やまけんの出張食い倒れ日記

フランスが誇るシャロレー牛の本当の美味しさを識る旅! その8 フランスではこんなに真っ赤っかな肉が歓迎されるのだ! 地方品種であるパルトネーズ種の味わいは実に淡麗、あっさり、こういう愉しみ方が許容されるのが、フランスの懐の深さだと感じ入ったのであった!

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さて、いよいよパルトネーズ牛がどのように肉になって、料理されているのかを識るときが来た。案内されたのはSVEP(スヴェップと呼ばれていたが、ちょっと違うかもしれない)という、食肉のと畜から加工、販売まで行う企業だ。

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ここに事務所とと畜・加工施設がある。

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ここでSVEPのマネージャーさんが、パルトネーズ種のストーリーを話してくれたのだ。

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「実はむかし、パルトネーズ種は100万頭以上飼われていて、フランスの主流の品種でした。ところがこれが効率を求めているうちにドンドン減ってきて、1970年代には8000頭程度までになってしまいました。これはいけないということで、復活を期してさまざまな策をとり、生産者はこの周りだけで150軒、いまでは全仏で4万頭程度までになっています。」

おおっ その辺のカーブの描き方も土佐あかうしをはじめとする日本の地方品種と同じである!ただ、まだ日本の地方品種は4万頭なんて大きな数字にはなっていないのだが。

そこで日本の地方品種、土佐あかうしや短角の話をさせてもらった。

「うん、パルトネーズが減った経緯も、日本と同じだと思いますよ。効率や増体率で飼う牛が決まってくるので、いまではフランスの肉牛はシャロレー、リムーザン、そしてホルスタインが主流という状況です。昔は20種以上の品種があったのですが、、、」

うーん、まさにどこかで聴いた話である!

「そこで、オウンリスクで復活を期しました。パルトネーズ種の場合は、格付を通常の牛と同じにせず、パルトネーズ用の評価をするのです。もし飼ってくれるのであれば、重量あたり最低でもいくらは払う、ということを決めて生産者を募りました。また、農家に対してと畜後のフィードバックをきちんとするようにしました。農家のモチベーションを上げるためです。」

なるほど。ただし、特別な契約価格で買い取るということは、SVEPにとっては非常に大きなリスクになるのではないでしょうかね?

「幸いなことに、パルトネーズのプロモーションをし始めると、地元を中心に小売店や精肉店、レストランから引き合いが来るようになりました。実は、いまパルトネーズの肉はシャロレーより4割以上高い価格で販売しているんですけどね。」

えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?

なんでそれで売れるの!? 理解できん、、、しかも!

「レストランだとパーツで買っていきますが、スーパーなどの小売店の場合は半頭買いです。ですから助かっています」

マジですか、、、 やっぱりここに、日本における牛肉の成熟度合いとの違いがある。日本のスーパーは、牛の半頭買いなどしてくれない(超こだわりの店を除いてはね)。売りやすいパーツ、つまりロースやモモを買ってくるだけである。だから、地方品種の場合は、サーロインは売れても、他の部位が残ってしまうと言うことばかりなのだ。

フランスには、地方品種の価値を認めて、買い支えてくれる業者の存在があるのだ。残念ながら日本の小売・外食・中食業者の多くは、そこまで成熟していない。しかしそれは、成熟した消費者がいるからだ。フランスのスーパーではパックミートだけではなく肉の量り売りもしているのだが、そこにパルトネーズ種の様々な部位が並ぶ。それらを使った加工肉も並ぶ。大規模なスーパーでなくても専門のブッチャーがいて、半頭分の肉を余すことなく使い切り、それを買う人がいるのだ。

本当にフランスが羨ましいと思ってしまった。

と、ここで美人ちゃん登場。

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彼女は安全性・トレーサビリティの責任者だ。ということで、中の様子を見せてもらうことに。

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このように枝肉を冷やしこんでいるわけだが、その半丸(半頭分の枝肉)にこのようなタグがついている。

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これがトレーサビリティの表記である。詳しいことは書きませんが。

そんで、重要なのは、この肉の断面である! みてくれ!

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もう本当に真っ赤っかでしょ!? サシのさの字もない。 ところがこれこそがいい肉なのだという!

