愛媛県大洲市の小さな醤油蔵、梶田商店と出会ったのは、よーく思い出してみればもう11年前になる。堀江君と二宮清純さんと、愛媛うまいものツアーに行ったときだったな。あのとき、添加物で甘くしてる醤油ばかりの愛媛で、こんなに骨太な醤油があるのかと驚いたものだ。
その時、とくに気に入ったのが再仕込み醤油。いわゆる醤油で醤油を仕込んだ、ぜいたくなお醤油だ。ただしその時期、梶田商店の再仕込み醤油にはごく微量だがアミノ酸が添加されていた。いらないじゃん、そんなの!と言ったら、若き梶田君も「そうなんです、僕ははずしたいんです」といって、数年後、ほんとうにアミノ酸なしの再仕込み醤油を作った。
そして、その製品のラベルデザインを僕のところに依頼してくれて、できたのが写真左側の、梶田君自身の名前を冠にしたものだ。日本にあまたある再仕込み醤油のなかでもそうとう美味しい部類に入る醤油だと思う。
そして先日、新しい醤油製品が送られてきた。それが右側の「巽晃(たつみひかり)」。なんと原料の大豆と小麦を無肥料栽培のもので仕込んだ濃口醤油だという。
さっそく味わってみたが素晴らしいものだった。これまでの梶田商店の醤油は爆発的なうま味と香りを有するのだが、口に入れたとたんに香りとうま味がはじけとぶので、醤油が主役になってしまうきらいがあった。それゆえ、日本料理店に持ち込んでも「これは美味しすぎて、、、」と言われてしまうこともあるというのが納得できる味なのだ。
ところが、今回の新製品、じつにキリッと爽やかに、素材のよさをひき立て表現する味わいだ。
本人も、「今回の醤油はより使い易く、キレと香りがある綺麗な醤油をイメージしました。想い描いた醤油には近いものが出来たと思います。」と言っているので、意図通りの味ができたというべきだろう。
ちなみにこの時、他の醤油とベンチマークをと思ったが、事務所にいろんな醤油をおいていて、自宅にはなんと、震災後に「完全に工場が復興するまでは開けないぞ」と念じておいてあった、陸前高田の八木澤商店「奇跡の醤」しかなかったのだ。
すでに同社は陸前高田にあたらしい工場ができて稼働しているし、二年以上ねかせた醤油も販売されているので、もうよしとしよう。あーもったいない。
ええ、これ、もうボトリングしてから5年経つんです。もしかしたら酸化しちゃってるかもね、、、でも、メモリアルなものだから。
けど、開けちゃった!
いやびっくりしましたねぇ、酸化臭まったく無し!それどころかふくよかなうま味とゴージャスな香り、なんと美味しい醤油だろう。
この醤油と比べることで、やはりさきの巽晃は梶田君の醤油だなと再認識。すさまじくキレがいいのだ。おもしろいね、切れの悪い味が多い愛媛なのに(笑)
この醤油、いずれ蔵のネットショップに登録されると思います。
それともうひとつ、近年知名度をぐんぐん上げているこの醤油。
やっぱり僕は2012年ものが好きですね。福岡はミツル醤油の「生成り」。そろそろまた違う醤油が出てくるらしいので、楽しみにしてます。
さて明日はどんな醤油を使おうか。