料理人のためのジビエガイド: 上手な選び方と加工・料理 | |
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いやーすごいです、スゴイ!
ブッパと言えば、店内のどでかい熟成用冷蔵庫にとにかくドカドカとさまざまな獣肉がぶち込まれていて、それを焼いて出してくれる名店「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ」のことである。僕は以前、「トロワピエロ」時代に豚肉を焼いてもらい、その時の印象が強くて『豚に強いシェフ!』と勝手に思っていたのだが、実は違ったのだ。彼は猟師について山を登り、仕留めたばかりの獣の血抜きなどを手伝い、そしてその肉を捌いて熟成し、料理までするという一連の流れにコミットするシェフである。
神谷さんとはその後、北海道で開催された「蝦夷鹿サミット」の第一回でもご一緒し、僕が司会進行、そして神谷さんは蝦夷鹿の極上モルタデッラを作ってくれ、参加者を唸らせたのである。
その神谷さんが、これまで自分で試してきたジビエの仕入から処理、そして熟成と料理までをあますことなく語った本になっている。
「料理人のための」と銘打っているように、前半部はとにかくさまざまなジビエの解説である。この写真がまたいい!柴田書店の「専門料理」で常連のカメラマン天方晴子さんが、実に硬質にジビエの写真を存在感ばっちりに決めている。
素晴らしいと思ったのは、神谷さんがシェフ寄り過ぎるでもなく、消費者目線過ぎるでもなく、その中間を保持しつつ猟師目線、またはジビエを処理する加工場目線でも語ってくれていることである。
たとえば、ジビエのことを「その辺の山で獲ってくるんだから、こんなに高いのはオカシイ」などというアホな輩がけっこういる。そうしたことに対し、ジビエの捕獲にいったいどんなコストがかかるのか、たとえば猟師としての資格の保持かかる費用や猟銃、銃弾などの維持管理費用、そして運搬費用や処理場のコストなど、こまかに解説してくれる。
それはなぜかと言えば、ジビエ文化が日本に根付くには、獲る人にも適正価格、流通にも適正な価格と品質が守られなければ、一過性のブームで終わってしまうことが明白だからだ。それを肌で感じている神谷シェフだからこそ、説得力をもって書ける内容の本なのである。
そして、それぞれの畜種によって細かく変わる最適な熟成方法などを書いてくれているのである。もちろん、おそらくキモのキモとなる部分はあっさり書き流していると思うけれども、それでも情報量がすさまじくたっぷりなのである。
そして料理部分も、もちろん充実している! シャルキュトリーのレシピももちろん。
ブッパや、彼がたちあげたデリカテッセンにいけば、シャルキュトリーの腕前がすごいことはわかるはずだ。
実は僕もいろんなところで鳥獣害の駆除を推進するため、ジビエ活用をというシンポジウムに呼ばれる。その先々でことごとく「神谷シェフが先日来てくれましてね」というような話になるのだ(笑) ジビエ産地のお助けマンである。
また猟師のインタビューがいくつか挿入されているのも面白い。ああ、そうやってるんだ、とジビエの現場を垣間見ることができる。
ということで、ジビエが好き、もしくは熟成肉が好き、料理人です、地方の鳥獣害担当者ですといった人達にオールラウンドに薦められる本です。 くしくも(っていうか、合わせたんだろうけど)これからジビエの季節。ブッパに行きたいな!
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