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この赤いマークが、「いい肉」マーク。特選といったところだろうか。

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本当にね、みてください。これがフランスでよいとされる肉の断面なんですよ。

これに比べれば、USの最上級格付であるプライムは、霜降り肉である。アメリカとヨーロッパは明確に基準が違うのだ。

日本の黒毛和牛のA5がパリでもてはやされてる、といったって、それは本当にごくわずかな人達に向けた話。フランスで好まれている肉は、これなんです。文化の違いをわからなければならない。

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これがトレーサビリティシステムの入力確認を行う端末だ。

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作業自体は、実に日本と同じように、ひとつひとつの枝肉をばらし、骨抜きをしていた。

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おもしろいのは、テールやモモ肉などをこのようにたこ糸で縛って加工するということを併行してやっていることだ。

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これも立派な製品になる。

さらに、併設した部屋では速やかに肉がひき肉にされ、メルゲーズなどになる。

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こうした様々な肉製品をパックにして、生協向けに販売したりもしているそうだ。下がそのパック商品。

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「これから食べる分をこれにしよう」

と、昼に焼いてもらう分を抜き出している。

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おろ、ってことは、これと畜後あまり時間が経ってないってことだね。

「パルトネーズはあまり熟成をしないで食べることを推奨しています。もちろんドライエージングも試していますが、基本的に30日を超える熟成はいい結果を生まないというのが、われわれの経験則です。」

とのこと!

さあ、そしていよいよパルトネーズ種の肉を食べる時が来たのだ!

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このレストラン、看板にでかでかと土佐あかうし、ではなかったパルトネーズ種の写真が書かれている。専門レストランなのである。

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中に入ると、お客さんがうわーっといるんだけど、奥の調理場でオーナーシェフが一人、肉を焼いてランチのプレートを作っている!

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う、うまそうじゃねーか!

最初の皿はハンバーグみたいで、もうひとつは豚の足である。うう、こっちも食いたい!

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このハンバーグというか、ミンスステーキの工程が実に興味深かった。というのは、さっきも加工所でひき肉を丸めたミンスステーキのパックがあったのだけども、こちらでは日本のハンバーグのようにつなぎや調味料をドバドバ入れたりしないようなのだ!

これをごらんください。

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この機械、上から肉塊を入れると、瞬時に挽かれて、スポッと丸い方に成形されて出てくるという仕組み。

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ほらこんなかんじ。

これを二つ分手にとって重ねて、グリルにおいてへらでグッと伸し、下のような状態にするのだ。

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この間、いっさいこねたり調味したりということがない!

つまり、本当に「ひいた肉を焼いているだけ」なのだ!ハンバーグじゃあありませんわこれ。

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焼き上がったら、、、

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付け合わせのレタスとベイクドポテトを盛って、グレービーみたいなソースをかける。

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これがミンスステーキだ!

こいつを食いたかったんだけど、まあ僕には決定権はない。テーブルにて待っていると、前菜が登場。

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うほ~ パテドカンパーニュである。そしてその奥が、、、

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なんだ!ポテサラじゃないか!

実はこのポテトサラダが実に最高。マヨネーズの味が日本と全然ちがってソフト、素材の味わいがきっちりする。トマトの角切りが入っているのがまた旨い。

さあ、その間にもシェフが、われわれ用の肉を準備中。

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塩でも振るかと思ったら、振らない!

これを一気に熱い鉄板にジュッ!

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スチャッと返して、、、

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焼き目が瞬時につくほどの高温で焼き付ける。

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おおっ なにやらかけている!

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おそらく植物油!? 調理中にかけたのはこれだけである。

で、おそらく3分くらいしか焼いてないと思うけど、これで皿に盛りつけ!マジでかよ!?

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ごらんの通り、表面に焼き色はついているけど、まだ肉の内部はほとんど生である。

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これをフランスでは「ブルー」と呼ぶ。セニャン(レア)よりも火が通らない、たたき状態である。

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ひとりたっぷり4枚ずつ分くらい焼いてくれた。日本の霜降り肉なら一枚半で撃沈だとおもうが、パルトネーズは先に見たように赤身である!

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これがブルー状態。塩をよく振っていただきました。

うーーーーーーーーーーーーーーーーーん

なんともリーン! そして、加工後すぐの肉だったからか、旨味もあまり濃くありません。「まじでカツオのタタキ状態だねこれは」といいつつわれわれいただきます。

たしかにこれに比べると、昨晩パルトーネ駅前のレストランでいただいたパルトネーズ種のステーキは、もっと深い味がした。つまり、熟成すればもっと味わいは深くなるはずだ。

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でも、スタッフのみなさんも「こういうものです」という感じで食べ進む。

ああ、本当に日本とフランスでは「納得の仕方」がちがうんだな、と思った。日本人は、白いご飯が好きだけれども、定食屋などで「この白飯はなんだ!不味い!」などと怒ったりはしない。そして、フランス人にとって肉は日本ほど特別なものではない。トップトレーディングの進藤さんいわく「ご飯みたいなもん。主食」だからだろうか、たんたんとした受け止め方なのである。

「あ、でもやまけんさん、今日はこんな感じでしたけど、この旅の目的であるシャロレー牛はもっと熟成かけたのたべてもらいますからね!」

と言われたのだが、このあっさりカツオタタキ状態のパルトネーズのステーキも、なるほどこれは乙であると思いながらいただいたのである。

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ここでパルトネーズ種に出会えたことは本当に宝だった、と思う。

そして旅はまだまだ続く。