やまけんの出張食い倒れ日記

全農の理事に、元イトーヨーカドー社長の戸井さんが就任することになった。小売のトップだった人が農協グループに入るのはとてもよいことだと思う。

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全農の理事に、元イトーヨーカドー社長の戸井さんが就任することになった。戸井さんはつい1月までイトーヨーカドーの社長を務めていたが、急に辞任して業界を驚かせた。一部報道では鈴木(元)会長との不和などが取りざたされたが、とにかく業界内では温厚な人柄に信頼を寄せる人が多かった。

僕は前の会社で、いまやイトーヨーカドーの有名PBとなった「顔が見える食品。」の立ち上げに関わらせてもらった。今思えば素晴らしい経験をさせてもらったと思う。人様の会社のことだから内部のことについてはいえないけれども、一言で表せば

「イトーヨーカドーってジェントルな企業だ」

と思ったものだ。競争の激しい小売業界のトップ企業だから、価格には厳しい(もちろん!)部分もあったけれども、産地に対しててのひら返しをしたり不条理な処理(あまり多くは語りません)をしたりというのはほぼなかったと思う。産地にいくと競合他社の悪い噂はよく耳にしたけれども。

戸井さんと食事にという機会では、前の会社の社長から「やまけんいい店セッティングしてよ」と頼まれて、食い倒れ日記総力を挙げてセレクトしてお連れしたが、どの店もかなり気に入ってもらえたと思っている(笑)ちなみに築地「うまいもんや」、六本木「御膳房」、最近では「カルネヤサノマンズ」がお気に入りだった。

さて 戸井さんが全農の理事に就任した。

過去、このように小売業から他業種、もっといえば川上側の組織に行くという話は、意外とあるものだった。その大物といえばダイエーの青果グループのチーフバイヤーだった木村さんのことを思い出す。ダイエー不振の中、お辞めになった後になんと九州の青果市場に入り、つい最近まで辣腕を振るっていた。「買い叩くようなバイヤーが青果市場の仕事について大丈夫?」なんて思ったけど、実に素晴らしい施策を打ち出し、あたかも「元から市場人」といわんばかりのはまりようだった。いまは「もうおれ、農家になる」といって郷里に戻り、米を作っている。昨年、「初めての米ができたから」と送ってきてくれたが、実に素直な味わいのお米だった。

戸井さんは市場よりもっと川上の、農協組織である。しかも単位農協ではなく、その全国組織だ。農協グループは昨年来、政府から厳しく改革を迫られている。しかし規制改革推進会議など、食や農の専門家がほとんどいない組織が作る答申で、国民の食に関わる政策が決まってってしまうという理不尽な流れがある。

戸井さんが選ばれたのは、農協自身ができない「外から視点」の改革を内部に生み出して欲しいということだろう。そして戸井さんならそれができると思いたい。

戸井さん、頑張って!落ち着いたらまた食事に行きましょう。食い倒れ日記総力を挙げていい店探しておきますからね。