャンおじさん。育種の専門家さんでいらっしゃいます。

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「あのな、うちのリムーザンはな、、、」といろいろ説明してくれる。

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いいか、ヨーロッパにおいて、リムーザンは一番生産されている品種なんだ。アバディーンアンガスは二番目なんだぞ。というように、各国で生産されている品種別の解説。おお、そうなのか!という話しが多かった。ドイツではリムーザンが一番だ、というように各国別の状況を教えてくれて貴重な体験!

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「育種には遺伝的脂質が大事でな、、、ん?みんな、DNAってわかってるよな?」

と講義開始。

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ジャンおじさんの講義は英語です。「ジェネティクスがな、」とやるんですが、みんなちんぷんかんぷん。

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これは!とおもって公文ちゃんを呼ぶ。はい、公文ちゃんは獣医師免許を持ち、現役獣医として県内をまわっていた男。それがいま、畜産科であかうしのマーケティングもやっているわけです。

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「はい、公文さん、出番ですよ~」と中澤社長からバトンをわたされた公文ちゃん、ジャンおじさんの講義に「ああ、はいはい、そういうことですねー」と。

たちまちジャンおじさん、 「お前、わかるのか!?わかるんだな!よーし」

というかんじで講義に熱が入った!

公文ちゃんによれば、リムーザンは頭数の母数が多いこともあって、国や食習慣による多様なニーズに合った牛が育種されている。その中から相手が好む形質・気性の牛を提供できるようになっているのだということ。日本の黒毛和種はあくまで日本の国内市場むけの育種方針に沿ったものが育種されているけれども、リムーザンはもっと広い観点から育種されているというわけだ。

「えっ じゃあ角無しのリムーザンなんてのもあるのですか?」

と公文ちゃんが聴いたら、「あるある、カタログにPolled って書かれてるやつを選べばそうなるんだ」とジャンおじさんがいったそうだ。

「えっ 種雄牛カタログあるんですか?」

「あるよもちろん!ちょっと待ってろ!」

とジャンおじさんが、なんとリムーザン種の種雄牛カタログを持って来てくれた!

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いやーーー マニアックな土産ができた!(笑) 育種にも携わってきた公文ちゃん、大喜びです。

ちなみに公文ちゃん、土佐あかうしのなかでも一番尻のでかいやつの写真を見せたのだが、、、

「んーーーーー(失笑)」とされてしまったらしい(笑)まあ仕方ないね、育種方針が違うから。

「ジャンおじさん、そろそろ牛を観たいよ」と僕がお願いすると、「おお、行こう行こう!」と。

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ここは主に種雄候補を育てている牛舎。

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その中でひときわマッチョなやつが居る! こいつ、もしかしてダブルマッスルではないか!?

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「おおそうそう、そいつダブルマッスルなんだよ。スーパースターになるね」と。

そうか、、、ダブルマッスルとは、イタリア編のピエモンテーゼでFASSONAという牛のブランドを視察させてもらった際に書いたが、筋肉量がおよそ二倍ついてしまうという遺伝的特性をいう。端的に言えば赤身度がむちゃくちゃ高くなり、まったくサシは入らなくなるため、日本では早々に淘汰される特性なのだが、「赤身しか欲しくない」というヨーロッパのニーズではスーパースター的に扱われるわけだ。

ただし、オリヴィエはこのダブルマッスル形質の牛の肉は「味がしない、旨くない」と言っていたが(笑)

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それにしても、と公文ちゃんが嘆息する。

「ふつう、若くてもオス牛をいれたマスのなかに人間が入ろうものなら、もう威嚇されるわ、角をふるおうとするわで大変ですよ」と。

リムーザンは角はとっちゃっているようで、その危険は少ないが、それでも気性的にかなりおとなしいと公文ちゃんは感心していた。

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こちらは肥育の仕上げ段階のマス。

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やはりデカい尻が目立つ!

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こうしてひとつの経営体の牛舎に、種雄牛候補と経産牛肥育が入り交じっているのもなんだか不思議だ。

この牛舎の外には草地がひろがり、20頭くらいの牛群が放されているのがみえる。

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母子の放牧である。

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ジャンおじさん、公文ちゃんを「カモン、マイフレーンド!」と読んで牛をさわりに行く(笑)

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20歳の青年が500ha以上を切り盛りしているのですからね、本当にスゴいです。

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左はオリビエの率いるパルミフランス社で働くフローランスさん。日本在住歴が長く、通訳にあたってくれました。

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フランスでは肉牛は自然交配が主流だそうなので、この群のなかにもオスがいます。若き農場主の左にいる子がそう。やはり若そうだね。

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メスと仲睦まじくするのかとおもったら、ゴン!と頭突き。これも愛なのかしら、、、

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育種関係者たちは、もはや言葉の壁を越えて通じ合っておりました。

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「さあ、サヨナラの前に、前農場主の池のそばのコテージで、シャンパンを飲もう」

え、池?コテージ??

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ほんとに池があった、、、って、湖じゃね?

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ここは、若き20歳の青年に経営を移譲した前農場主夫妻の家だという。

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なんなんですか、この素晴らしき環境は、、、

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彼らが農場を経営している時、まだ幼い子供だった彼がよく手伝いに来ていたそうだ。牛が好きらしくずっと出入りするようになり、牛の飼い方を教えていた。自分達には子供がいないので、この子達に継がせたいと事業譲渡をしたそうだ。

そういうケースは多いのか?ときくと、「極めて特殊」といっていた。そうだろうなあ。

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素晴らしい一時であった! フランスはとても、豊かである、、、

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それにしてもこのリムーザンをめぐる旅でもっとも印象に残った人と言えば、、、

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ジャンおじさんだ! この人のことは忘れられそうにない。

世界には世界の理屈での牛品種育成があった。日本の肉牛品種の育成方針の中にも、日本国内向けだけではなく、世界を見据えた育種戦略が必要になっていくのかも、しれない。

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