ということでミツル醤油を後にし、昼飯へ。実は東京で人気のステーキハウスが博多にも出店したというので、そこへ行こうかという話になったのだが、ミツル醤油の取材が長くなってしまったこともあり、ちょっと時間切れということで「うどんでも食べて行きましょう」ということに。まあ、そのステーキハウスというのは、船便でもってきた輸入肉を真空パック開封して冷蔵庫内に吊す、後付けタイプの熟成肉を出す店。それなら食べなくていいやということもあり、うどんでホッとした。しかもそのお店は、博多通のN本君が先導してくれた店。
博多駅から5分程度あるいたところ、すぐ横には承天寺という古いお寺があるとかで、いきなり交差点にこんな非日常的空間が現出する場所。なんだか脳内がぐらりとする。
「あのですね、僕は何をかくそううどん好きなんですけど、ヘタすると週に一度はきてざるうどんを食べてます。」
というのだからうまいのはわかる。しかしこのみせ、食い倒れ的要素もあるのだという。
「えーとですね、いちどに1玉から3玉まではうどん玉数を同じ値段で指定できます。しかも2時以降に入ると、おかわりできるんです。」
それをきいて、町の定食屋系の、小汚い店を想像してしまった。のだが!ぜんぜん違うんですよ綺麗なお店に着きました。
春月庵 承天寺前店
福岡市博多区博多駅前1丁目7-1
092-473-2911
ごらんのように、九州とくに博多のうどん店としては安くない価格。しかしこの価格はどうやら、最初からおかわり代が込みの値段なのではないだろうか。
ちなみに入店して気づくのは、みんなの席にでっかい鉢が来てるんだけど、その中身がそばなんですよ、おそば。
「実はですね、うどん・そばの発祥の店、らしいんです。」
ええええええええええええええええええええええ マジかよ! と思ったらそれに関するウンチクも書いてある。
なんと、おとなりの承天寺というお寺こそ、むかしの中国から製粉技術を日本に初めて伝えたお寺なのだそうだ。その製粉技術がなければそばもうどんも成立しなかったということで、たしかに「発祥の地」といってよいのかもしれない。
さて、先導役のN本君は「ぼくはここでは、ざるうどんしかたべませーん」という。ぼくは温かいのも食べたいので、きつねうどんに海老天追加、それとゴボウ天ざるうどんを頼む。すると仲居さんがすかさずきいてくる。
「何玉にしますか?」
おおおおおおお、、、 これが噂の、、、
「じゃあ、暖かい方は1玉、冷たいのを2玉で。」
N本君がにやりと笑い、「1玉じゃ足りませんよ、絶対。けど、大丈夫です」と謎の言葉を残す。
待つことしばし、さきに海老天がやってきて、、、
きました、きつねうどん!鉢はやたらデカイです。
「冷たいのと温かいのを一緒にだすのは無理なんですよ~」と仲居さんが言ってたんだけど、それはポリシーってことじゃなくて、物理的に一人分のスペースに並ばないからだった!
さて、このうどんなのだが、麺が茶色い!
写真では光線状態もあり、ちょっと伝わりにくいかもしれないが、茶色いのです。ズッズズッとすすり込む。九州独特の、コシなしモッチシとしたうどん。いりこっぽい出汁がよく合います。1玉だとホントにすぐに食べてしまう。
ちなみにここの麺はどうやら中世の時代には石臼で小麦を挽いていたから、こういう色だったと言うことで、小麦のふすま(ヌカね)や胚芽を混ぜているという。これをきいて「石臼挽きか!」と思う人もいるかもしれないが、残念ながらこれは違う。石臼挽きのうどん麺だとこんなつるつるてんとしたものにはならない。これは精白した小麦粉に、別のふすまと胚芽をわざわざ足して混ぜたものでしょう。つまり石臼挽き風のうどん。
けど、それはそれでいいのだ。灰分が多いことで、噛まずに呑み込むようなうどんとはまた違った楽しみを得られるのだから。
さて、きつねうどん&海老天をかたづけると、「じゃあ、ゴボウ天ざるうどんを準備しますね」といわれ、さらに数分後。
ゴボウ天到着。なるほど、ゴボウの長さを活かして、斜め方向に切るのか。繊維を残してゴボウを縦方向に4つわりする僕の好みとは違うが、繊維を切るので食べやすい方式である。
と、言ってる間にうどん到着。この写真だと、麺の茶色さがわかるだろう。
さてこのうどん、ザルが圧倒的に旨い!
釜揚げしたうどんを冷水で引き締めることで、やわい中にもしなやかなコシが少しだけ生まれ、それが実に心地よい。しかも、九州特有のあまがらいつゆが実にマッチしている!これは実に佳い!
ズルズルズルっと食べすすみ、麺を啜り終わったタイミングで、仲居さんまたやってきた!
「追加はお食べになりますか?」
でたああああああああああああああああああああ 噂のおかわり!
ということで、2玉追加させていただきました。この店、冷えたざるがお薦めと言うことがよく分かりました。それと、やっぱりそばも美味しいらしいので、次回はうどんではなくそばにしてみようと思う。
さて、その春月庵のすぐ横には、デザイナーのナガオカケンメイさんが全国の地方都市につくっているD&Depaetmentが建っている。古いビルディングをリノベしているようだが、うーん、格好いい。
「ちょっと、お茶していきましょう」
いーい空間です。居心地よし。しかし、、、
「やまけんさん、こういう店だと落ち着かない感じにみえますよ」
はい、そうなんです。オシャレ系カフェに僕は合いません(笑)
コーヒーだけにしておこうかと思ったけど、ドライカレーがメニューにあったので、たのんじった、てへっ!
うん、丁寧に造ってる味です。そして、食後に頼んだアイスコーヒーがおいしかった。
このとき、N本君の後方に、Macbookを拡げてぱちぱちやりながら、ときおり食事を口に運んでいる、ショートカットのお洒落でかっちょいい、若い女性が座っていた。デザイナーぽいなぁ、俺とは違ってこういう店にとってもマッチしてる。そんな風に思ってたら、彼女が荷物をたたんで店をでようとしている、、、と、こっちにきて「やまけんさんですよね、いつもブログみてます」とニッコリ微笑んできてくれたので、はらわたひっくり返りそうになった。俺のブログを読んでいて、地方で声をかけてくれる人はいないではないが、だいたいそういうのは体育会系的なおにいちゃんが多くて、こういう綺麗な女性は実に少ないのダ!
うん、これで今日一日はご機嫌に食べていける、と思ったのでした(笑)