広尾の和食店「山藤」を愛していた人、けっこう多かったことだろう。もとは大地を守る会の直営店だったこともあり、有機農産物や短角和牛を中心とした店として誕生。巨大な炭火台で焼き上げたカブやニンジンを切って出しただけ、というような呈にもかかわらず、その野菜のあまりの美味しさにリピーターが続出。
また、板前の梅さんが、大地を守る会で契約していた短角牛の産地である岩手県久慈市山形町に数年、派遣されていたこともあって、山形町の食材や料理がてんこ盛り。とくに、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で有名になった「まめぶ」を東京で出したのはここが初めてだったはずだ。
その後、大地を守る会から服部調理師専門学校へ運営が移管。梅さんをよく識る僕ら友人は「大丈夫か!?」と危惧していたけど、そんな心配は皆無。服部グループはさすが調理師を生み出す組織、運営にあまり口出しをせず、もっと食材の自由度を上げることで、店はグングンとよくなっていった。
その山藤が、ビルの建て替えもあって移転。でもご安心を、大通りを挟んでちょうど向かい側、お好み焼きの「千房」が入るビルの二階だから、相変わらず地下鉄の広尾駅から1分の場所である。
店内は、以前の店よりやや狭くなってカウンターがなくなったのだが、その分、隠れ家的に使える個室が誕生!
相変わらず、テーブルに使われている材は久慈市山形町の材木である。
この材木を調達し、冒頭の写真のにゅうめんにのったマツタケを採取しているのは、この店の店長である新井谷ユウキのお父さんである。
おめでとうユウキ!
調理場にお邪魔すると、懐かしい面々!
ご覧の通りすこし炭火台が小さくなったので、肉焼きに集中して、この店の代名詞でもあった野菜焼きはしばらく封印するらしい。きっと常連は「なんであれやらないの!?」と文句ブーブーだろうが、そこは別のラインナップでぜひぐうの音も出ないようにかまして欲しいと思う。
もちろん、使われる野菜は東京有機クラブのみなさんが出荷する最高のやさいばかりだ!
いずれはこの野菜焼きが戻ってくることを祈ろう!
それはともかく、新生山藤の料理は素晴らしい!
冬瓜とモロヘイヤ、豆乳の前菜。これを観て分かるとおり、これからは「焼きっぱなし」「煮っぱなし」のように意図的に「ケ」の料理をしてきた梅さんが、手をかけた「ハレ」の料理側に再度チャレンジしようとしている。
「おれも62になるけどね、最後、そっちの方向に挑戦してみてもいいかなと思ってるんだ」
とのこと。歓迎するよ!今度はビブグルマンじゃなくて1つ星を狙ってしまえ!
山形町の短角牛。しっとりした火入れ、落ち着いた味。
成清海苔店の優等海苔を贅沢に巻いたごはん。
お米はあの「龍の瞳」。最高に美味しい組み合わせだ。
そしてマツタケにゅうめん。
マツタケを採ってきてくれたのは新井谷のおいちゃんだ。会いたい。
そして四万十からお祝いに贈られてきたウナギ。蒸さずに炭火でバチッと焼き上げてある。龍の瞳で食べるうな丼はすごい説得力だ。
青ウリ、キュウリの糠漬けがまた素晴らしい。
ということで、びっくりするような料理ではなく、素材を吟味した素直に美味しい和食を食べたいひとに「山藤」をお薦めしたい。
■山藤 新規オープンのご案内
http://yamafuji.net/