これ、とてもじゃないけど真面目な社風の柴田書店が出した本とは思えないでしょ?(笑)すっげー怪しい! 実はこの本が売れてます。食のマニア層や料理人に超・超・話題を読んでます。
本書紹介より。
中国に息づく料理を分類したものに、地域にもとづいて8つに分けた「八大菜系」があります。しかし、中国は広大です。食文化は地域ごと、民族ごとに受け継がれてきたものがあるはずで、八大菜系からこぼれ落ちている食文化や、八大菜系に含まれているもののその存在が埋もれている食文化は数え切れません。つまり、日本ではまだなじのみない料理、体系立てて紹介されていない食文化がいくつもあります。
本書ではそのような、いわば「見落とされてきた中国料理」の中から、以下の3つの特徴のいずれかを持つ料理83品を収録しました。
●加熱・生食を問わず、フレッシュハーブを駆使する料理 ⇒「ハーブ中華」
●発酵させた食材や調味料を使う料理 ⇒「発酵中華」
●乾燥させたスパイスや漢方で使う食材を味の決め手として使う料理 ⇒「スパイス中華」
ね、面白そうでしょ!?
しかもこの本に掲載されている料理は、慣れ親しんだ広東料理や上海料理とかではなくて、雲南省、湖南省、貴州省を中心に、広東省、広西チワン族自治区、新疆ウイグル自治区までと、なじみのない地域や文化を含んでいる!
しかも中身のビジュアルも実にソソル!
日本に居るかぎりではみたことも食べたこともないような料理が、ハイコントラストばっきばきな写真で毎ページに紹介されている!
料理を作っている面々がまたスゴい。「蓮香」小山内さん、「中国旬菜 茶馬燕」中村さん、そして荒木町「南三」水岡さんだ。
各料理のレシピは「専門料理」方式で、カラーページではなく巻末近くに集中して掲載。
このレシピ見ると本当にクラクラする。だってパイナップルを発酵させたり、ニラとミントのソースがあったり、想像したこともないような組み合わせのものばかりなのだ。
それだけじゃない。想像したことがないならともかく、まったく聞いたこともない調味料や食材がバンバン登場する。ただ、それをそのままにしておくのではなく、ちゃーんと「こういう食材で、ここで手に入ります」という情報がちゃんとリスト化されている。
例えばね、、、
左ページにあるの、「水豆豉(トウチ)」だってさ!ふつうのトウチは大豆を麹で発酵させたものだけれども、これは乳酸菌で発酵させたものだそうだ。なんじゃそりゃ、食べたことないよ!本書ではその作り方も詳細に書いてあり、料理への使い方ももちろん載っている。
本書の肝はこうした部分だろう。プロ料理人にとっては「こんな調理法があるのか!」と目を見開かされる本であること間違いなし。そして、ちまたの食好きにも絶対に楽しめる、すばらしい奥行きの本になっている。
で、この本を編集したのが、僕とは長い付き合いの柴田書店・Sくんだ。
彼とは長い付き合いで、「専門料理」の連載から「そばうどん」の特集記事まで、さまざまな執筆で一緒している。柴田書店のなかでも独特の感性を持っていて、社内的には「そんな本、出せんのか!?」といわれるような企画を出して、スマッシュヒットさせている。この本はその中でも最大の問題作だろうけど、最高傑作と言ってもいいんじゃないだろうか。
「やまけんさん、そばうどんの打ち上げの意味も込めて、南三にいきましょう!普通予約取れませんよ、、、」
マジ!? ということで行ってきました。
荒木町の小路を入ったところ、なんとなく昭和感溢れる路地です。
このビルに、、、
「南方中華料理 南三」が入っている。
店主の水岡さん、「桃の木」などすばらしい店で働いてきたキャリアを持つ方だ。
「僕の料理は、現地そのままでもない、日本にローカライズしたものでもない、現地の料理を僕が作るとこうなります、という表現だとお考えいただければ」という。
せっかくなので、、、
この本にサインを入れてもらった!
「、、、専門料理でいつもやまけんさんの連載読んでます!」と言っていただいて嬉しい。ありがとう!
うれしいなあ!この本は大切に、ばりばり使います!
Sくんの召集により、顔は出せないが関係の深い面々も集合。
早速に前菜です。
緑竹のマヨネーズ的和え物などはよくみかけるようになったが、特筆すべきは僕が本書を読んで「くってみてえ!」と唸ったパイナップルナンミィで和えた牡蠣の燻製!
ナンミィとはソースのこと。パインをみじん切りにしてエシャロットやレモングラスなどと炒め、豆板醤などと合わせたもの。詳しくは本書を見よ!これがまた、最高に美味しい。ほかにもナマコやエビにかかっているソースが、とにかくはじめての香りと味!それも激ウマで、それ以外の語る言葉がない。
焼き物は、中華腸詰めとネギ入り揚げパリパリ大腸とアヒルの舌。
この、麦の入った腸詰め、一本まるごと食べたいよ!という声が挙がる。最高です。
そんでこの、揚げ大腸。レシピが本書に掲載されてます。これがねえ、タレがしみこんだ大腸を油で表面をパリパリになるように加熱しているんですな。大腸特有のくさみはなく、いわれなければ内臓とわからないんじゃないだろうか。
そして、一番たべたかった料理が出たー!
オオタニワタリと燻製豚肉の破布子炒め!興奮して「これだよね!」と本書を開いてしまう。
オオタニワタリは沖縄でよく食べられる伝統野菜、破布子とはポォブゥズと呼ぶそうで、食感がオリーブに似た、木の実のたまり醤油漬けだそうで、初見だ。
シダの仲間であるオオタニワタリの柔らかくも心地よい食感、ニンニク甘辛みの味付け、そして燻製した豚肉の旨さがからまったところに破布子のルリッという食感と甘い風味がマッチして、とてもよい!
いや最高だね。
魚のすり身揚げに、これまた揚げた台湾バジルの葉!
そしてコレも食べたかった発酵トウガラシソースと白身魚(今日はサワラ)!
ラッキョウの塩水漬けがベースです。マジで美味しい。
そしてこれがまた想像つかなかった、仔羊にニラミントソースを合わせたもの!
付け合わせはドクダミの葉ですよ。これがまた最高に合うのだ。
もちろん本にレシピ載ってます!惜しみないねぇ~!
〆の麺はカルボナーラ?と思ったら、太めの米麺にアヒルの塩卵とからすみを和えたもの!
太めのビーフンがなんだかアルデンテな感じで弾力があり、塩卵と魚卵のどちらも強い風味をがちっと受け止める。秀逸ですな、、、
いやーーーー全部美味しい!
もちろん本は店内にもおいてます。買えるのかな?右側は、羊齧協会の菊地さんが協力してできたという家庭向けの「おいしい羊肉料理」の本。まだ読めてないけどこれもいい本でしょう、彼らが噛んでいるのであれば!
と、〆た後も話しは延々と続き、、、
みかねた水岡さんからつまみが到着(笑)
ポルチーニの春巻き! 激烈旨し!
ハイビスカスの花と紅ショウガの酢の物。これまた香りがすばらしい。
いやそれにしても最高でしたね、水岡さんの料理。
調理場にあやしげに吊り下がっているのが、干し肉、干し内臓肉だ。
「こうしておくと美味しくなるのはもちろんですが、単純に長持ちするので、ロスにならないんですよ」とは、じつになるほどなはなし。
そういえば李錦記などのメーカー品でしかみたこともたべたこともないサーチャージャンも、自家製にしていた。これがまた、この醤だけで酒が飲める旨さ!
堪能しました!
ということで、この本は買って損なし!