いやー Tamronのマクロは素晴らしい!
僕が仕事で使うレンズで、おそらく今まで一番活躍してきたレンズの一つがタムロン90mmマクロf2.8だ。いったいこのレンズでいくら稼がせてもらっただろう。たとえば数年前に連載していた週刊フライデーの食グラビアの7割はこのレンズで撮っていた。
僕が持っているのはデジタルコーティングを施したものにつけられるDiというマークが入っているので、おそらくModel272Eだと思うのだけれども、根元に絞りリングがついている古いバージョン。2009年に通販で、バルク品を割安(なんと25000円だった!)で買ったのだが、その素晴らしい画質と総合力にノックアウトされてしまったのだ。
TAMRON 単焦点マクロレンズ SP AF90mm F2.8 Di MACRO 1:1 ニコン用 フルサイズ対応 272ENII | |
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当時、Nikonの純正105mmf2.8マイクロと比べたのだが、こちらは写りは最高だが、太くて重くて携行性が悪い。しかも、背の低い僕がテーブル上の料理を撮影しようとすると、105mmではちょっと長すぎるのだ。90mmと10.5mmの違いとはいえ、けっこう大きいのである。このタムロン90mmマクロはまだ販売していて、フジヤカメラあたりなら、程度のいい中古が2万円程度で買える。マクロに興味があるがいきなり高価なレンズはちょっと、、、という人には超絶お薦めのレンズだ。
その伝統のタムロンマクロに新製品が出た。
筐体デザインが高級感あるものに変わり、そして手ぶれ補正がついた。いったいどんな使い心地なのだろう、と思っていたら、写真家のあべっちこと阿部秀之先生が「使ってみればいいよ!タムロンにお願いしてあげるから」とご紹介いただき、試用させてもらえることになったのだ。阿部先生、ありがとうございます!
右が旧版、左が新版だ。ごらんのとおり新版のほうが太さも高さもある。Nikon用だと新版は600g、旧版が400gなので200gも違う!これは手ぶれ補正メカ搭載と、静粛で素早く動作するモーターであるUSDを搭載しているからだろう。
またレンズ口径も変わっていて、フィルター径は新版は62mm径 旧版は55mm径。
そして、新版はレンズの長さが変わらないインナーフォーカス、旧版はレンズ前玉が伸びる方式であるということもあり、レンズ前玉の位置がかなり違う。新版はご覧の通りレンズ筐体の前側にあり、旧版はレンズがかなりフードの奥まった部分に位置している。だからだろうか、あとで両レンズの撮影比較画像を並べるが、三脚で固定して二つのレンズで写真を撮ると、若干撮影できる範囲が違うのである。
D800に装着した姿を見ると、旧版がスリムでいかにも軽量にみえるのに対して、新版はかなり大柄に見える。事実大柄でフードも長く、重さもしっかりと増えたという感がある。
では、これだけヘビーになったことで画質にどう変化があるのかと言うことが重要だ。しかしこの点では、阿部先生からすでに「あのね、光学的には変わりません」と言われていた。でも「まったく変わらないってことは無いですよね〜!」と僕は思っていた。
ということで撮り比べてみよう。
日本橋の事務所の近くにある公園で花を撮った。このマクロレンズは花を撮影するために購入する人が多いので、いちばんいいシチュエーションだろう。D800を三脚に固定し、手ぶれ補正を切った状態で、ライブビューでピント位置を拡大してマニュアルで合わせて撮影。画面後ろ左の花しべにピント合わせてます。なお、赤が強くて色飽和してる部分があるけど、それをみるためじゃないのでご容赦下さい。
順番は旧版→新版として、絞り開放とF5.6を掲載する。ちなみにスペック上はf2.8が開放値だが、Nikonの場合はマクロで撮ると実絞りがf3.5になる。
旧版と新版で画角がすこし違うのは、先に書いたとおり、インナーフォーカス化に伴ってレンズ位置が変わったためだろう。
★開放値f3.5
■旧版
■新版
■旧版 ピント位置拡大
■新版 ピント位置拡大
★アングル変えてf5.6での撮影
■旧版
■新版
■旧版 ピント位置拡大
■新版 ピント位置拡大
えーと、、、
全然変わんねぇ!!!!!!!
