やまけんの出張食い倒れ日記

NHK「プロフェッショナル」で出演が決まっている南草津「肉のサカエヤ」新保さんを事前勉強しよう!まず目利きと仕入れが特別で、熟成庫には他が真似できないご神体があり、そして彼の黒毛の経産牛の熟成に関しては最高レベルに旨い!(その3)

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さて、いよいよ明日のNHK「プロフェッショナル」で、サカエヤ新保さんが登場する。事前勉強はそのお肉の味わいへと進みましょう。そうそう、一つ目のエントリで、新保さんの肉を仕入れる東京のラッセの村山太一シェフのことを「村田シェフ」と間違ってました、ごめんなさい。村田シェフというのは今回登場する方です、間違ってしまいました。

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サカエヤの建物は精肉店であるわけだけれども、先のエントリでみた加工場のことを考慮しても大きな建物だ。

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じつは、2018年の移転に伴って、新保さんは精肉店スペースの隣に「セジール」というレストランを出店したのである。

いかんいかん、肉ばかりに気をとられて、内観をしっかり撮影してくるのを忘れてしまった。

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シェフは長野のホテルブレストンコート出身の村田巧さんだ。プレストンコートと言えば、あれですよあれ、凄腕シェフが有名ですね。そこでガンガン鍛えられていた村田さん。サカエヤの肉に出会って、衝撃を受けたそうだ。

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新保さん、最初からリニューアルをする際には、置いてある肉を食べられる場所は作ろうと思っていた。ただ、それはちゃんとしたレストランというよりは、売場の隅に試食コーナーを置くくらいの想定だったそうだ。

でも、村田さんの熱に触れていると、そんなんじゃダメだ!と思ってしまったらしい。

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結局、立派なレストランを作ってしまうに至ったわけだ。

ちなみに、厨房に入らせてもらうと、とにかくこの店を象徴する「窯」がある。

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ここで、炭と薪を使い分けて肉を焼いていくのだ。

まずはこれ、僕がサカエヤの肉の中でもっともすばらしいと思う、黒毛和牛経産牛のエイジドビーフだ。

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Lボーンにカットして焼く。経産牛といっても、廃用牛をそのままではなく、再肥育をかけたものなので、サシもごってる入っているし、筋間もかなり噛んでいる。これを炭火で焼いたら炎上しまくるやつだ。

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それを、むっちゃくちゃ近火で焼く! いや、近いって言うか、、、

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炭の上に直接置いてるって感じだよね? 村田シェフの火入れ、攻めに攻めている!

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ただ、数枚の写真をみれば気づくと思うが、レンガを渡した部分と炭にダイレクトにのせる部分に網をひんぱんに行き来させ、たえず移動させている。

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さきほどの肉を投入してから数回ひっくり返し、いちど窯の外に出して休める。

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この時点で4分しか経っていない!そうとは思えない姿である。

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ここからも、極強火に短時間(2分ほど)あてて、すぐさま休ませるという工程を踏む。

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おそらく、セジールでは冷蔵庫に入った肉をシャンブレせずに焼くのだろう。冷たい内部にじんわり温度を浸透させるために彼が行き着いたのがこの火入れなのではないだろうか。

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11分経過!

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完成!およそ20分でこの状態になりました。

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この黒毛経産牛、赤身部分の味わいが極大化されている。その一方で、ウェットの状態ではくどかったであろう脂が、熟成段階の分解作用で柔らかな口当たりに変化し、バターとチーズの中間のような香りに変容している。

僕は2008年あたりからずっと「経産牛は美味しい、経産牛こそが美味しい」と言い続けてきているけれども、この肉を食べたらわかるよ!といいたい。サカエヤを象徴する肉と言えば多くの人が「近江牛」というかもしれないが、僕は黒毛の経産牛こそがサカエヤの看板商品ではないか?と思っている。

あ、一足飛びにステーキにいってしまったけれども、もともとこの店の売りは、サカエヤが扱う肉の全ての部位。中にはステーキにはできない部位もある。そうしたところをすべて商品化するという任を、村田シェフはもっているようだ。

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サカエヤ名物のタルタルステーキ。もちろん違法に出しているものではない。それどころか新保さんが大枚はたいて保健所認定の工場を作り、法定措置をした合法的なタルタルだ。

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新保さん自身が、濁った味わいが嫌いな人だと言うこともあるが、このタルタル、透き通った感じの味わい。文句なしだ。

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フランスにいって食べたことがある人なら懐かしいだろう、ステークアッシュも楽しむことができる。

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ハンバーグではありません。

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以上ランチの模様。

以下は、もうすでに店が閉まっているのに、僕の東京からの移動に合わせてくれて、閉店後に焼いてくれたときの写真だ。

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メニュー右側をみると、ブーダンやジャンボンブラン、パテカンなど、精肉として売るのに向かない部位などをぶち込んだシャルキュトリが並んでいる。これが、村田シェフがいるという最大の意義だろう。

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どがーん! これが、サカエヤとセジールのシャルキュトリだ。

以前も掲載した写真だが再掲しておく。この写真はSIGMAの変態カメラdp3Quattroで撮影したもので、こんな小さな写真ではわからないけれども、でかい画面で見ると「うおおおおっ」と驚くようなエッジの切り立った写真なのだ。

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ブーダンノワールの血は、輸入の豚血ではなく、信頼できる屠場からもらってくる新鮮な血だったはずだ。

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三重県の農業高校である愛農高校で生徒が育てた愛農ポークを仕入れているのもサカエヤの特徴だ。その全部位の端材をゼリー寄せにしたもの、とてもクリアな味わいと香りだ。

