というわけで、京都芽生会(めばえかい)から依頼を受け、日本料理人が牛肉をどうやって理解すればいいのかというお話しをしに京都へ。
和食の世界では牛肉はそれほどメジャーな食材ではない。しかし、外国人客が増えている昨今、また肉ブームであるここ数年、和食店であってもそれを無視するわけにも行かない状況になってきているようだ。やはり客のほうから「牛肉でなにかしてほしい」という依頼も多くなっているとのこと。
そんなこともあって、瓢亭の高橋義弘君の方から「お願いできません?」と打診をいただき、もちろん喜んでといってきました。本来、関東より牛肉文化の深い関西にそんな話をするのもなんなのだけれども。
でも、いろいろ聞いていると、やっぱり日本料理の世界での牛肉の扱いにはうーんとゥ唸ってしまうことが多い。気の利いた店で食べると、有名ブランドの和牛モモ肉をさっと炊いたりしたのが出てくることもあるのだけれども、「赤身が美味しいんです」といいつつもぜんぜん赤身ではなくサシがガッツリ入っていたりする。または、味わいがひどく薄くて、食べ応えがまったくない肉を「あっさり食べられるでしょ」と推してきたり。いやいや、もののいいようで丸めて欲しくないなぁと思うことが多いのだ。
しかも仕入について訊いてみると「出入りの肉屋さんに『いいの持ってきて』と頼んでます」くらいの、非常に不明瞭なオーダーしかしていなかったりする。そりゃ、そんなあいまいな頼み方じゃあ、肉屋さんだって美味しいかどうかはともかく「最上級」をうたうことのできるA5の肉を持っていくとかしかないわけですよ。ここにギャップがありますね。
ちなみに、「会場に入る前に昼ご飯食べてってください」とご馳走いただいた瓢亭の義弘君は、牛肉使いがとてもとても上手。
お客さんからのオーダーも多いことから肉の勉強を積み重ね、いっしょに土佐あかうしの産地を訪れたり、赤肉サミットにも出ていただいたりしてきたわけだが、もう肉料理の店だしてもいいじゃんと思うくらいの技術と創意を持っている。土佐あかうしのローストビーフ、素晴らしい火入れでしかも和食として成立しています。美味しかった!
「ぜひ、芽生会のみんなにも牛肉のことを識って欲しいと思って」 ということで、わたしなんぞがのこのこ出て参りました。
会場は瓢亭から歩いてすぐの美濃吉 竹茂楼。2時間びっちり牛肉の美味しさがどう決まるのか、牛肉の熟成とは何か、世界の熟成方式はどう整理できるのかなどをお話し。
そしてそこから、6種類の牛肉の食べ比べ。
5年にわたり実施してきた赤肉サミットのノウハウを活かして集荷、食べ比べたのは下記6種だ。
短角和種(岩手県)
褐毛和種・高知系 土佐あかうし(高知県)
黒毛和種・経産牛 都萬牛 (宮崎県)
輸入・グラスフェッド ニュージーランド産アンガス
輸入・グラスフェッド・短期熟成 オーストラリア産アンガス
褐毛和種・熊本系・経産・ドライエージング くまもとあか牛(熊本・阿蘇)
なかなかコアな食べ比べでしょ?
いろんな反応がありましたねぇ。今回は和食料理人が中心ということもあってか、わりと評価はハッキリした傾向がありましたね。
食べ比べ後は美濃吉さんのお料理で懇親会。
ふなの子和えを酢味噌でいただく、とても美味しかった!季節のお椀も風味抜群。
そして、懇親会でも芽生会メンバーが工夫を凝らして、食べ比べした肉を使ったメニューを披露してくれた。
熊本は丸菱による、くまもとあか牛経産牛のドライエージングをお題にしたところ、「熟成には熟成を」という発想でなんと吉田牧場の深くふかーく発酵熟成したチーズをたっぷりかけ、百花蜜を添えたものを出してくれたのは、なんと「草喰 なかひがし」の息子さん。なるほどチーズの熟成香はDABの香りに拮抗するね。
一方、グラスフェッドって美味しいんですよということを確認してもらうために、ニュージーランド産の北東のグラスフェッドビーフを指定したのだが、これを「銀水」の山岸さんが料理してくれた。
なんとこれ、味噌漬けなのだけれども、よくある肉の水分をバサバサに抜いて、焼き上がりは味噌の味しかしないという体のものではない。味噌の熟成香が肉の線維に染み渡り、まるでドライエージングを施したかのような風味でもあるが、肉の味もしっかり効いている。とても美味しい料理に仕上がっていた。
〆は生湯葉が乗ったまる雑炊(すっぽんね)。美味しい、、、
いや、とてもいい勉強会&懇親会でした。京都芽生会のみなさんに感謝。
そして本番はここからだっ!
「やまけんさん、お茶屋さんいきますか?それとも男だけでしんみりのみますか」
と義弘君がきいてくる。そんなの「しんみり」とかイヤに決まってるじゃん。ということで、、、
やっう゛ぁい!
夢の世界だ!
祇園特有の、むずかしそうなゲームを教わったのだが、、、
なんとまさかの快進撃!
たいへんに気持ちよくなってしまいました!
おかげさまで、講師でありながら、思い出深い夜になりました。京都芽生会のみなさん、どうもありがとうございました!