やまけんの出張食い倒れ日記

国産自給率度100%のたまご、昭和鶏卵の「和のしずく」がイイ!北海道のでん粉用ジャガイモの副生物をうまく使うことで、飼料米多給たまごの新しい可能性を切り拓いた!

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わたしたちはたまごのことをあまり識らない、ということをズッと書いてきた。いやいや、毎日のように食べてるよ、と思われるかもしれないけれど、それじゃそのたまごのもととなる、親鳥が食べる餌は何かご存じだろうか?もしくは、一日に親鶏はいくつたまごを産むのか?といったクイズはこれまでもやってきたので割愛。

日本のたまごと胸を張って言うならば、親鳥が食べる餌も日本のものであるべきだ。というのは当然だろう。でも実際には、日本の畜産で使用される餌の7割くらいは海外から(多くはアメリカ)から輸入した穀物に依存している。だから胸を張って国産のたまごと言えるものは非常に少ない。

もちろんだからといって「輸入穀物飼料を与えて採ったたまごはダメ」なんていうつもりはさらさらない。しかし一方で、国産度を高めたたまごを作ろうとしている人達のことは、やはり拍手を持って迎えてあげるべきだと思う。それだけ大変なことであり、素晴らしいことをやっているのだから。

さて、たまごで国産飼料といえばここ10年ほど、飼料用に育てたお米を与えるというのがトレンドであった。青森県のトキワ養鶏のことはこれまでも書いてきたけど、餌の4割以上をお米にすると、だいぶ黄身の色が淡くなり、味わいもサッパリ、だしのような味わいになってくる。トキワ養鶏の「こめたま」は籾付きの玄米を餌全体の7割給餌するというもので、黄身の色は真っ白け。これを海外のシェフにみせると大喜びで、例えばベージュ東京アラン・デュカスの前任シェフであるジェローム・ラクレソニエールは「ケンジ!これはライスの味がする!」と大喜びだった。

ただ、いままで長いこと、輸入トウモロコシベースのたまごに慣れてしまった人にとっては、飼料米多給のたまごの味はすこし物足りないというか、アッサリしすぎという声もあった。

そこに、また面白い試みが出てきた! それが飼料メーカーでもある昭和鶏卵が取り組む、「和のしずく」だ。

 

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「●●のしずく」っていうネーミングはだいたいなんでもおさまりがいいので多用されてしまいがち。もうちっとひねってもよかったとは思うが、まあいい。このたまごのポイントはそこではない。

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ここで注目すべきは、北海道産のジャガイモ由来の原料という部分だ。

これはなにか? 正体はジャガイモから抽出したタンパク質をペプチド体にしたものと思われる(まだ担当者に詳しく話をきいていないので推測ですが)。

ジャガイモ、というよりも、北海道の生産現場では馬鈴薯(ばれいしょ)という。馬鈴薯には生食用だけではなく、でん粉をとるためのものがある。でん粉?と思われるかもしれないが、皆さんお使いの片栗粉は、もはや片栗の根を使っているのではなくほぼ馬鈴薯のでん粉である。ジャガイモをカットして水にしばらくつけておくと、下に白い粉状のものが沈むのがわかる。これがでん粉なのである。

そのでん粉をとる工場で馬鈴薯は様々な処理を施されるのだが、でん粉以外の部分のカスが出てくる。特にタンパク質はでん粉にはいらないので、これが残渣として出てくる。このタンパク質を酵素処理でペプチドにするわけだ。これ、じつは人体にいい影響を及ぼす、健康機能性を持つといわれている。

これを鶏に与えることでどうなるのか。ペプチドだから効率よく吸収されるのだろうが、それ以外の作用については僕にもよくわからない。ということで、食べてみた方がいいですね。

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赤玉ですね、ボリスブラウン系の親鳥でしょうか。

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黄身の色が、一般にスーパーで販売されている通常卵なみの濃さ。カラーファン11程度でしょうか。いつもなら水様卵白をすするところからテイスティングを始めるのだけど、すぐに焼きたかったので割愛(笑)

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すみませんお腹が空いていたので、蓋をして蒸し焼きにし、北海道のソフィア・ファームのハーブソルトをかけていただきます。

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飼料米多給のこめたまごとは思えない黄身の色。パプリカ色素を与えているわけでもないだろう。これもポテトペプチドによるものだろうか!?

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あじわいなのだが、これが実にキャッチー!

というのは、飼料米たまごにありがたちなストイックな味わいではなく、十分にコマーシャルな、万人受けする卵の味わいなのだ。ふつうの家で好まれる、すこし油っぽさがあって香ばしい、あの味わい。

じゃあ、普通のたまごでいいじゃんと言うなかれ。そのみんなが好きなあの味わいが、カロリーベース国産100%で実現できているということがスゴイ事なのだ。まあ、たべものの価値を美味しさでしかはかれない人には、意味のないたまごかもしれない。

けどね、ハッキリ言うけど、おいしいマズいは誰だって言えるんです。そんなのは些末なこと。大事なのはそのたべものの尊さの価値をはかることじゃあないでしょうか。

そういう意味で、飼料メーカー自身がとりくんだこのプロジェクトはとても面白い。今度はぜひ、国産100%の子実コーン飼料を商品化してほしい。そしたら、俺の短角牛に食べさせるよ!

昭和鶏卵さん、ぜひこの路線、頑張って下さい!ごちそうさまでした。s