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それはもちろんパテカンやジャンボンブランにもいえること。

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また新保さんは、レバーの仕入にはとにかくうるさいようだ。信頼している屠場から、これぞと思う品質のものがあったときしか仕入れないと訊いた。だからだろう、選り抜かれた原料で作ったレバーペーストは本当に美味しい。

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新保さんは、一般的にいってとっつきやすい人ではないと思う。僕はきたやま南山の楠本さんの繋がりもあって、最初からフランクに接してもらってありがたかったのだけれども、ソリの合わない人は本当に合わないだろうと思う。

というより、肉の業界でなんらかの世界を確立している人の多くは、みんなクセが強い!(笑)

その中でも新保さん、ブログやFacebookとか観てればわかるが、舌鋒も鋭い。ので、きっと合わないと思ってる人は多いだろうなあ、と思う。

でもね、肉に関して新保さんが言ってることって、じつに普通のことだと思う。おそらく新保さんが素直に言ってることが利益相反する部分が現代の精肉業界にあって、そこに触れる人達は「なに言ってんだよ」と言うことになるのだろう。

ただし、新保さんは自分の城を築き、その中でしっかり結果を出している。稀少な牛や豚の生産者と巡り会い、一頭まるごとをリスクをとって引き受け、試行錯誤して手当てし、納得のいったものを販売する。その過程ではかなりの失敗もしているはずだ。失敗と簡単に言うが、牛肉一頭分で失敗すると、シャレにならない損失になるのだからね。

そんなリスクを乗り越えて結果を出しているから、リピート客もつき、販売に窮しているということもない(ようにみえる(笑))。

立派な肉屋ではないか!

そんな彼の最近の鉄板ラインナップが、まずは鹿児島産の黒毛経産牛。

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キントア豚の分厚いステーキ。

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焼き上がった肉になんかのせてるなーと思ったら、、、

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なんと、チーズで有名な吉田牧場のブラウンスイスの肉に、吉田牧場のチーズを合わせて! この肉も、吉田さんとの出会いから始まった取り組みだと聞いたが、当初は手当てしてもいっこうに美味しくならず、困ったもんだと言っておられた。それを試行錯誤して、「赤身が美味しい」と言える状態にもってこられたのだ。ガシィッと噛みしめる真っ赤な肉、熟成による香りの付与によって、味わいがよくなっている。

そして、サカエヤの取り組みの極地といえるのが、北海道の様似町で、西川奈緒子さんが完全なる林間放牧でアンガス牛を育てている「ジビーフ」を引き受けていることだろう。

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正直に言うがジビーフ、新保さんが取り組み始めた当初のものは、食べられたものではなかった。赤身の肉が全て美味しいなどというのは幻想だ。美味しい赤身は美味しいが、まずいのは食べられたものではない。

それが、ここのところお世辞抜きで美味しいといえる肉になってきたと思う。実際、肉にはなーんにも定見のないうちの母がサカエヤの色んな肉の詰めあわせセットを買ったのだが、「ジビーフっていうのが一番美味しかったよ」と言ったのには驚いた。

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それにしても、こんなに食べらんないよ、と思ってたら、スタッフ一同で酒盛り開始です。いいチームだ。

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ところで、昨晩、新保さんからメッセージがあった。

「6月から有料で肉塾をやるんですが、参加条件にやまけんさんの本を課題図書にしているんですよ。申込み者殺到で追加の日程検討中なんですけどね。」

えええっ!?それって「炎の牛肉教室!」??

ありがたい!ということで、ここに告知。ただね、どう考えてもプロ向けですので、気軽に参加できる話ではありませんよ~。

◆ゴール
・モモ1本を塊から骨を抜き、トリミングしてカットできるようになる
・お肉についての基礎知識を体系だって学び、プロとして人に伝えることが出来るようになる

◆参加条件
・連続講座のため、全日程の8割以上に参加できる方
*毎回復習用の動画を撮影し、後日参加者限定で公開します。
Iphoneレベルです、ご了承ください
・事前に課題図書「炎の牛肉教室!」(講談社現代新書)を読んできてくださる方
・食肉に関心のある方

◆日程
第1回 6月11日(火)19時~21時(目黒)

・食肉の基本
生産~屠畜~枝肉~流通~加工~販売~提供(レストラン、食卓)まで
・実技(豚肉のモモ1本さばき)

第2回 7月9日(火)19時~21時(目黒)
・基本のおさらい
屠畜の今と昔、保存方法のパターン
・実技(豚肉のモモ1本さばき)

第3回 8月20日(火)19時~21時(目黒)
・座学未定
・実技(豚肉のモモ1本さばき)

第4回 9月8日(日)、9日(月)(滋賀県)
・8日
13時~牧場見学(3か所)
*夜懇親会あり(セジール予定)
・9日
9時~屠畜場見学
13時~18時サカエヤ、セジールでの研修
*希望者は9月10日、1日サカエヤ研修に参加いただけます。

第5回 10月15日(火)19時~21時(目黒)
・総まとめ
・座学未定
・実技(豚肉のモモ1本さばき)

第6回 11月12日(火)19時~22時(イルジョット)
・焼きの技術
・会食しながらの説明
・全体まとめ
・終了証授与

◆受講料
120,000円(税込)
*毎回の材料費を含みます。
さばいたお肉は持ち帰っていただきます。

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ということで、「プロフェッショナル」事前勉強終了。新保さん、ますますのご繁盛を!