弊社の部下が料理通信やらdancyuやらに書かせてもらっていることもあって、新店のオープニングに呼ばれるのをよく横目でみている。そしたらサローネグループの新店がうちの会社からすぐの小網町にできると言うではないか。サローネといえば、さきごろの三越本店のイタリア展で、あまりに旨くて二回も行ってしまった「バイバイブルース」のイベントをガッチリ請け負っていたレストラングループ。
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2016/04/13998.html
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2016/04/14001.html
しかも、総料理長の樋口シェフ自身がここの料理メニューを全部組んで、しかも店で鍋を振るというではないか!マジか!?
ということで、「俺も行きたい」とだだをこねたら、行かせていただけることになりました。事務所から歩いていけるなんて幸せです。
地下鉄の茅場町駅からが一番近いね。茅場町の証券取引所あたりから来ると、高速の高架を通るこの橋を渡ってすぐです。
土地勘がある人なら、ああここか、というロケーションだな。
ガラス張りの開放的な雰囲気、なんといってもトラットリアですからね。ていうか、ここおかしい。シャレオツな雰囲気、一切なし。だってね、オープニングで周りに配付してるチラシ、これですよ。
どこのラーメン屋だ!?ってはなしだよ(笑)
でもこれはもちろん彼らの周到な計算でやっていること。この店はサッと食べてサッと呑んでサッと次の店に行ってもらう、ラーメン屋的なイメージなんだそうだ。ということで、あまり長っちりしないように!(笑)
店内、ざっと30人が座れる感じ。個室なし。あかるく清潔感あって心地よい、大衆的トラットリアです。
メニューみてまた笑った。
みて下さいこの左側の、イタリア料理感のまったくない、体育会系男子向けなメニュー表記!
「名物!たこジャガ」とか「ハイカロリーサラダ」とか、素晴らしすぎる。右側のワインメニューのグラスワインの単価もまた驚異的。本当にお手頃で、ザバザバ呑んでねという意図がみてとれる。
ということでまずは樋口シェフのお話。シチリアで修行をしてきた時にであった、本当はこういう料理を出したかったんだよねというのをここでは100%フルに発揮しますということだった!
もちろん料理はリーズナブルだけれども手抜き一切なし、というのがこれからわかる。
最初の一品は神戸風ジャガイモロースト。
何が神戸風かというと、神戸牛の牛脂を仕入れて、それでジャガイモをカリッと長時間かけてロースとしているからだそうだ。
「僕が修行していた店では、大きな鉄板で注文が入るといろんな素材を焼いて出すんですけど、そのはしっこにジャガイモを置いとくんです。サルシッチャとか牛肉とかの脂がでたのがドンドンしみこんで行って、最後にそれを食べるとすごく旨いんですよね。」
おおおおおおおおおおおおおおそれは旨そうだ!
ご覧の通り表面にはオレガノがマブされていて、香ばしい感じ。意外と水分が残ったロースとかなと思ってフォークでプスッと刺してカリッと囓ってみる。
む! うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう 旨いっ!
皮は極限までカリカリ、そして中身は実に軽ホクッ! 水分が絶妙に抜けていて、かなりじっくりとローストしたことがわかる。神戸牛の脂つまりヘットの軽くてコクのある味わいが実に素晴らしい!
これはぜったいに頼んだ方がいいメニュー間違いなし。
一緒に供されているフォカッチャは、かなり加水率を高くして焼き上げたものだという。たしかにモッチリしていてこれまた美味しい。
さて厨房が慌ただしく麺盛りをしている!パスタの登場である。
来ました、この店のある意味看板メニュー!
なにが看板かというと、ラーメン業界では識らない人がいないであろう、有名な製麺所である浅草開化楼。そこにプロレスラーをしながら勤務する不死鳥カラスさんが、樋口シェフと共同で開発した、パスタフレスカという麺を使っているのだ。ちなみに冒頭に書いた三越で開催されたイタリア展でもこのパスタフレスカが使われていたのだ。
「あ、でも今回の麺はまた違うんですよ」
「左側が、イタリア展で使った麺です。右側のもっと太いのが、今回の極太麺です。最初からこの太さだと受け入れられないかと思ったので、徐々に太さを増してきてるんですよ」
なるほど!
ちなみにこの極太麺で食べられるのは、「黄色いイワシのソース」と「イカキモのラグー」である。パスタはもう一品、「辛めのアラビアータ」があるが、それは中太麺だ。ランチはパスタだけなので、これらをシッカリ味わえるはずである。
で、今日いただいたのは「黄色いイワシのソース」。
これまたシチリアの郷土料理であるイワシとフィノッキオ(ういきょう)と干しぶどうのパスタだ。
「このさらには、フィノッキオの野生種であるフィノキエットを使っています。あと、麺が黄色いのはサフランで色と香りを出している殻なんです。」
極太感、わかりますか?
いや、これがもう、、、
絶品に旨い! このパワフルな麺にまったく負けないで伍する味わいのソースである。イワシとフィノッキオのパスタ、いままで心の底から「旨い!」と思ったことは1回あるかどうかなんだけど、こいつは心の底から旨いね!
なんていうワインか忘れたけど、ハチミツのような香りがするのに味がドライなやつ。素晴らしい相性でした。
そしてこれまた居酒屋的メニュー!
例の「名物!たこジャガ」であります。
これ、煮汁にみえるのはオリーブオイルなんですよ!シチリアではこうやって食べるんです、と自分の100%を出し切れて嬉しそうな樋口さん。
これがまたスゲー旨い!居酒屋で出しても不思議じゃないフォーマットで、ジャガイモのトロトロ溶けおちたペーストがオイルとタコの煮汁とからまって、白飯にかけて喰いたいです。
さて肉料理は、、、
きましたよギャートルズタイプ!「仔羊のしっとり焼き」ってそのままだな(笑)
「無二路」「アルキメーデ」でやっていた重から聞いたが、シチリアでよくやられる技法、羊の足をローストする際にたっぷりの野菜と一緒にオーブンにいれることで、野菜の水分が肉に補充されるのでしっとり焼き上がるのだそうだ。
あたかも煮込みのようなホグホグ感。そしてポイントは下に敷いてあるレンズ豆。これがまたアルデンテな食感で、ドロドロになってないのが佳い。
クミンとカイエンヌペッパーを合わせたこのアフリカアラブ大陸的スパイスを効かせると、またぜんぜん違った世界になって旨い!
いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この店は流行るね。こんな価格でここまでやるのは素晴らしいです。
でも、最初に書いてあるように「サッと喰ってサッと呑んでサッとでる」がお客に求められる素養です(笑)客を回転させてあげないとこの単価でこのクオリティは出せないでしょう。わがまま言わずに、お店の意図にある程度乗ってあげましょう。
正式には木曜日にオープンとのこと。金曜日の昼にお客さんと一緒にパスタランチ食べに行く予定。いまから楽しみだ。
■ロットチェント
http://www.lottocento.tokyo/