「きちんとしたドライエージングビーフを製造できる熟成業者さんですよ」
とお薦めできる人たちが、三社増えた。喜ばしいことです!
僕も委員を務めるドライエージングビーフ普及協会では、まだドライエージングビーフに関する基準等も整理されていない状況ではある中で、手探りをしながら一年に一度、認定審査を行っている。生肉の状態、焼き上げた状態、そして熟成庫内の視察を経て、NYスタイルのドライエージングがしっかりなされているかを確認し、審査の結果付与するものだ。
昨年中に審査会が開催され、それぞれの熟成庫内の状況確認をした上で、昨日審査結果が発表され、認定書授与となった。場所は先頃オープンしたカルネヤサノマンズである。
このお三方が、今年度認定された主役である。
左から、愛知県を本拠とする杉本食肉産業の川村さん。真ん中が栃木県でホルスタイン肥育を行う前田牧場の前田さん。そして左が、九州最大の製菓・製パン商材の卸である丸菱の本田社長さん。おめでとうございました!
面白いと思うのは、長く業界で食肉専門でやってきた杉本食肉さんのようなところもあれば、前田牧場のようにど真ん中の生産者さんや、畑違いと思えてしまうような食材卸の丸菱さんなどまでがチャレンジしていること。そして、時間とお金と勇気(または意地?)をかけて熟成に取り組み、成功させたことだ。素晴らしい!
僕も審査員の一人だが、この三社の熟成技術は確かだと太鼓判を押せる。もちろん、今後の各社のビジネスがどうなるのかはそれぞれの才覚によるものになるだろうが、品質的にはバッチリであります。
当然、認定授与のあとは肉を食べることになるわけです。新店にもだいぶ慣れてきた高山シェフによって肉が準備される。
右がホルスタインのサーロインで、前田牧場のもの。左は杉本食肉産業さんの黒毛和牛のランプ。
上が丸菱の、くまもとあか牛の経産牛である。
これを、NYスタイルのステーキハウスがよく使っている超高火力ロースターで焼き上げる!
ということで、交流会開始である。
シーザースサラダ 萬幻豚ベーコン添え。
そしていきなり来ました、杉本食肉産業さんの黒毛和牛のランプ。
杉本食肉さんは黒毛のA5,A4など高級番手の肉を得意とする業者さんだ。でも、DAB担当の川村さんは「どうも4番以上の肉でやろうとすると、旨くない」ということに気づいた。いま庫内環境と熟成方法を少しずつ、A3かA4以上はモモ中心で熟成することで対応しようとしている。
今回の個体はももぬけしていない、赤身度の高いものだったので、DABには向くんじゃないかなと思ったが、実にこれが美味しい!くどい黒毛は脂だけじゃなくて赤身部分の匂いも含めてくどいものだが、この肉は黒毛特有の香りがふくらみがありつつも軽やか、そして繊維の柔らかさが極限まできている。歯を立てるとヤワッと繊維が切れていくというような極上の食感だった。文句なしに美味しいです。
次、前田牧場のホルスタインのサーロイン。
これが、、、もう本当に、これぞドライエージングというほかない結果。いや、現象ですな。最高です。正直言ってアメリカで食べるDABより旨いんじゃないの?と叫びたくなった。
ホルスタイン特有の健全でしっかりした繊維が、細胞レベルで柔らかくなっており、サクリと歯が通る。この柔らかさはサシが解けた後のスポンジ状になる肉の柔らかさではなく、赤身肉のタンパク質が分解されきる寸前の柔らかさなのである。そして、タンパク質分解によって染み出たアミノ酸の旨さがじゅわりと口中に拡がる、そして、ほのかに香る熟成香。 これには、周りにいる人たちも「おお、、、ホントにこれがホルスタイン?」とため息を漏らしていた。
そして、丸菱によるくまもとあか牛の経産牛サーロイン。
さの萬さんの指導によって熟成庫が作られただけあって、その熟成の特質はよく似ているものの、地元の資源であるくまもとあか牛を、しかも味のたまっている経産牛をエージングしているという、希少なDABである。経産牛特有の脂質のアッサリ感、風味の濃さが素晴らしい。くまもとあか牛の、去勢牛や未経産牛ではこの美味しさは出ないだろう。ブラボーである。
そしてとりを飾るのは、カルネヤサノマンズのスペシャリテ三種盛り。
左からさの萬熟成牛のカツレツ。
熟成萬幻豚のロースト
そして、これぞカルネヤサノマンズの新名物!?DABハンバーグ!
味については、野暮だしなにも言うまい。役得だがこの交流会でワインなども出て1万円。参加できた方はラッキーだと言うほかない。
ということで、日本のドライエージングシーンに彩りを飾る認定業者さんが三社誕生。心からお祝い申し上げます!