1月後半に、福岡のキャナルシティ内に昨年12月にオープンした「ホールスクエア」にてドライエイジドビーフの会を開催する。肉はいまや九州で最大のドライエイジング熟成庫を持つ、熊本の丸菱で熟成するわけだが、「他に何を出しましょう?」ということでいろいろ考え、熟成つながりで村上農場の熟成ジャガイモのフライにしようと思ったのだ。
ちなみに村上農場は20種以上のジャガイモ品種を植えて、それをすべて熟成倉庫に入れて温度管理をし、年を越して甘く美味しくなった状態で販売するという、ジャガイモ界では革命的な農家だ。dancyuの記事執筆の際、奈良の「イ・ルンガ」堀江純一郎シェフに教えてもらい、現地にいってびっくらこいた素晴らしい生産者である。
品種は何にしよう、と逡巡したのだけれども、やっぱりこがね丸は外せないよなと思い、自宅に取り寄せて食べてチェックさせていただくことにした。
こがね丸は2006年に登録された品種で、北海道農業研究センターで育種開発されたものだ。親となる品種に、フライドポテト適性が高くい十勝こがねを持っているので、ホクホクカリッとした美味しさは約束されている。僕はこの品種を開発した森先生から直接、馬鈴薯に関する基礎知識を教えていただき、そして「こがね丸」という名前の名付け親となった岡田君にさらにいろいろと教えてもらったこともあり、この品種には思い入れがある。
ただしこの品種の名前をきくことは一般にはないだろう。なぜかというと、生食用に出回ることは少なくなってしまったからだ。農家さんや農協関係者さんらにきいた話だが、身を割ると中に穴が空いている、いわゆる空洞果が出来やすいという欠点があり、クレーム対象になりやすいというのだ。
ところがこの品種、ホクホクしているということはでん粉価が高いということだ。そこで、でん粉原料として栽培されているらしい。つまり片栗粉の原料になってしまっているのである。なんともったいない、、、
この品種、ホクホクして美味しいだけではなく、いま北海道のジャガイモ農家にとって最も驚異となっているシスト線虫に対する抵抗力を強く有している。実はこがね丸の爺ちゃん(いや婆ちゃんかもしれないが)がR392-50という品種で、こいつが超強力なシスト線虫抵抗性を持っているのだそうだ。だから、とりあえず空洞が出たとしても、収穫さえできればあまり問題にならないでん粉原料として生き延びているのだろうか。
どちらにせよ、まだ食べられるのが実に嬉しい。
届いたこがね丸をはじめとする4品種を、昨日は友人達が家に遊びに来ていたので、軽く茹でて手で割り、それを菜種油・ひまわり油・豚脂・牛脂の混合脂でカリッと揚げて出したところ、大好評だった。
本日は昨日の食材の残りのタラがあったのでフィッシュアンドチップスをしよう!ということになり、まずこのこがね丸をじっくり油で揚げきり、それにタラをビール衣で上げたのと一緒にいただいた。
やっぱりこがね丸は美味しい。こんなにホックリしてフライに合う品種がなんでもっと世に出ないのか。男爵薯なんて目じゃないと思うんだけどね。