「小十」「銀座奥田」の奥田さんは、第一回目の、とびきりの料理人を招待した赤肉サミットの呼びかけに呼応してきてくれた方だ。食べ比べが終わり、いろんなシェフに感想を伺うとき、奥田さんは「うちでは黒毛を使っていますが、、、」という話し出しだった。
ところがそのすぐあと、土佐あかうしを商う三谷ミートの専務から「やまけんさん大変です!奥田さんがあかうし使いたいっていうんですよ!」と連絡があったのだ。そしてランチに出していただくようになり、すぐさま夜にも出して下さるようになった。
自分が関わった食材が、すばらしいシェフに愛される過程に立ち会えるのはこのうえない喜びだ。奥田さんありがとうね!
さて今回の連れは熊本で訪ねてきた僕の有機農業の師匠・ぽっこわぱ農園で、僕が通っているときは赤ちゃんだった、ドニー&よしこ夫妻の娘のハナである。
店の前でおちあってビックリした!スラッとした、しっかりした顔のマドモアゼルになっているではないか!ずーっと不機嫌で、だっこもさせてくれなかった赤ん坊のころとは全然違うので、人って本当に子供の頃が全てじゃないなと思うわけだ(笑)
じつはハナ、なんとなんといま、国立市のエコール辻に通っている。料理人になりたいのだそうだ!しかも日本料理。それならば、ハイレベルの店に行かなきゃな!ということで、ここでご馳走してしまえ、ということなのである。
さて今回のもうひとつのテーマは、なんといってもこの「銀座奥田」の料理長となった五十嵐君との再会である。
先日も三越のイタリア展で、バイバイ・ブルースのパスタを一緒に食べに行ったわけだけど、それがほんとに7年ぶりくらいの再会。「井のなか」を辞めて「流石」へ入り、「流石はなれ」の料理を担当して、奥田さんのところへ。これ以上はないコースでしょう!
ほんとうに立派になりました。
鱧の湯引き。身に吸わせている出しが美味しい。トマト水のうま味も感じるな。
トウモロコシのすり流しに三陸のウニをのせて。
美味です。いたずらに油脂を加えていないので、適度なざらつきも自然な舌触りに感じる。ウニの鮮度も申し分なし。
椀はとうがんと蒸したアワビ、薬味は一枚一枚皮を剥いて細く刻んだミョウガ。
これがまた美味しい、、、煮た冬瓜と同じくらいのアワビの柔らかさ!ヤワヤワの食感がベリースペシャル!
おつくりのアオリイカには、細かな包丁目が入っている。これによって舌に当たる断面が増え、うま味を感じる。
醤油、チリぽん酢、塩でいただくが、イカは塩とスダチとワサビでいただくのが吉、と。
マジですごい!ネットリとろけそうで、噛みしめる愉しみも味わえる。オコゼ、オコゼの皮と肝、美味しくいただきました。
さあそして、カウンターの横で炭火で炙られていた若鮎が、、、
タワーのごとく積み上げられている!
すげえええええええええええっ
「あゆを串に刺したこの形に意味があるんです。鮎の脂が顔側に落ちてくるので、骨をパリッと焼きたい部分に油が集まって、揚げたようになる。また、内臓が頭の方に寄るので、最初の一口で胆嚢の苦み・うま味を感じることができるようになるんです。ですから、うちはたで酢とかはお出ししません。このままかぶりついて下さい。」
いや、これは素晴らしく旨かった! 龍吟の山本征治ちゃんのところの鮎焼きとも違う、奥田流の味。一口目の口中にすべて鮎の味が入っている感じだ。 岩手県久慈市山形町でいただく、大きめの落ち鮎も香りがして美味しいけれども、若鮎をこうやって焼くのはまた別種の贅沢さである。
さぁ そして出ました、土佐あかうしのトモサンカクと賀茂ナスの煮浸しだ。
賀茂ナスは定番の揚げ煮ではなく、油は一滴も使っていない。
「土佐あかうしの脂の味があれば入らないと思ったんです」というが、本当にこの組み合わせ最高。賀茂ナスの種の入った心室の部分のトロ感にあかうしの香りが加わると、無敵の美味しさです。
しあげは、琵琶湖の大鰻。
このブログの前からの読者ならご存じの通りだが、ぼくは鰻とクロマグロはあまりたべないことにしている。なぜなら絶滅危惧種だから。なので、今回予約時に「〆は大鰻の蒲焼きご飯です」と聞いて、「ゴメン! クロマグロとウナギは出さないでくれ」とお願いした。
しかし!
うちの嫁さんが、、、
「えーーーーーーーーーーーーーーーーー それでハモが代わりに出てくるんだったら、あたしはイヤだな、、、」
という。うーんたしかにそうかもね、、、、 しかも、天然の大鰻だという。 じつはウナギの生態上、大きく育ったものはメスである可能性がたかい。野生生物にありがちなことですが、オスはあまり大きくならないのですよ。で、大きく育ったウナギということは、おそらく数回は産卵を経たメスである可能性がたかい。
それならば、再生産をしてくれているありがたいウナギさんなので、一産もしないで食べてしまう養殖よりは持続性に貢献しているともいえる。ということで、心をこめていただくことにするか、というへりくつをつけた次第だ。
みなさんも、ぜひ今年のウナギはスーパーなどで安く買うのではなく、専門店で食べましょうね。前者と後者では大きな意味の違いがありますから。
いやしかし奥田のウナギは旨い! 地焼き(ウナギを蒸さない方式)なのだが、皮目のパリパリ感と、内部の身肉のふんわり感のコントラストがすごい。文句なしの旨さだ。タレをかけるだけでいいからおかわり頼む!とお願いしたけど、もうご飯がありません(笑)残念!
奥田はすばらしいね、デザートも水菓子ではなくおいしいおいしいフルーツポンチだ。この中に入っているメロン、キウイ、ドラゴンフルーツ、パパイヤ、どれも一級品で驚いた!
イガちゃんあんた素晴らしいよ! と思ってたら大将も登場!
かわいい料理人のたまごに、料理人の心がけを特別授業してくれてしまいました。
いやしかし奥田さん素敵。
「牛肉はね、比率がおかしいんです。日本の肉牛の半分が黒毛でしょ?それで、赤身が美味しいっていわれる品種は2%未満なんでしょ?それはおかしいですよ、、、僕ら、日本の食材ほとんど素晴らしいって胸を張って出すけど、牛肉については、黒毛のA5を胸張って外国にもっていけません。あのギンギンした脂は、、、」
と言ってくれた。そーですよね、ホントその通りなんです。
気がつけば20分以上、お話をしてくれた。ぼくが勘定してトイレに行っている最中、日本料理の料理人として上に行くには、性差なんて関係ない。男も女も関係ない。ただし必要なのは、、、ということを、ご自身の言葉でハナに話してくれたという。料理学校生にはなんとも贅沢な「奥田」参りとなった。
そのあと、叔父さんが迎えに来てくれるということだったが、1時間かかる!ということになって、バー「フォーシーズンズ」にてカクテルを味わってもらう。アルコールも重要だからね!
それにしてもいい夜だった。五十嵐君の料理の冴え、お見事! そして奥田さんのお話、ありがたくて涙が出る。本当にごちそうさまでした。
そして、、、 ぽっこわぱでハナをみてきたみなさん。彼女を応援しましょう。数年たてば、日本料理の板前として、デビューするはずです。