いやーありがたいですね! amazonの「専門料理」というカテゴリーでのはなしではありますが、「熟成肉バイブル」がベストセラー一位となりました。まだ出版されてないので、予約段階でということになります。ありがたやーありがたやー!
あれ、いま気づいたけど、売上ランキングが173位って、これ全カテゴリでのはなしだろうか!? けっこうすごい!? 手元に届いたときの期待値が上がりすぎてちょっと怖いですが、、、(笑)
完全理解 熟成肉バイブル (柴田書店MOOK) | |
山本 謙治 |
さて、出版を記念して、この中で登場する熟成業者さんの紹介を、本誌面ではでてこない写真とエピソードで紹介していきましょう。
まずは熟成業者さん紹介ページにトップで出てくる小川畜産興業。おそらく、この会社の名前を識っている人は肉業界または小売業界にいる人達だけでしょう。というのも、お肉の卸売業者さんは、百貨店の店頭やスーパー店頭に自分の売場を持っていないかぎり、名前がおもてに出てこない業態だから。
けれども小川畜産グループはデカい! 関東とくに首都圏ではスーパー、飲食チェーンむけに強い力を持つ食肉業者さんグループであります。
小川畜産グループは芝浦の食肉市場内にも事務所を構えているけれども、そのシンボル的な拠点が品川区の二葉町にある。じつはこの店舗はついさきごろ、リニューアルしてしまったのだが、午前中にこんなに行列する昔ながらのお肉屋さんがあったのである。
地域の人たちに親しまれてきたこの小川畜産の肉屋、売りはもちろん揚げたてのコロッケだ!
「やまけんさん、うちのコロッケ、ファンが多いんですよ!」と小川大介さんが渡してくれる。
いや最高だね!ラードで揚がった、ジャガイモが甘くて肉のエキスがしっかり香る、ソースかけなくて美味しいコロッケです。
しかしこの店舗の奥に、関東でも最大規模のドライエイジング熟成庫があるということを識る人は少ないだろう。
その広さは、とてもじゃないが一枚の写真では表現できない。スチールラックが迷路のように入り組んでいるからである。ドローン飛ばして天井から撮ればよかったかもしれない(笑)
ごらんのとおり部位はさまざま。
使う牛の種類も様々であるが、その辺は本文をご覧いただきたい。
ただ、この小川畜産興業のDABで特筆すべきは牛タン!
これがムチャクチャ素晴らしいのですよ、、、また、これだけの規模感でやっているところも他に見当たらない。
ドライエイジングに関して言うと、規模は品質につながる。というのも、冷蔵庫内の熟成環境は、肉が少ないとなかなか安定しないのだ。その点、この物量はちょっとやそっとの変なものを持ち込んだとしても、熟成庫内の環境がよい方向に持って行ってくれるくらいの物量があり、高位安定しているのだ。
本書内では、この肉にびっしりと着いているカビの品種についても言及されている。おそらく出版される本としては初めてといえる迫り方をしているので(とはいっても限界はあるんですけど)、ほどほどに期待して欲しい。
なお、本書内ではスペースがとれず掲載できなかったが、小川畜産の熟練の職人さんの骨抜きおよびトリミングの技術が素晴らしかった!
骨抜きのスピードと正確さ、そして無駄を出さない技術はさすがの一言。
そして、ドライエイジドビーフの商品化においてもっとも重要な工程がトリミングである。トリミングとは表面のガビガビ部分や脂を削いで、商品として並べられるように成形することだが、この時に微生物が付着した表面部分に刃をあてることになる。その刃に微生物が付着し、内部の綺麗な肉を切るごとに微生物汚染が起きる可能性がある。
だから、ドライエイジドビーフのトリミングは、神経質なまでに包丁やまな板をアルコール消毒し、外側を切った後はかならずまたアルコールで拭き、微生物の付着を抑える。外部を除いた後はまな板を清潔なものに変えてカット成形をする。その手順が実に見事なのである。こういう職人芸も、日々定期的にDABが売れていかなければできないことだ。販売力イコール技術力なのである。
じつはこの日、すごいものが庫内から出てきた。なんと、実験的に置いておいたという1年もののドライエイジドビーフだ。ほんとうにこの取材時点(7月)でちょうど1年!カマンベールチーズのように真っ白である。
「これ、ちょうどいいから食べてみましょう」と言っていただいたのだが、さすがに外側は水分が失われて堅いので、カットも大変!眉間にしわが寄ってます!
もはやサラミ!
内部はまだ柔らかい部分があるが、外側はまるで鰹節。
これでダシが取れるんじゃないか!?
まだ水分が残っている部分はこんなふうにカット。
これを焼いてくれるのは、ドライエイジング事業を立ち上げた高木さん。
高木さんとはいっしょにNYを廻った仲である。人格者! その高木さんから現場しごとをいま引き継いだのが石田さん。
職人さん達の輪がしっかり継承されています。
さて、高木さんが焼いてくれた、この日はホルスタインのDAB。こちらは通常バージョン。
小川畜産グループで「千刻牛」と名付けられたこのDAB、実に王道の美味しさ!安定しまくりのハードタイプのドライエイジドビーフです。旨い!
そして、、、
さきほどの1年熟成肉!
「生ハムの焼いたのだ!」
「すさまじいうま味、、、」
「香りがスゴい!」
熟成した本人達もびっくりの味と香り。「肉節」ですね、これ。いろいろあって商品にはできないと思うけれども(でも欲しい!って人はお願いしてみて下さい)、すさまじい体験になりました。1年熟成、かなりスゴいです。
ということで、小川畜産興業のドライエイジング技法、しっかり載ってます。ぜひ手にとってご覧下さい!
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