今回のハイライトのひとつが、ダリオの店が仕入れるキアニーナ牛の飼養現場をみられるということだ。ヨーロッパの肉牛は、フランス、スペイン、ドイツの状況は視察しているが、イタリアではまだゆっくり牛の飼養風景をみられていないので、かなりかな~り期待していた。
しかし!ちょっと「大丈夫かな、、、」と思うこともあった。というのは、昨晩のダリオの店で「これってキアニーナ牛なの?」と尋ねたところ、店の女の子が「あのね、キアニーナ牛は滅多に使ってないわよ。今日のはピレネー牛ね」というのだ。
んん~そうか。ダリオの店はキアニーナは積極的に出していないという話しはきいていたけれども、やっぱりそうなのか、だとすると、キアニーナの生産現場って本当にみられるの?と思ったのだが、その心配は杞憂だった。純血のキアニーナが居ました。
キアニーナ牛は実に起源の古い牛で、『博物誌』を書いた大プリニウスは、キアニーナ牛は現在の牛の祖先であるオーロックスという動物の直接の子孫で、その姿が前史時代の岩窟壁画にも描かれていると書いているそうだ(観たけどカラーじゃないからわからないけどね!)。すくなくともエトルリア人やローマ人の時代には家畜として飼われていたらしい。
それどころか、現在の牛の直接の祖であるオーロックスという動物がいたのだが、そのオーロックスの直接的な子孫であるともいわれている。牛という品種が枝分かれする前の、超原初的な品種といっていいのだろう。
朝十時に、ダリオのお店に集合。
店内には早くも、ディスプレイされるであろうロースが鎮座。
ダリオも顔を見せてくれたが、牧場へはスタッフが連れて行ってくれるという。
4駆の後部に4人で向かい合わせに座り、悪路をダダダダッと降りていきます。
昨日、ワイン好きのみんなが「わーーーっ ブドウだ!」と声を挙げたワイン用のブドウ畑をダダ降りる!
そのどんづきに、ありました白い牛のいる牛舎が!
画面左に牛舎、中央に前庭、そして前庭からは放牧場に自由に出られるようになっている。完全にヨーロッパ型のアニマルウェルフェアに準拠した、日本ではなかなかできない牧場の造りである。
いやー こんにちわ!
白いっ!
噂には聴いていたけれども、ほんとうに美しい、気品のある牛だ。フランスのシャロレー牛も白くて可愛い品種だけれども、キアニーナはまったく違う美しさがある。まず、体型がシャロレーと全然違うのだ。
ご覧いただいて「ん?」と思われるだろうが、首がちょっと長い。
ほらね。首が長い理由はおそらく簡単なことで、体高がまた高いのだ!
僕の所有する短角牛の母牛よりも20センチほど体高があるような感じ。とにかく足が長い!
そして、母子で一緒に居るからだろう、濃厚飼料を食べていない体型である。でも、これは「繁殖経営」ではなく、「繁殖しながらゆっくり肥育している」状態なのだそうだ。
エサに与える乾草は、とくに栄養価の高そうなものではない。NZの牛肉のプロであるアンズコフーズの金城社長も「この牧草はとくに栄養ないよ!」と漏らしていた。
この生産者のところでは、キアニーナは5~6産した経産牛がよいとされている。サシは必要ないので、繁殖をしてくれている間は粗飼料中心の薄い餌を中心に与えている。肥育段階は圧ぺんトウモロコシや挽き割ったソラマメなどの濃厚飼料も与えるが、急激に肥らせることはしない。
そんな育て方なので、ダリオの店にこの生産者から入ってくるキアニーナ牛は年間に二頭(!)くらいなのだそうだ。他にも契約生産者はいるそうだが、それでもキアニーナだけで需要を満たすことはできない。つまりはそういうことなのだ。
「じゃあ、キアニーナが食べられる日は、遠くからそれをめがけて食べに来る人が居るの?」と金城さんが聴いても、「いや~?そんなことないよ、いつもどおり」と。ええっ 日本だったらスゴイ事になりそうなのに!この辺が、ヨーロピアン的な発想なのかもしれない。つまり、あまり品種に重きを置いてないってこと。
日本は純血種にこだわったりするが、日本以外ではそれほど純血種であることにこだわらない地域が多いのだよね。「キアニーナ牛も他の品種も、値段はほとんど同じだよ」というから面白い。ダリオの店では、伝統品種であっても、それが稀少であっても、価値のつけかたはそれ以外の要素なのだね。もっとつっこんで聴いてみたかった。
記念写真を撮った後は、ダリオの店の食肉加工場へ。
レストランのあった店はあくまでレストランと小売スペースで、食肉の仕入と加工はここでやっている。
奥ではなんと骨の髄を取り出している!
なんとこの骨髄、ハンバーガーに混ぜるのだそうだ!!!!ランチではハンバーガーが出るのだが、これも食べたかった!
牛一頭すべてを仕入て、全ての部位を客に食べさせることに注力するダリオの店。スタッフ達もじつに肉に対する造詣に深く、肉に対する愛情があふれていた。
お店にもどって、ダリオさんに挨拶。
ダリオ一家と記念写真を撮らせていただきました。
いや、実にいい刺激になりましたね。キアニーナの生産風景を観られて佳かった。
ただ、ひっかかっていたのは、まだこのたびでキアニーナ牛の肉を食べていないと言うこと、、、そこで、電車移動の前に、わりと観光客向けかな?と思う店だが、キアニーナがあるということで入り、ビステッカを焼いてもらった。
日本人客も多いのだろう、パンフあり。
キアニーナのタルタル。うん、赤身の味わいはアッサリ、香りがあってなかなか美味しい。
ブッラータと生ハム。美味しいわ!!!
キアニーナは右側。これで1.2kgだそうだ。焼いてもらいます。
20分後にでてきたのがビステッカ・アラ・フィオレンティーナ!
あのですね、とても美味しいです。
サシは一切ないけれども、思った以上に味わいがあります。しかも食感が絶妙。ゆっくり育った経産牛の、でもまったく筋張っていないサクサクした赤身の心地よい食感。そして、清々しい香りが鼻に抜けます。穀物たべた牛特有の感じがないので、いつまでも食べていられる感じ。
美味しい、、、キアニーナはやっぱり美味しい牛だ。それが確認出来て本当によかった。ということで、一路アルバへ向かいます。