ホントかよ、と思うけど、やっぱり、描写に大きな違いはない! ちなみにどちらもピント位置の切れは素晴らしく、定評のあるぼけも美しい。
これだけみると、正直な話し、旧版でも全然いいじゃんと思ってしまう。
被写体を変えて、、、
★開放値f3.5
■旧版
■新版
★ちょっと絞り込んでf8で撮影
■旧版
■新版
やっぱり、ぜんぜん違いが見られない、、、彼方の玉ボケの形状もほぼ同じなんですよ、、、
ある意味すごいですね、3万円以下で買えるレンズでも最新レンズとかなり渡り合えるということだ。この時点では、「あーよかった、買い換える必要ないや」と思って事務所に引き上げていた。
しかし!
これ晴れの日中に撮影したんですね。家に持ち帰り、照度の低い環境で手持ちでこんな被写体を撮影したときに、この新しいマクロレンズの真価が発揮されたのである。それは、強力な手ぶれ補正機能VCだ!
写真は北海道のエレゾ社の新製品、蝦夷鹿の血のブーダンノワールバナナ入り(絶品!)
D800 1/50 F8 ISO1600
これを窓から射す自然光のみで撮るのだが、ISO感度を1600に上げてもかなり手ぶれしてしまう条件だ。だって1/50! そもそもマクロ域で撮ろうとするとかなり手ぶれの危険性が増す。
しかし!
D800 1/60 f5.0 ISO1600
バシッと決まる、、、
そうか、そういうことなのだ。これまで僕はタムロン90mm旧版を、ストロボライティング環境で使ってきた。強い光を当てるので、シャッタースピードを気にすることはなかったのである。
しかし、自然光でマクロ撮影をしたり料理撮影をする場合には、さっさと諦めて手ぶれ補正つきレンズを使うか、50mmf1.4のように明るいレンズでぼけぼけに撮影をしていた。そうでなければ撮れないからだ。
しかし、新しいTamron90mmf2.8マクロならば、3.5段分という超強力な手ぶれ補正がサポートしてくれるので、シャッタースピード1/80でビタッと停まった写真を撮ることができる。ちなみに、フルサイズのカメラはセンサーが大きいから、1/80のマクロ撮影はけっこう大変。ボディ内手ぶれ補正の効きがいいマイクロフォーサーズでの撮影に慣れていると、フルサイズで撮る時に「撮ったの全部ブレブレだ!」ということがけっこう起こる。
1/160 f3.5 ISO800
そういう意味では、このタムロン新版はフルサイズのための新しい時代のマクロと言うことなのだろうと思う。(もちろん三脚につける時はマクロスイッチをオフにする必要がありますので注意)
1/160 ー0.67EV
ただし、今回撮り比べてみて驚いたのが、旧版もまだまだいけるなということだ。マクロレンズもってない人、レンズキットの標準ズームしか使ったことがないという人が最初に買うレンズとしてこれ以上のものはないんじゃないかと思う。ただし、ライティングしない場合は三脚でのマクロ撮影が前提となる。
長く使っていきたいならば、まよわず新版の手ぶれ補正入りの90mmを買うことをお薦めしたい。撮影できる領域が、一気に拡張される思いがする。それは撮影に際しかなりの自由を手にすると言うことだ。
TAMRON 単焦点マクロレンズ SP 90mm F2.8 Di MACRO 1:1 VC USD ニコン用 フルサイズ対応 F017N【シフトブレ対応】 | |
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以上、レンズ選びの参考にして下さい。
購入時に一緒についてきたキットレンズだけで満足するのはもったいないよ!
交換レンズを手にしたときから、写真の本当の楽しみが拡がります。これ、実体験からの本音。キットレンズの次に手にするレンズとして、マクロレンズはすごくいいよ!