フランスの肉牛生産農家も、肥育段階の最終段階ではコーン(メイズ)を与える。ただ、日本と違うのは、その子実コーンもフランス国内産だというのだ。そうか、そうだよなあ、羨ましいなあ、と思ってしまった。
そして、もうひとつの収穫は、彼ら生産者がEUからの補助金を得ることによって、経営が健全になり立っているということを確認できたことだ。日本では「農畜産業は補助金漬け」、「だから脱補助金で競争力を」という批判がなされるが、EUも、そしてアメリカでも、農畜産業が単体でペイすることはなく、補助金を(場合によっては日本以上に)投入している。でもフランスでは、それを国民が糾弾するようにはみえないということだ。
中西部、モンリュソンから1時間ほど走るが、高速道路の両脇も、またふつうの田舎道の脇も、牛が放牧されている光景がズッと続く。
もちろんこれらは母子である。日本では肉牛の繁殖雌牛から生まれた子牛は、早い段階で母牛から離されて育てられるが、フランスでは8ヶ月程度は一緒に過ごすことが多いそうだ。その間、母牛から乳を飲ませてもらえるので、健全に育つと。
また、経営体によって異なるが、35頭くらいのメスの群に一頭の種牛を入れる自然交配が普通に行われている。酪農に関してはほぼ人工授精で、肉牛はほぼ自然交配なのだそうだ!
ピュイグルニエ社が契約している生産者の農場へ到着。規模がデカい!
農家のおかあちゃんがなにやら切り分けてくれているのが、、、
うわーい 焼きたてのケーキ! フランスではこういう集まりの時、お茶(コーヒーか紅茶)、クッキーやチョコレート、そしてケーキなどが必ずテーブルに乗っていて、嬉しい!ケーキ二切れいただきました。美味しい!
この生産者は3兄妹の家族での共同経営。200haの放牧・採草地を所有し、800頭の牛を保有。そのうち280頭が子牛だという。すべて自分の農場ないで繁殖~肥育まで一貫経営だ。
しかも10頭の種雄牛をもっており、やはりすべて自然交配でやっているのだそうだ。
フランスでは肉用になる牛の割合として経産牛が最も多いというのは先に書いたとおりだが、その仕組みがまだよくわかっていなかったのだが、おぼろげにみえてきた。
フランスはEU最大の子牛供給国で、周辺国に子牛を輸出している。だから母牛を多数もって子牛をとるのが一番の経営安定の近道だ。子育ての上手ないい母牛は日本とおなじく7~8産くらいさせるそうだ。ただ、その過程でどうしても子育てがヘタだったり、問題のある牛も出てくる。そうしたメスを3~5経産程度で肉に回していくというのが実際のところだそうだ。
おもしろかったのは、牛の健康面の話し。放牧で牧草を食べさせている時間が長いことから、牛のコンディションはいいのだろうと思っていたが、「ここしばらくの間で牛が病気になったのは2年前のことかなあ」とのこと!だから、獣医師を呼ぶことはほぼないのだそうだ。もちろん、牧草の栄養価の分析や、餌の設計で指導を受けるコンサルはいるらしいが、獣医師を頻繁に呼ぶということはまったくないのだそうだ。
「だって、農家のほうが牛を育てる専門家なのだから、医者よりもよくわかってるからね」
と、当たり前のような顔で言っていたのが印象的だった!
そして面白かったのは、「補助金ってもらってますか?」という話題。
「もちろん!EU内でのプログラムがあります。 補助金がなかったら、われわれは破綻しているよ!」
とのこと。設備投資も大きく、伝染病などのリスクのある畜産業だから補助金はもちろんある。ただし、それを受け取るために、彼らは畜産だけではなく、周辺環境の保全や景観の保持にも責任を持つ。この美しい景観があるのは、たんに自然にあるのではなく、彼らの責任といて維持されているわけだ。
EUは農林水産業に「責任」を課すことで、補助金を交付している。国民全員がそれを「どうぞどうぞ」と言っているわけじゃないだろう、きっと「農家への補助が多すぎる」という国民もいるのかもしれないが、日本のようにあたかも「日本の農畜産業だけが補助金漬け」のような報道はされていないと思う。
牧場内を見せてもらう。
遙か向こうに、放牧の牛群がいる。手前の変な物体は、チューブ状のロールベールサイレージ。切れ目無く200mくらい続いてる。どうやって使うんだろ?
繁殖舎には、シャロレーをメインに、あかうしに少し似ているオーブラック種、そして預託を受けている乳用種がいた。
肥育舎の前に、飼料置き場があるのだが、、、
ここがまた素晴らしかった!
肥育段階では穀物も与えているフランス畜産業だが、その飼料のほとんどがフランス国内産だという。
「多くはこの100キロ圏内で穫れたものだよ!」と。
この子実コーンも、彼ら自身が生産し、飼料工場で挽き割りなどの処理をしてもらったものだという!
いまの日本ではなかなかできない飼料自給の姿である。
そしてフランスでは豊富に供給される麦類。
大豆粕。
ビートパルプなどもペレット状で供給されていた。
農家さんに別れを告げ、ピュイグルニエ社がドライエイジングの技術開発を委託した研究機関ADIVへ。
研究の話しを聴いた後、クレモルフェランの街で昼食。
リムザン種のバーガーパテ100%と書いてあったので、ふつうのハンバーガーを食べようとオーダーしたのに、なぜかバンズがパンではなくジャガイモフリットのものが出てきてしまった、、、大失敗(笑)