いつも赤肉サミットなどの開催でお世話になっている服部学園からお誘いがあって、ラトビア大使館へ。ふだんそういうプレス発表イベントとかはあまり参加しないのだけれども、この日は興味があって足を運んだ。なんといっても、ラトビアという、何もなければおそらく行くことのない国の料理を味わうチャンスだからだ。
NHKの西門(渋谷駅から遠い方だ)からちょっと歩いたあたりは、各国の大使館があったりして閑静な住宅街だ。その一角にラトビア大使館がある。
中に入ると、テラスにみなれないワインやスピリッツの瓶が並んでいる。
ウェルカムドリンクをいただくとき、大使館の人が「ヨウメイシュ」といって手渡してくれたのがこれなのだが、それって「養命酒」?
ピンポーン!
もちろんあの「養命酒」ではないのだけれども、同じようなコンセプトで、強い度数(40度前後)のウォッカに24種ものハーブや果汁などをブレンドしたもので、健康のためによいとされる酒だ。なんといってもかのロシアのエカテリーナ女帝がこの酒で健康を回復したという逸話付き。名前はブラック・バルサム。それを炭酸で割ったものをいただいたのだが、実に強くて香りが独特で、美味しい。僕はこれ、好きな味だな。
僕が旅した中でもっともラトビアに近かったのは、10年前に赤坂のバー「ティアレ」の水澤君が、オーパ門前仲町店にいた時代に、彼が世界大会に出場したときに応援にいったフィンランドだ。とにかく寒い!そして寒さに強い食材ばかりで、どちらかというと日本のような起伏には富まない味わいの料理たち。でも、滋味あふれるあたたかな食文化があった。
さてラトビアはどんな料理文化があるのか?
今回誘ってくれたMさんが教えてくれたのが、こんな感じ。
ラトビアは旧ソ連ロシア、ドイツの支配下にあったことから、そういった国々の食文化の影響をうけています。たとえば、ザワークラウトやピロシキといったものがイメージしやすいと思います。
冬はとても寒く、長いことから、長期保存に適した食材加工をすることが多いです。例えば、塩漬け、燻製、酢漬けなど。自然豊かで、森も身近なことから、ベリーやキノコ狩りをします。採ったベリーは、ジャムやシロップにします。
現在はEUに属しており、毎年の農作物の生産量の上限はEUから規制されています。そういったこともあり、ラトビアには大規模な農協はなく、小さな規模の農家しかありません。リーティンシュシェフは、そういった農家やそのほかラトビア食材の生産者の食材を積極的に彼のレストランVincentsで使うことで、その食材の知名度を上げ、地産地消を推奨しています。
なるほど!
そして、プレスの人達も集まって会のはじまり。
ラトビア大使のご挨拶のあと、リーティンシュさんのご登場だ!
この人、なんとイギリス生まれでしばらくイギリスで育ったのだそうだ。そのせいか、自分でいってたのが「私は伝統的な料理のシェフではない」ということ。現代ラトビア料理ともいうべきものを創り上げた、ラトビアで最も有名で先鋭的なシェフなのだそうだ。
その彼が、ラトビアの食文化についていろいろプレゼンをしてくれた。彼が手に持っているのはラトビアの黒パン。ロシアでみかけるそれのように黒く、そしてドイツで見かける黒パンのようにズシリと重い。
実に酸味の効いた香りのするパンだ。もちろんふわふわのパンもあるらしいのだが、このようにしっかり発酵させた酸っぱいパンが国を代表する味らしい。
プレゼンテーションの後、会食だ。
これらの食材は、今回特別にラトビアから輸入した食材が多い。
例えば時計回りで3時の部分にある、うずらの玉子に載せたキャビア。これ、実にエシカルなキャビアだ。カスピ海産キャビアは乱獲で資源が枯渇しかかっており、ヨーロッパのレストランでは使わないというシェフが多い。しかしこのキャビアは、お腹に玉子の詰まったチョウザメを水揚げした後、いきたままお腹を優しくマッサージをする。それで玉子をブリブリッとお腹から出して、チョウザメ自体は生きたまままた水に戻すのだそうだ。チョウザメは卵を産むまでに7年以上かかるので、これはとてもいい方法! もちろん塩気より風味の方が印象深く残る、味わいもとてもよいものだった。
細い黒パンにのっているニシンの塩漬けは、北欧でよく食べられているもので、ここで使っているのはラトビア産だ。
紫色のそぼろのようなのがのっているカナッペは鹿肉のタルタル。鹿が多く狩猟免許を持つ人が撃って食べるのだそうだ。
チーズはキャラウェイで香りをつけたもの。その他、ラルドのような発酵させた脂肪もあったと思う。
その他いろんな食材の説明を受けたのだが、食べるのに夢中で忘れてしまった!
こちらはカボチャのポタージュなのだが、上にかかっている茶色の液体、バルサミコではなくカボチャのシードオイルだそうだ。
なんとも軽くてまろやか、いい香りの油がスープにアクセントとなっていた。
シェフ、現代的に液体窒素でデザートを作るの図。楽しい人です。
そして、部屋の中で最後にまた料理パフォーマンス。歌に乗せて、日本風に言えばおじやのようなものを作る。
ワイングラスに入った材料を歌に合わせてポンポン投入し、混ぜていく。
香味野菜たっぷりに、ドライ状態のベリー類など、「らしい」ものが入る。それに加えて驚いたのが、、、
ブラッドプティング!もしくはブーダンノワール?血のソーセージをぶち込みました!
鍋の中はカオス!
出ました色鮮やかなベリー!
サワークリームがごってり!
はい完成! 実に面白いパフォーマンス。
出来上がったのがこれ。あれれ、見落としてたけど、お米みたいな感じのものも入ってる!?本当におじやなのかな。
実はこれ、米ではなく麦なのだ。かんがえてみればそうだよね、あんな寒いところで米はできない。でも、この料理は本当におじやみたいなもの。よくわかるし親しみが湧く。
「これ、冷蔵庫にあるものをどんどん入れてけばできるもので、レシピなんて無いんだよ」
というが、なるほどね。
これがですねぇ、、、
すんばらしく美味しい! 麦の弾力ある食感に暖かいクリームがからまって、しかもブラッドプティングの濃厚なうま味が素晴らしい。ベリー類は酸味の発信源となっていて、これはよくある北欧料理の単調さがなくて、飽きずに食べられる。美味しい!
いや、素晴らしかったですね。いまでもこのラトビアおじや、また食べたいです。で、このおじやが出るかどうかはわからないけれども、この11月、各所でいろんなイベントが開催されるそう。
11月12~17日 グランドハイアット東京にて 東京フレンチキッチンのメニューとして楽しめる
11月14~17日 新宿伊勢丹のキッチンステージにてイベント。15日16日のランチ時にはシェフによるスペシャルセミナーを開催だそうだ。
興味のある人はぜひ足をお運び下さいませ!このおじやが出たら、絶対に食べた方がいい。マジ旨いから!