ここ数年、博多のキャナルシティ内にできたホールスクエア福岡という物販&レストラン店舗でイベントをしている。何回もやっていると常連さんが来ていただけるようになって、遠い福岡でも親しい顔がみられるのはとても嬉しい!
その常連さんの中に、森さんという、とてつもなく面白い男性が居る。自分も飲食をやっていて、フレンチ上がりの素晴らしい女性シェフが独自の熟成肉をやっているので、そのうち食べに来てくださいといいながら、カパカパとよいワインを開けていく。うーんこれいいワインだ、この店こんな値段でだしちゃってバーゲンだなとつぶやきながら周りの人(知らない人、だと思う)にもついで飲ませて、むちゃくちゃフレンドリーな人。
その森さんが経営する店にいずれ行ってみなければならないなあと思っていたのが、先日ようやく実現した。ホールスクエアでの宮崎美味しいもんフェアの後(大成功!)、眞貝シェフを連れて22時を越えた時間にお邪魔した。タクシーでキャナルシティからほんのすぐ、いやー、もう店を締める時間だろうし、申し訳なかったなぁと思っていたら、店内はまだまだ大盛況!
その店の名は「酒飲めフレンチ bisとろタカギ」という。つっこみどころの多い店名だが(笑)この店が実に怪物級にスゴかった!
店はオープンキッチンでぐるりと料理人を取り囲むようなカウンター形式。他のお客さんがお帰りになった後に撮影。
んで、この、すでに熱い感じが伝わってくるでしょうお方が森さん。ねえ、いつのまに髭生やしてるんです?おひげない方が爽やかですよ!
そしてこちらが、森さんがその腕に惚れ込み、この店を出させたという高木シェフ。
高木シェフ、なんと現地フランスの星付きレストランで修業をされていた経歴を持つ。日本に帰っていくつかの店で勤めるも、あまりいいオーナーに巡り会えていなかったところ、森さんとの出会いの中でこの店を出すことになったとのこと。
「この人ね、腕は本当にすごいんですよ。じゃあ、お店やりなよって。この人の退路を断つために、店に自分の名前を冠させました。」
と森さん。それほど入れ込む高木さんの腕、興味津々である!
「やまけんさん、これがうちの熟成肉です。」
と高木さんが、ランプの塊を冷蔵庫から出してきた。
オージービーフのとあるブランドの、100%グラスフェッドの肉を120日間熟成したものだという。
しかもこのビーフが真空パックでのウェットエイジングをしたうえで、真空パックを取り除いてさらに含気熟成させるという、スタイルだという。これ、じつは日本ではよく試される方式だ。そして、ダメにしてしまうケースが一番多いやりかたでもある。
輸入肉は通常、船便で3~4週間かけて輸送される。20日以上の期間なので、肉の熟成は真空パック内で進んでしまう。真空パック内は嫌気性になるため、好気性下で発生する変化が肉に発生しないことで、ドライエイジドビーフ特有のナッツのような香りは生じない。またドリップが真空パックによって外に出てしまい、肉にもむれたような匂いが付いてしまうこともある。
けれども、和牛や国産牛はいま価格が高いため、ドライエイジドビーフにチャレンジしたいと思う料理人や業者さんの多くは、輸入肉の真空パックをはずして、肉を冷蔵庫に入れて熟成するということをやってきた。もちろん、肉の手当がうまくいかず失敗する事例が多かった。「うちもやっているんですよ、熟成肉」 とウインクせんばかりの顔で僕を手招きして冷蔵庫を開けたとたん、酸っぱい腐敗臭が僕の鼻を攻撃したことが何回あったろうか。
しかしこの店では、アベレージで120日もの熟成をするという!
