やまけんの出張食い倒れ日記

「農産物輸出額が7452億円」と喧伝されているけれども、本当の意味での農産物や和牛などの畜産物はそんなに売れてないんだよ。

農林水産省がとりまとめた「平成27年農林水産物・食品の輸出実績」について各紙面が報道しているが、ほんとうに色んな記事が、あたかも国民に「輸出がバラ色!」という誤解を与えるように書かれている。

けれども、残念ながら米や青果物、和牛などの農林産物の輸出額が7452億円になった、というわけじゃない。その内訳を見ると、実はホタテなど水産物が2757億円、加工食品が2258億円でほとんどを占める。

米と野菜、果物といったど真ん中の農産物はぜんぶ合わせても436億円程度。たいした量じゃありません。和牛なんか110億円に過ぎない。ほらこれをみてご覧。

■重点品目の輸出額・数量
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/pdf/160202-03.pdf

米に野菜や果物の青果物、生の畜産物で1兆円行くならこれはたいしたもので、本当にバラ色と言える。けれども実態は全然違う。水産物も加工品も輸出で売れているのは頼もしいことだけど、それでバラ色とはならないでしょう。

実際に青果物などがどう受け止められているかというと、輸入国で福島第一原発の放射性物質への不安もいまだに根強い。国際関係の中で、輸出ができるようにはなっている(相手国の許可が出ている)けれども、実際には売れていない状況もある。持っていっても通関が切れなかったりすることがあるそうだ。つまり法的に輸出が可能になることと、実際にむこうの買手が買ってくれるかどうかは別問題なのだ。

また「日本の高品質な野菜や果物は向こうで大人気!」というステレオタイプな受け止められ方があるが、近年ではやや状況が冷え込んでいる。いかに日本産であっても「高いネ~」と言われることが増えている。海外から求められているのは「値頃で高品質」なのだが、いまの段階では「値頃」にできるロジスティクスが構築されていないのだ。その点、冷凍が効く水産物や常温帯で輸送可能な加工食品はロジスティクス的に有利なので、伸びているだけの話しなのである。

それなのに、だれもが農産物が農産物がと言い過ぎ。実態は「米や青果物も伸びてはいるものの、水産物と加工食品の売上げが全体を牽引している」だ。まあ青果物はもとが少なかったから、力を入れだしたことで44%と対前年度比が伸びてはいるけどね。

まるでこれからは輸出で絶対うまくいくから、国内対策はどうでもいいと言っているみたい。なにか意図があるんでしょうか。

きな臭いなぁ。

もちろん、輸出が悪いとか言っているわけじゃない。輸出は大事です。けれども、「これからは輸出が伸びるから農業はバラ色」というのは幻想である、と言っているのです。誤解無きよう。僕の仲間で農産物輸出に携わる卸の連中からきいた実態の話を、いずれ書きたいと思う。

そうそう、ふぇちゅいんさん作成の、全国のニュースサイトから特定のキーワードで検索し、記事リストを作ってくれるスクリプトを導入します。下記に出てくるけど、ゴメン俺のこの記事もリストされちゃってるね。時間をおくと増えていくようです。ご覧下さい。

■農産物輸出に関する記事リスト