やまけんの出張食い倒れ日記

イタリア北部の街「ブラ」で日本人シェフのヒデさんが頑張る店、Osteria La Bocca Buonaでタヤリンの美味しさに開眼する!

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ということで、オステリア・ラ・ボッカ・ブオーナに到着。パリでこの秋からステーキレストランを開店する予定の柳瀬シェフが「ここは日本人のヒデさんという方が料理人で、以前、いちどお会いしたことがある」ということで予約してくれた店だ。日本人料理人のヨーロッパでの活躍はいろいろ日本でも報じられているけれども、このような地方の街でも活躍している人が居るというのを間近でみて、ちょっと嬉しい。

Osteria La Bocca Buona
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この店、ボッカ・ブオーナはオーナー夫妻がサービスの中心となった、地元に根ざした店。伝統的なメニューが中心で、地元のリピート客がほとんど、とてもアットホームな雰囲気だ。まわりは家族連れがほとんどで、常連客ばかりという感じ。あきらかに我々一行は「あれどこから来た人?」という感じで浮いていたけど、それはそれで楽しかった。下の写真は他のお客さんが引けてから撮ったのであまり人が居ないようにみえるだろうけど、食べている間は8割程度の客の入りで、盛況。

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マダムと話していたらヒデさん登場。ご本名は中川英樹さん、歳は僕と同じだから、同じくピエモンテ州でシェフをして帰国し、いまは奈良の「イ・ルンガ」を成功させている堀江純一郎君とも同期ということになる。頑張ってるなぁ~!感動。

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この地域はやはりピエモンテーゼ種の牛の肉が有名で、例えば前菜の定番はなんと生でいただくピエモンテ牛のサルシッチャだそうだ。それ、いただきます。それにちょいちょいと料理を追加して、ピエモンテ牛のタリアータとタヤリンを。

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これが、ピエモンテ牛のタルタルと生のサルシッチャ。サルシッチャはいわゆるイタリアにおける腸詰めで、普通は豚肉を塩と香辛料、フェンネルシードなどで香り付けしたのを腸詰めして、焼いて提供する。でも、この地域では生状態で食べるのが有名だとのこと。

これが、不思議においしくて興味深かった!

タルタルとどう違うんだろう?と思ったが、タルタルは食事タイミングの直前で塩や香辛料と混ぜ込んでいるのでよりフレッシュ感がある。サルシッチャは調味した肉を腸詰めしたものを提供するようなので、やはり風味の濃さが違う感じがある。

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ただし、同席のアンズコフーズ金城さんからは「羊腸を生で食べるって、アリなのかなぁ」という疑問が。うん、たしかに日本では×だろうし、おそらく厳密にはイタリアでも×なんだろうなあ。この辺は郷土の食文化ということであまり問われないのかもしれないが、安易に日本で真似しないようにしましょうね。

ともあれおいしい。

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こちらにきて感じるのは、前菜でタルタルやカルパッチョを食べるのはほぼマストという感じで、セコンド(メイン)料理となるタリアータやビステッカといった、火を通した肉ももちろんご馳走なのだけど、総体的には生と火入れ双方を楽しむというバランスになっているということ。

生肉おいしいんですよ、やっぱり。イタリアやフランスでは生食前提ということもあって、食肉の製造工程がキッチリ管理されている肉が出回ることが大きいけど、それだけではなく「生で食べておいしい肉」がちゃんと生産されている気がする。比較的若齢で、と畜してからの熟成期間も短く、ほぼサシのない赤身肉であること。それを鮮度よいうちに叩いて食べるのは、たとえて言えばマグロの中落ちを叩いて食べるのと同じような味わいだ。いや、大型回遊魚で寝かせて食べるマグロよりももうすこしフレッシュ度の高い、あじのたたきみたいな感じも受ける。

食肉の評価はそれを食べる文化・文脈とセットで論じなければダメ、ということですね。

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ワインを楽しみつつ、おいしいアンティパストをあれこれ。

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我々一行は食べる旅なのではやくも胃が疲れ気味ということもあって、いろんなものを頼んでシェアという日本人的な楽しみ方をしてしまう。ただし、やはりというかなんというか、こちらでは頼んだ一皿を頼んだ人が食べるというのが普通なので、ウェイトレスのお嬢さんにはちょっとヤレヤレ顔をされてしまった。もし行かれる方がいたら、お腹すかして一人一皿をガッチリお食べ下さいませ。

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プリモピアットをどうしようかと思ったのだけれども、やはりこの地の伝統である、ピエモンテ牛のラグーを絡ませたタヤリンを。タヤリンはいわゆるタリオリーニのことをこの辺でそう呼ぶのだけれども、このたびでタヤリンによく出会ううちに、その美味しさ、楽しみをようやく理解することができた気がする。

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日本ではだいたい、プリモの量はちょびっと、50~80g程度が普通だ。日本人の胃袋に合わせているのだろうけれども、それじゃあタヤリンの場合、本当の美味しさがわからないのではないか。

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というのは、タヤリンはその繊細な細さから、ある程度の分量を一気に口中にいれて噛むと、空気が微細に混ざることでクリーミーな混合体となる。その食感と、ラグーソースのうまみ、タヤリン生地の柔らかさとたまごっぽい香りが連続して味わえるのが、タヤリンの醍醐味なのではないか!

これが僕の感じたタヤリン観である!

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いやーそれにしてもヒデさんのタヤリンおいしい!

「あ、そういっていただいて嬉しいです。やっぱりこの地方の定番中の定番ですから、この一皿をお選びになるのがよろしいかとは思いました。じつはこの麺にも工夫をしています。細いこともあって麺を保存するのは難しいのですが、配合をいろいろ調整して、保存性と食感、風味がいいバランスになるように、現地のレシピとは少し変えたんです。でも、美味しいと思うんですよね」

ああ、こういう努力をするところがなんとも日本人的気質!素晴らしいですな。

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ニョッキに、、、

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タコの「KARAAGE」風!

そしてセコンドはピエモンテーゼのタリアータだ。低温調理を駆使して火入れしているそうで、繁盛店でいかに提供しやすくするかに腐心されているのがわかる。

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みてわかる人は分かると思うけど、かなり若齢牛っぽくて、熟成もほとんどしていないようなアッサリした肉。ただ、これはこれでおいしい。デリケートという感じではない肉だけれども、さきのタルタルやサルシッチャと同じで、肉と言うより魚を食べているようなフレッシュな感覚だ。

やはり、濃厚な風味で脂も濃い黒毛和牛の肉をドーンと食べて満足感を得るという感じとはまったく違う。そして、その違いはとてもポジティブであって、イタリアスタイルも素晴らしいのである。

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ドルチェには桃まるごとのコンポート。僕の大好きなババがメニューにあったのだけれども、もう終わってしまったと言うことで残念。でも、アンティパストからドルチェまで、一切手抜きなし。

ヒデさん、素晴らしい腕です。

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お見送りいただき感謝。店のマダムやムッシュからも信頼されているのがよくわかりました。そりゃそうだよな、実質的に一人であれだけの料理をこなしてるんだもん。スーパーマンだわ。

京都の宇治出身の中川ヒデさん。いずれ彼の料理を日本で味わうことができたら、楽しいね!ごちそうさまでした!!!

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