「ずーっと試行錯誤を繰りかえしてそこにいきつきました。輸入元にはしっかり依頼をして、科学的根拠のある賞味期限を設定してもらい、その期限内ぎりぎりまでは真空で熟成をかけます。うちの場合は目的を『元来、脂の旨さがない赤身肉をどれだけ柔らかく旨みたっぷりにするか』という点においたんですね。オージーのグラスフェッドのランプだと、たんに焼いただけじゃバサバサで、うまみも少ないんです。真空で引っ張ることで、柔らかさが生まれます。つぎに真空パックをといて、専用の冷蔵庫内でいい状態になるまで状態をみながら含気熟成させていきます。」(森さん)
「はい、切り出すとこんな感じです」と高木さんがカットした断面を見せてくれる。
ああ、いい感じに水分が抜けている。
ドライエイジドビーフ「もどき」の多くは、腐敗しやすい水分が肉の中に滞留してることで問題が起こることが多いがしっかりハム様に水分を抜くことで、腐敗を逃れていることがわかる。
「じゃあ、お肉を焼いていきますね」
というところから30分はかかると思ったので、いろいろオーダーさせていただきました。
砂肝のコンフィとパクチーのサラダ! これ、俯瞰で撮るとそのパクチー量がわからないけど、、、
パクチー激盛りです!
「あのね、ぜったいに書いて欲しいんですけど、パクチーブームになるずっとまえからうちではこれですから!」
と森さんが叫ぶ。いや、美味しいパクチーです。この香菜も県内の素晴らしい農家さんのものを指名買いしているという。
キッチンは高火力IHでの調理。その辺もやはりフレンチですね!
高木シェフが丁寧にココットで火入れしているのは、、、
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんと美麗な野菜のココット焼き!
あのですね、高木さんの料理は本当に素晴らしいです。ワイン居酒屋風な(なんつったって店名が「酒呑め」ですからね)メニューだけれども、どの料理を頼んでもフレンチのエスプリを感じる仕上げ。ひと味効いていて、一緒に居る眞貝シェフも「旨いですよ!」と漏らしている。
「メルゲーズ(羊や牛のソーセージ)は、高木がオリジナルにスパイスを調合して作ってますから、旨いですよ!日本で売られているメルゲーズが美味しいと思えなくて、試行錯誤の上でたどり着いた味です」
おお、フランス人が大好きなモロッカンスパイスの効いたメルゲーズ!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
こいつぁ 旨い! ビシッバシッと味と香りの決まったメルゲーズである! とろーりたまごの黄身とからめて食べるとワイン、、、いやビールが進んでしまいますね。
その間、肉はグリル上で焼かれています。
森さんがいろいろ後ろで解説しています(笑)
肉にはキッチリ芯温計が刺さっている!
はい、焼き上がりました!
やっぱり仕立てはフレンチスタイルのスティックアンドフリッツ!
美味しいです。いや、ちょっとビックリしました。その熟成のやり方をきいていて、うーんそれだとあまりうまくいかないんじゃないかなと思っていたのだけれども、いろんな要素が旨くバランスして美味しい熟成肉になっている。いわゆるドライエイジドではなく、日本型の枯らし熟成ともちがう。グラスフェッドのモモは、森さんが言うように、たくさん食べようとすると飽きてしまう単調な味になりがちだが、長期熟成によってプリントした柔らかさとうまみが生まれ、そしてほどよい水分の残り具合でジューシーさが保たれている。
「あ、うちの旨い食べ方教えましょうか! 特製のワカモレを載っけて食べるんですけどね!」
といって、鉢に多めにはいったワカモレがでてくる。
「日本で売ってるアボカドと色が違うでしょ?これ、メキシコから大粒のうまいアボカドを冷凍で送ってもらってるんです。これにバシッとスパイスとコリアンダーきかせたのを、肉にドンと乗せて食べるのが、メキシコの食べ方なんですよ!」
なんでメキシコ!?と思いながらやってみる。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
こいつぁ 旨い! いままで食べたことないステーキの食い方!
「いやじつは僕、メキシコに長いこと住んでたんです。向こうのメシが美味しくてねぇ、ステーキはワカモレで食べるのが最高だったんですよ。日本で紹介されているワカモレってちょっと味もパンチも弱い。本場の味を知って欲しくて、ここで出してます!」
いや、森さんの思いの詰まったワカモレ、ステーキとの相性がグンバツですよ!
いやービックリビックリ。しかし実はまだこの店の驚きは続くのだ。