ほんの一瞬しか食べられないたべものというのが色々あるけれども、その中でも生の新ワカメを食べられるのはいまだけだ。食べたが最後、次はいつ食べられるのか!?ともう待ちきれなくなる。いつも食べている塩蔵や乾燥をもどしたものと、こんなにも違うのか!と驚いてしまうのだ。
これは、ある番組用に横須賀の臼井船頭にお願いして送ってもらったもの。横須賀港だから江戸前だ。根本のメカブから先っぽの柔らかい葉の部分まで一本まるごとが入って送られてきた。
これがメカブの部分。ここに胞子がいっぱい溜まっているらしい。切り離して茹でてフードプロセッサーで細かくすれば、いつもスーパーで買っているあの味付けメカブのようになる。
識らない人も多いと思うけど、食卓にあがるワカメの9割超が養殖です。えっ海底に生えてるんじゃないの?と思うかも知れないけど、胞子を採種して長い長いロープに植えつけて、水質のよいところで養殖するのですね。
船頭曰く。
「ワカメの食感は海の状態で決まるんだよ。流れが弱いと柔らかくなるし、流れの強いところだとシャッキリした食感になる。横須賀の海は流れの強弱がハッキリしているから、ワカメもシャキットした食感になるんだよね。」
養殖ワカメはそのほとんどが塩蔵または乾燥されて一年中、出回ることとなる。でも漁師はこの一番やわらかいほんの一瞬の時期だけを逃さず、新ワカメを食べる。だいたい関東では3月中旬に入ってしまうともう生では食べられないそうだ。
しゃぶしゃぶしてポン酢が、一番かんたんでうまい。
しっとり、シャキッ そしてとろり。すがすがしい爽やかな香り、磯臭さは感じない。とても洗練された味わいである。もし漁師に友達がいたらお願いした方がいい。最高にうまいから!