世の中にはいろんなうま味系調味料がある。天然系はもちろんだが、MSG(いわゆる化学調味料・うまみ調味料)、たんぱく加水分解物、酵母エキスなど様々。そして、それらの中でもいろんな製品が作られている。
僕のブログの長い読者さんで、しかもなんと有名な(僕も大好き)カレーのチェーン運営もされている谷本さんのいる明王物産にお邪魔して、そうしたうま味系調味料をテイスティングさせていただいた。
いや、ビックリしましたねぇ、ほんとうに。
たんぱく加水分解物は、大豆やトウモロコシ、肉などのタンパク質の多い物質を塩酸などで加水分解し、それを中和して食品としたもの。強いうま味物質となるが、独特の匂いが強くするものもある。
また初期の頃は、その製造工程で発がん性物質が生成されることがある、として問題視されたが、すでにその課題はクリアされていて、いま製造されているものはその恐れはないとされている。
またうま味と言ってもさまざまな物質があるなか、例えばイノシン酸系のうま味が強く出るもの、グアニル酸の旨さが出るもの、甘みが強いグリシン、アラニンといったアミノ酸類が多いものなど、「うそっ!この味、まるでハマグリ?」と驚くような製品があった。
それは酵母エキスも同じ。酵母を培養して分解し、うま味物質を得るものだが、これもパン酵母エキスからビール酵母、または海水から得た酵母など、様々な酵母を分解することで、うま味や香りが変わる。
そういえば、あたかも天然のだしの味という売り方で人気を呼んでいる、久原本家の茅乃舎という福岡のメーカーがある。「無添加」を謳っていてよさそう、とても美味しいわよと色んな人が言っているけれども、本気ですか。ぼくはあそこの製品からは酵母エキス特有の匂いとうま味しか感じません。ちなみに酵母エキスは「食品」なので「無添加」と書いてもかまいません。だから茅乃舎はとくに嘘を言っているわけではないけど、喧伝されているような「素材の味」なんてほとんどしないように思いますね。
僕は、自分の家で食べるものに関しては天然系のうま味を使うことにしているし、可能であれば外でもそうしたいが、MSGを使っていたりたんぱく加水分解物、酵母エキスを使用した商品を口にするし、排斥する気もない。ただね、そうしたものを使っていませんョという顔をしている、スカした食品は嫌いですね。
先日、明王物産のお力を借りて、日大の学生に複数のうま味系調味料を溶かしたものをテイスティングさせてみた。その反応はさまざまで面白かった。
「あー、この味、識ってる!」
「うえ~っ、この匂い、イヤだ」
「美味しい!なんかすごくうま味が残る」
中には、うま味が舌に残る持続時間をわりと正確に認識できる子がいたりして、面白かった。そういう子が調味料メーカーにいくと面白いことになるかも知れない。
さて明王物産という会社は、そうした人工の調味料を商う会社というわけではない。もともとは畜肉のエキス類を製造・販売するところから出発したメーカーで、その流れからスープやタレ等の食品の製造を委託されることが多くなっているそうだ。
話をきいて驚くことばかりだった。僕が子供の頃によく食べていた袋ラーメン「中華●味」のタレを造っていたとか、あそこの外食チェーンの●●はうちです、とか。
天然系の極と言えば、このオマールエビエキス。エビ単体を食べるよりもエビ感が強い!
こちらはマッシュルームのペースト。お湯で伸ばしてすこし味をつけるだけでマッシュルームのポタージュとして店で出せるクオリティ。ご存じだろうがマッシュルームはうま味それもグルタミン酸がもっとも強いキノコだ。グアニル酸ではなくグルタミン酸ね。
明応物産の東池袋の社屋にはラボがあって、製品化のための試作をできるようになっている。
各種の調味料が並び、オーダーに応じて味を作っていく。ああ、楽しそうな仕事だ、、、とばかりも言ってられないのだろうけどね!
レトルト釜まであって、カレー製品などはお手の物だそうだ。
そう、じつは後日書くけど、とある有名、というか伝説的カレーのチェーン展開はこの明王物産が行っている。そこのレトルトはとても出来がいいのだが、なるほど、ここがやっているからかと驚いたものだ。
「じゃあ、食事にでもいきましょう」
と谷本さんが連れて行ってくれたのがここ。
東池袋かいわいではとても有名で、夜は予約を取らないとはいれないというオステリア・ピノ・ジョーバネ。
パスタコースをお願いしたのだけれども、、、
このズッパからして、とてつもなく美味しい! すべて自分の店で仕込んでいる味だ。
ラグーも実に軽やかながらしっかりした味わい。
アサリとキノコのオイルベースパスタは、見た目のシンプルさからはわからないほど凝縮された美味しさ。
ちょっと感動しちゃったのはドルチェの美味しさ。変哲もないパンナコッタがとても美味しい。
ああ、この店は夜にまた来たい。
「ぜひまたおいで下さい。それと、お連れしたい牛タンの店があるんですよ。」
と谷本さん。
信用できる舌の人です。
今回は本当に貴重な体験をさせていただきました。どうもありがとうございました!