今回の宮崎は天気に恵まれなかったのだが、その分、いつもとは違う大根の風景を観ることが出来たので、結果的にとてもよい滞在になった。
さて、上の写真をみて、「いつも食べている大根と形が違う!」と思われるだろう。細く長く、スーッと伸びた形で、こうした形状の大根を理想系という。もともとは、これまたたくあん漬け用の品種だった練馬大根の血を引いているようだが、青果販売用としてではなく、業務用それも漬物専用という位置づけで栽培されてきた。だから基本的に市場流通にのってスーパーなどで販売されることは皆無である。
青首との大きな違いは、首が青くないこと。白首というのだけれども、土の上に出てきた部分も白いまま収獲できる。そしてズドンとした青首とちがってこの細長い形状ゆえ、干し時間も比較的短く済む。もちろん青首系を干し大根にする産地もいまや多いのだが、干し大根専用種は食感がザクザクと強いので、漬物に仕上がってからの味わい、歯触りが全く違うのだ。
ちなみに理想形の大根品種もいろいろあるのだが、この田野町は全国の干し大根産地の中でも圧倒的ナンバーワンの規模であるため、事実上専用品種といえる位置づけのものを使っている。
その種がこちら。
これ、もちろん薬剤でコーティングされているので色や形状がすこし変わっているけれども。正式な品種名はTK-52。タキイ種苗の品種だ。
タキイが出している干し大根用品種がいくつかあるのだが、そのうち重要な品種はこの田野町で栽培試験されたそうだ。その試験圃場を提供し、試験栽培をおこなった中心人物の松山さんとは、5年ほど前に宮崎市の仕事でお付き合いさせていただいたのだが、出会ったときは僕が大根やぐらにこんなにのめり込むとは思っていなかっただろう。
種は、いま街道沿いに夜になるとライトアップをしているやぐらを提供している横山さん親子にみせていただいた。
「毎年、種の大きさが変わるんですよ。年によって、種を栽培している国が違うんですよね。今年のはイタリア製です」
車庫には、これから干すばかりとなった大根が積まれたトラックが二台、雨がやんで出動出来るのを待っていた。
畑で引き抜かれた大根はいったん、選別せずにどさっと積み込んで持ち帰る。
こちらが表で、裏は下。
これを洗浄して、葉っぱの部分を2本まとめて紐で結わえる。これは機械化されている。
右奥に回転ブラシがあるのが洗浄機。真ん中くらいに紐を巻き付ける口があるのがわかるだろうか。
息子さんいわく「てげ古い機械ですよ。」
てげ、とはたいがい、とかとても、という意味。
この機械を通って、2本の大根が葉っぱ部分で結わえられて、洗浄され、綺麗な大根になるのだ。
この写真の立っている大根、葉の中腹で結ばれている。これをやぐらの横棒に引っかけて干していくわけだ。
まったくもって干し大根用に特化されたトラックの機能美。
横山さん、ありがとうございました!
干し大根が終了する2月までの間となるだろうが、この横山親子の大根やぐらが夕方から20時までの間、ライトアップされている。
同じ田野町出身の社長さんがいる、ライトアップ専門の企業である共立電照さんのバックアップで実現した企画だ。やぐらが夜の闇に浮かび上がる幻想的な光景を、近隣のかたはぜひ観に来て欲しい。