日本橋の三越前から歩いて7分ほどのうちの事務所の近くに、超マニアックなイタリア食材専門商社である登馬商事という会社があるということは以前も書いたとおりだ。
ここには横澤君という、眼のキラキラしたやつがいて、こいつがイタリアで料理修業をして帰ってきて、なぜか食材の販売という仕事をしている。その先輩社員である窪田氏というのが、いかつい顔だが実に繊細に食べることが好きな男である。また最近紹介を受けた星君という若手社員は北海道のあの有名ホテルのあの有名レストランでギャルソンをしていた経歴があって、これまた面白い若者であったりする。
この人たちとは数回メシを食いにいってるのだけれども、こないだ「宣伝用のチラシにやまけんさんのブログに載せてもらったブッラータの写真を使わせて下さい!」というので、「はあぜひ今度ホワイトアスパラの時期に、旨いの食べさせてよ」という条件で使わせてあげたのでした。そのお返しイベントが先頃開催されたわけであります。
一日の業務をあらかた終えた登馬商事で出迎えてくれた窪田氏。奥のテーブルにはこんな素晴らしい料理が!
まずは乾杯です!
どれも自分達が輸入する食材を活かしたものばかり。
生ハム、サラミ、そしてホンモノのラルド。これらすべてイタリアからの輸入品だ。しかも登馬商事の場合、「ぼくらは大手さんのように大量に安く買うと言うことができませんから、とにかくマニアックで美味しい、小さい規模の生産者さんを掘り出して取引してます」という。つまり他ではみられないものが多いと言うことだ。
たとえば生ハムのメーカーさん。
近代化して冷蔵設備をいれれば、もっと多く製造することができる。けど、あえてその道をとらず、むかしながらの方法で製造することを選択したそうだ。
例えばこのラルド。
塩漬け熟成によって風味が凝縮され、滑らかな舌触りのラルド。これもスペシャルな生産者の食材だそうで、量もあまりないらしい。本当に美味しい!
こちらはマグロの生ハム。ねんのためマグロの種類をきくと、ありがたいことに資源量が激減し、あまり食べない方がいいクロマグロではなく、まだ赤信号にはなっていないキハダマグロだそうで一安心。お味の方も実によろしい。
こんな最高のつまみを前に、ワインはその道のプロがこのために来てくれた!
ワインのインポーター「クオーレクール」の阿部さんだ。なんと会話してたら彼も埼玉県北本市の出身だと言う!またもや同郷!ビックリだ。
そして腕を振るうのは、もちろん登馬商事が誇るイタリアンシェフ歴のある食材調達人、横澤君。ようやく君の料理を食べられる、、、
さて肝心のアスパラの話は、じつはこの会の前半部の現像処理をしていないことが判明したので明日以降にお届けすることにして(苦笑)、まずは後半戦のハイライトであるキャビアの冷製パスタから。
冷製パスタと言えばカッペリーニが有名だが、横澤君はディチェコのフェデリーニを選択。絶妙なタイミングに茹でたあと、水に放つことなく冷やして、キンキンに冷蔵しておいたアサリの出汁を吸わせるのだという。
「彼に教えてもらって自分でもやってみるんですけど、ぜったいにいい加減の柔らかさにならないんですよ、やっぱり技術がいるみたいです」と窪田氏。
このうずたかく積まれたキンキンに冷えたフェデリーニ山に、、、
こいつを乗せていく!のだけども、、、
ここで若手の星君が、呑み食いしてる窪田氏に伝令に走る。
「あのぉ、、、キャビア、どれくらいつかっていいですか??」
「ん?ああ? そんなの、、、好きなだけ使えよっ」
といわざるを得ないよね、俺がいる前だし(笑) ということで、ふつうにこれをレストランにだしたら一皿で8000円くらいになるであろう分量が置かれる!
完成! いやまだ完成ではなーい!
「ぐちゃぐちゃに混ぜて食べて下さい!」という横澤君の言に従い、混ぜますっ!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
いままで食べたキャビア料理の中でいちばんぶっちぎりに美味しい!
うま味を感じる程度の程よい冷たさのフェデリーニのツルンとした食感に、キャビアの塩気、魚卵特有の美味しさが点々と舌に生まれ、ポッと灯火のように美味しさが発火していく! すげえ、すげえよ。 冷製パスタなんてイタリアでも食べないじゃん、邪道邪道と思ってしまっていたけれども、、、 こんなに旨いものはないねぇ、と0.1秒で宗旨替えをしてしまった!
じつはこの日、取引上のトラブルが発生して、ぼくらが会社に入った瞬間、横澤君がイタリア語でものすごい勢いで電話しているところだった。
「もうマジでやめて欲しいってことがおきまして、、、」
というパニック状態のなかで、こんなに旨い料理できるなんて、あんたこれからまた料理の道を行きなさいよ、というと「いえいえそんなこといったら料理人のみなさまに怒られます」とあくまで謙虚。
でも、料理経験者が美味しいと選んだ食材を売るというのは、これはもう商社のあるべき姿だろうと思う。
さて今回の養殖キャビアとホワイトアスパラの話もあるので、主要な話題は後編で書きます。おれ、書いてて冷製パスタ食べたくなってしまった。これからフェデリーニとアサリを買ってきまーす。