先週、自由の森学園の食堂を創生期から支えてきた泥谷政秋さんを偲ぶ会が、食堂で開催された。僕は発起人の一人で、挨拶と後半の進行を仰せつかったので会にコミットしていたのだが、政秋さんは仕入担当をずーっとやってきたので、生産者と最も付き合いが深くなっていた。
その生産者のひとりが、日本の有機農業の世界で燦然と輝く生ける伝説、埼玉県小川町の金子美登(よしのり)さん・友子さんご夫妻の農園だ。じつは金子農園の野菜が食堂で使われていたことは後年に知ったので、「うそっ!」とビックリしてしまった。
というのも、高校卒業後、紆余曲折を経てから僕は藤沢の慶應SFCに入学し、キャンパス内に畑を開墾した。その際にバイブルにしていた何冊かの有機農業関連の本があったのだが、そこにもちろん金子さんの本もあったのである。
そういうこともあって、2010年に出版した自森の食堂を紹介した本「日本で一番まっとうな学食」の帯には、金子さんに推薦の言葉をいただいたという経緯もある。
日本で一番まっとうな学食 山本 謙治 by G-Tools |
で、その「偲ぶ会」にも金子さんご夫妻が駆けつけてくれ、とてもレアなお話までいただき、感謝感激だったのだが、スペシャルなお土産がついていた。それが、金子農園で穫れたイチゴである。
限定数量だったのだが、100人あまりの出席者のなかで、ゴメン役得かもしれないけどいただきました。家に帰って洗って食べたのだが、これはもう極めつけの美味しさだった。品種はおそらく「とちおとめ」あたりではないかと思うのだけど、ビックリするほどに美味しい。
市販の一般品と何が違うかというと、芯の芯の部分まで、味がある。その味というのも、たんなる甘さだけではない。なんというか、イチゴにもっとも必要と僕が思う、うま味のような、甘さを下支えし、余韻を長く長く保たせる味が細胞ひとつひとつに生成されている。そんな美味しさなのだ。
有機農産物というと、安全性が高いとか健康的とか、そういうイメージが先行しているように思う。もちろんちゃんとした農場のものはそうとも言えるが、それは有機農産物以外のものでもいえることである。
それよりなにより重要なのは、有機でしかも高い栽培技術を持っている人達の作る青果物は、美味しい。これがポイントだと思う。逆に言えば有機であったとしても、味わいのないものを作る人もいるということだ。
特にイチゴに関しては、単に土作りをよくしましょう、というような通常アプローチではなかなか市場を満足させるものは出来にくくなっている。それこそ、昨年書いた茨城の村田農園や、同じく茨城の某生産者さんの栽培技術を観ると、「そんなことやってるの!?」と驚くような肥培管理がなされている。イチゴの栽培技術は青果物の中でもかなり先鋭的だと言えるだろう。
しかし、金子さんのこのいちごにはぶったまげてしまった。ここ最近食べた中でピカイチです。
レジェンドはやっぱり違う、、、ということでしょうか。正直また食べたい。金子さん、ごちそうさまでした。